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第42回 16年11月更新

育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その3 子の看護休暇等の改正ポイント~

前回・前々回に引き続き、平成29年1月1日から改正される育児・介護休業法と男女雇用機会均等法の改正内容を説明したいと思います。
これまで「育児休業」と「介護休業」の改正内容については説明してきましたので、今回はそれ以外の改正のポイントをみていきます。

<子の看護休暇・介護休暇の改正点>
「子の看護休暇」とは、小学校就学前の子を養育する労働者が事業主に申し出ることにより、1年度において5日(小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合は10日)を限度として、子供が怪我や病気になった際の世話や子供の予防接種・健康診断の付き添いのために取得できる休暇のことです。
これまでは、1日単位での取得とされていましたが、休暇を取得しやすくするために、半日単位でも取得が可能になりました。

次に「介護休暇」です。介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者が事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その家族が2人以上の場合は10日)を限度として、取得できる休暇のことです。
こちらも子の看護休暇同様に、1日単位での取得だけではなく、半日単位での取得ができるようになりました。

会社の有給休暇などで半日休暇制度がある会社はそれに準じればよいですが、半休制度のない会社は「半日」をどのように定義するか決めておく必要があります。

<子の看護休暇・介護休暇の労使協定による適用除外の項目追加>
子の看護休暇と介護休暇は、会社は労使協定を締結することによって、一部の労働者については「請求することができない」従業員として定めることができます。
今回の改正で、これらの休暇の適用を除外できる従業員の種類が一つ追加されることになりました。

これまで労使協定により適用を除外できる従業員は、1)と2)だけでしたが、平成29年1月1日からは、3)の項目が追加されます。
会社がこの項目に該当する従業員を、子の看護休暇や介護休暇の適用から除外しようと考えるのであれば、あらためて過半数労働組合の代表者や従業員代表者との労使協定を締結しなければなりません。しかし、特段この項目に該当する従業員がいないようであれば、わざわざ労使協定を締結しなおす必要はありません。
1)雇用期間が6か月未満の労働者
2)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
3)業務の性質又は業務の実施体制に照らして、半日単位で子の看護休暇(介護休暇)を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(1日未満の単位で子の看護休暇(介護休暇)を取得する従業員に限ります。)

<家族介護を行う労働者の所定外労働の制限>
平成29年1月1日より、家族介護を行う労働者がその家族を介護するために請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、残業させることができなくなりました。
このルールは、3歳未満の子を養育する従業員に対しては、これまでも定められていました。これを家族の介護をする従業員にも広げようというものです。

時間外労働等の制限のルールは、これまでは、次の3つのルールがありました。
1)所定外労働の制限(3歳に満たない子を養育する労働者が請求したときには、所定労働時間を超えて労働させることはできない制度)
2)時間外労働の制限(小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者や、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求したときは、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせることができない制度)
3)深夜労働の制限(小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者や要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求したときは、午後10時から午前5時までの間労働させることができない制度)

これらのルールのうち、1)に「対象家族を介護する労働者が請求した場合」も含められたということです。
時間外労働の制限は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、開始の日と終了の日を明らかにして、制限開始予定日の1か月前までに従業員が会社に対して請求する必要があります。
請求回数に関しては、特に制限はありませんので、何回でも行うことができます。

<育児休業等に関するハラスメントの防止措置>
平成26年10月に最高裁でマタニティハラスメントに関する判決が出されました。この判決を境にマタハラ防止についてさまざまな施策が出てきています。
今回の法改正で、事業主は、「育児休業、介護休業その他子の養育又は家族の介護に関する制度又は措置の申出・利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されることがないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じる」必要があります。

事業主が講ずべき措置の内容については、指針に定められています。詳しい指針の内容については、厚生労働省が発行する「(平成29年1月1日施行対応)育児・介護休業法のあらまし」の中に記載されていますので、その内容を紹介します。

A 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(1)
1.職場における育児休業等に関するハラスメントの内容。
2.育児休業等に関する否定的な言動が職場における育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景等になり得ること。
3.職場における育児休業等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針。
4.制度等の利用ができる旨を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
(2)職場における育児休業等に関するハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

B 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)相談窓口をあらかじめ定めること。
(4)相談窓口担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、職場における育児休業等に関するハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場における育児休業等に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合等であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
(5)その他のハラスメントの相談窓口と一体的に相談窓口を設置し、相談も一元的に受け付 ける体制を整備することが望ましいこと。

C 職場における育児休業等に関するハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
(6)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(7)事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
(8)事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
(9)再発防止に向けた措置を講ずること。(事実確認ができなかった場合も同様)

D 職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
(10)業務体制の整備など、事業主や制度等の利用を行う労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
(11)労働者の側においても、制度等の利用ができるという知識を持つことや、周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の制度の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を周知・啓発することが望ましいこと。

E AからDまでの措置と併せて講ずべき措置
(12)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知すること。
(13)相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行って はならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

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今回の改正は、かなり細かいところにまでおよび、内容も多岐にわたっています。育児介護休業規程の変更はもちろんのこと、今回紹介したように、労使協定についても変更する必要が出てくる可能性もあります。
そのため、制度施行前に、事前の準備をすすめていかなければなりません。
不明な点がある場合は、専門家や各都道府県に設置されている労働局「雇用環境・均等部(室)」に問い合わせてみてください。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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