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第31回 15年11月更新

ついに成立した改正労働者派遣法~その2

ついに改正労働者派遣法が、平成27年9月30日から施行されました。前回に引き続き、今回も労働者派遣法の法改正のポイントについてみていきたいと思います。
今回の法改正について質問されることが多くなりましたが、そのほとんどは「派遣期間」に対する質問です。今回は、派遣事業を実施している企業や、反対に派遣労働者を受け入れている事業所が気になる「労働者派遣の期間制限」について説明します。
厚生労働省では、法改正についての手引きを作成しています。厚生労働省が公表している内容も踏まえて、ポイントをみていきます。

<法改正前の期間制限について>

法改正前の制度では、派遣先が派遣労働者を受け入れることができる期間は業務によって違いがありました。(原則1年間、最長で3年間)
ただし、例外として政令で決められた業務は派遣受入期間に制限がなく、極端に言えばいつまでも派遣労働者を受け入れることが可能でした。
この政令で決められた業務とは、いわゆる「専門26業務」と呼ばれるものです。法改正前は、派遣先での業務が専門26業務に該当するか・しないか、といった問題をしばしば耳にしました。また、内容によっては、グレーな業務も存在していたことから、今回の法改正でこの専門26業務の区分がなくなり、すべての業務が統一した期間制限になりました。

参考までに、法改正前の専門26業務の定義を以下に記します。
「政令で決められた業務(派遣法第40条の2第1項第1号)」
業務を迅速かつ的確に行うために専門的知識や技術などを必要とする業務、または特別の雇用管理を必要とする業務への派遣で、いわゆる専門26業務のこと。業務内容は派遣法施行令第4条及び第5条で定められており、この業務であれば、派遣受入期間の制限はない。

<労働者派遣の期間制限の見直しについて>

法改正によって、政令で定められた業務には期間制限がない仕組みは見直され、施行日以後に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣には、すべての業務で、次の2つの期間制限が適用されることになりました。
それでは、それぞれの内容をみていきましょう。

1.派遣先事業所単位の期間制限
「同一の事業所」が派遣を受け入れられる期間は、原則、「3年」が限度となりました。仮に、派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合等からの意見を「制限期限の1ヶ月前までに」聴く必要があります。
施行日以後、最初に新たな期間制限の対象となる労働者派遣を行った日が、3の派遣可能期間の起算日となります。それ以降、3年までの間に派遣労働者の交替や、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合でも、派遣可能期間の起算日は変わらない点に注意が必要です。したがって、派遣可能期間の途中から別の派遣元から受け入れた労働者派遣の期間は、3年より短くなります。
なお、過半数労働組合等からの意見聴取を行なって、最長の3年間派遣期間を延長した場合は、延長した3年(合計6年)が終了する1ヶ月前までにあらためて派遣先の事業所の過半数労働組合等からの意見を聴けば、さらに3年を限度に延長することが可能です。
つまり、適正に意見聴取を行なえば、どの業務であってもいつまでも派遣労働者を受け入れることが可能になります。

2.派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先で「同一の組織単位(課やグループ)」に対して派遣できる期間は、「3年」が限度となります。先ほどの事業所単位の期間制限と同じ3年なので、ややこしいのですが、こちらの期間制限はあくまでも「派遣労働者個人」にかかるものです。
この派遣労働者個人単位の期間制限は、過半数労働組合の意見聴取を行なえば延長できるものではなく、3年が最長限度です。
組織単位を変えれば、同一の事業所に、引き続き同一の派遣労働者を(3年を限度として)派遣することができますが、事業所単位の期間制限による派遣可能期間が延長されていることが前提となります。
この場合でも、派遣先は同一の派遣労働者を指名するなどの特定目的行為を行わないように注意してください。派遣労働者の従事する業務が変わっても、同一の組織単位内である場合は、派遣期間は通算されます。

<事業所と組織単位の定義について>

改正派遣法における労働者派遣の期間制限に出てくる「事業所」と「組織単位」の定義は、以下の通りです。

1)事業所の定義
・工場、事務所、店舗等、場所的に独立していること
・経営の単位として人事・経理・指導監督ができること
・働き方などがある程度 独立していること
・施設として一定期間継続するものであること
などの観点から、実態に即して判断されます。

つまり、労働基準法上の「事業所」と考えていただければ良いと思います。

2)組織単位の定義
いわゆる「課」や「グループ」など、
・業務としての類似性、関連性があり、
・組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有するもの
として、実態に即して判断されます。

こちらは改正前の派遣法における同一の業務の判断基準になっていた「指揮命令の最小単位」よりも、大きなユニットであることに
注意が必要です。

<2つの期間制限がかからない業務>

2つの期間制限についてみてきましたが、改正派遣法では例外として以下の場合は期間制限がかかりません。
1)派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
2)60歳以上の派遣労働者を派遣する場合
3)終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
4)日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるものに派遣労働者を派遣する場合
5)産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

 改正前の派遣法でも、3)~5)までは期間制限がありませんでした。改正派遣法では、それらに加え、1)2)に該当する労働者も適用除外となり、適用除外の労働者は、「派遣先事業所単位の期間制限」「派遣労働者個人単位の期間制限」のいずれも制限を受けません。
つまり、同じ職場の同じ業務をいつまでも派遣労働者として働くことができます。

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今回は、法改正によって大きくルールが変わった「期間制限」についてみてきました。
実際に、派遣事業を行っている会社の経営者や担当者はもちろん、派遣労働者を受け入れている事業所の方も、変更になった部分をしっかりと理解して実務に反映していく必要があります。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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