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第11回 13年12月更新

インターン生であれば労働者ではないのか

“ 近年、学生時代に企業のインターンシップ制度(職場体験実習)を利用し、卒業後の職業選択に活かそうとする学生が増えています。大学側もインターンシップ制度を推奨し、規定の時間数以上のインターンシップを行った学生に対して単位を認めるケースもあります。
しかし、ひとくちにインターンシップといっても、現場に入って実地で経験を積むものから、職場を見学するだけのものまで形態は様々です。中には、インターンシップと称して、都合よくアルバイト同様に「労働」させるケースもあるようです。
労働法の観点からインターンシップ制度をみると、この制度を想定して法律を整備しているとは言えません。そのため、職業体験と称した「労働」と認定できるような場合でも、賃金が支払われなかったり、インターンシップ中に怪我をしてしまったときの保障など、不十分な点が多々見られます。
今回は、インターンシップ制度について見ていきましょう。

<インターンシップの現状>

インターンシップについての統計資料は、文部科学省が発表している『大学等における平成23年度のインターンシップ実施状況について』で見ることができます。
統計では単位認定を受けられるものに限っても、7割近い大学がインターンシップ制度を実施しています。平成19年度の実施状況と比べると、インターンシップを実施している大学は増加していることがわかります。

(単位認定を行う授業科目として実施されているインターンシップの実施学校数)

(単位認定を行う授業科目として実施されているインターンシップの参加学生数)

また、インターンシップに参加する学生の数も増加しており、インターンシップが学生の間で一般的になってきていると考えられます。国内のみならず、日本の大学生が海外の企業で職業体験を行うことや、外国の大学から日本の企業へインターンシップに来るといったことも行われています。

しかし、インターンシップ制度を悪用している例もあります。長野県内のホテルで韓国人インターン生を、「一日3食を提供する代わりに週5日間、毎日7時間以上掃除やベッドメーキングの『単純労働』を行わせている。」といった新聞報道がされました。
新聞報道が事実であれば、掃除やベッドメーキングは「実習」と呼べるものではなく、「労働」とすべき内容です。「労働」であれば、賃金の支払いが必要になり、それも最低賃金の適用を受けます。しかし、今回のケースでは、「インターンシップだから」という理由で、賃金の支払いはされていないようです。
韓国では、大学生がインターンシップを行うと就職が有利になると言われているようです。今回のケースでは、企業側も無報酬もしくは低賃金で労働力が確保できるため、率先して外国人インターン生を受け入れていたようです。

<インターン生を受け入れる際の注意点>

法律がしっかりと整備されていない中で、会社から「インターン生を受け入れたいがどのような扱いをして良いのかわからない」といったご相談を受けることがあります。
まず、インターン生を企業が受け入れる際に最初に決定をしなくてはいけないことは、「職業体験」なのか、あるいは事実上「労働」にあたるのかということです。
インターンシップにおける学生の労働者性の有無の判断基準は、厚生労働省が以下のような通達を出しています。

『一般に、インターンシップにおいての実習が見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者には該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられ、また、この判断は、個々の実態に即して行う必要がある』(平成9・9・18 基発636号)

難しく書いてありますが、要は「企業で働く従業員と同じ仕事をさせている場合は、インターン生であっても労働者と認められる」ということです。

労働者かインターン生かは、賃金の支払いの有無の他にも大事な問題があります。最初にも述べましたが、「労働者」であれば、通勤中や業務中の怪我に対して労災保険を適用することができます。しかし、「インターン生」の場合は労働者とは認められないため、通勤中や業務中の怪我に対して労災保険が適用されることはありません。
しかし、通勤中はさておき、業務中に事故が起きた場合は会社側にまったく責任はないとは言えません。そのため、「インターン生」として受け入れるのであれば、傷害保険や賠償責任保険の加入も考慮することをお勧めします。

今後もインターンシップで職業体験をする学生は増加していくでしょう。企業も、インターン生を受け入れたことによりトラブルが発生したのでは、何のために制度を取り入れたのか本末転倒になってしまいます。
このようなことにならないように、インターンシップの趣旨をしっかり理解し、「インターン生にやらせること、やらせてはいけないこと」など、社内でコンセンサスをとってからインターン生を受け入れるようにしましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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