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第70回 19年02月更新

働き方改革~36協定の締結内容の変更

働き方改革の一環として労働基準法が改正され、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から時間外労働の上限規制がスタートします。改正に伴い、時間外労働・休日労働協定(いわゆる「36 協定」)も新しい様式に変更されます。
今回と次回で、時間外労働の上限規制が規定されたことによる36協定への影響について見ていきたいと思います。

36協定とは?

労働基準法では1 日(8時間)、1 週の労働時間(40時間)、休日日数(毎週少なくとも1回)を定めています。原則は、この時間数や日数を超えて従業員を労働させてはならないというルールになります。
簡単にいってしまうと、「残業や休日出勤をさせてはいけない」ということです。しかし、現実的には繁忙期等で労働時間が伸びてしまうこともあるので、36協定を締結して労働基準監督署長に届け出れば、「法定労働時間を超える時間外労働」と「法定休日における休日労働」が認められます。
この36協定は締結するだけは効力がなく、監督署に届け出てはじめてその効力が発生します。さらに、監督署への届け出が終了した後に、就業規則やその他各種の労使協定と同様に、「常時各作業場の見やすい場所への備え付け」や「書面を交付する」等の方法により、労働者に周知しておく必要があります。

延長時間の上限について

36協定を締結することによって、労働基準法で定める原則の労働時間や休日日数を超えて従業員に労働させることができるようになります。法改正がされる前までは、時間外労働の上限は「厚生労働大臣の告示」によって以下のように基準が設けられていました。
(1年単位の変形労働時間制を採用している場合は限度時間が異なります。)

期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1か月 45時間
2か月 81時間
3か月 120時間
1年間 360時間

 

これまでは告示にとどまっていた基準を、今回の法改正により、罰則付きの法律として規定されました。
今後の残業時間の上限は、「月45時間」「年360時間」(3か月を超える期間の1年変形労働時間制の場合は月42時間・年320時間)となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えるとはできません。1か月と1年の上限時間はこれまでの告示と同じですが、「1週間」や「2週間」等の単位の協定はできなくなることと、繰り返しになりますが、罰則付きの法律になったことが大きな変更点です。
月の残業時間45時間というのは、週休2日制の会社では、1日当たり2時間程度の残業に相当することになります。週休2日制をとっていない会社もありますので、自社に当てはめて、現状の働き方で法律に違反しないかどうか考える必要があります。

仮に、臨時的な特別の事情があって労使合意する場合でも、

1)年720時間以内
2)複数月平均80時間 以内(休日労働を含む)
3)月100時間 未満(休日労働を含む)

を超えることはできません。
また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までとなります。

時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針について

今回の法改正と併せて、36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき点が指針として策定されました。労使間で36協定を締結する際は、この指針の内容を留意する必要があります。

1)時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめる。

実務では、突発的な残業時間に対応するために残業時間の設定を多く設定する傾向があります。しかし、基本的な考え方としては、上限となる時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめられるべきものであるとされています。
「法律の上限時間が45時間で規定されているから、36協定の上限時間も45時間にする」のではなく、自社の実情に沿った時間を設定する必要があります。

2)使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負う。

36協定の範囲内で労働させた場合であっても、労働契約法第5条の安全配慮義務を負うことになります。また、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」において、
・1週間当たり40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること
・さらに、1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間又は2~6か月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていること

にも留意をする必要があります。従業員が仕事中に倒れてしまったといった場合に、「36協定の範囲内だったから会社の責任が問われない」ということはありません。

3)時間外労働・休日労働を行う業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確にする。

各種の製造工程において、それぞれ労働時間管理を独立して行っているにもかかわらず、「製造業務」とまとめているような場合は、細分化は不十分であることになります。

4)臨時的な特別な事情がなければ、限度時間(45時間・年360時間)を超えることはできない

限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い「臨時的に」限度時間を超えて労働させる必要があるケースを、できる限り具体的に定めなければなりません。
「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。

5)1か月未満の期間で労働する労働者の時間外労働は、目安時間を超えないように努める。

この目安の時間は以下のように定められています。

1週間:15時間
2週間:27時間
4週間:43時間

6)休日労働の日数と時間数をできる限り少なくするように努める。

7)限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保する。

限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置について、次の中から協定することが望ましいとされています。

(1)医師による面接指導
(2)深夜業(22時~5時)の回数制限
(3)終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
(4)代償休日・特別な休暇の付与
(5)健康診断
(6)連続休暇の取得
(7)心とからだの相談窓口の設置
(8)配置転換
(9)産業医等による助言・指導や保健指導

8)限度時間が適用除外・猶予されている事業・業務についても限度時間を勘案して健康・福祉を確保するよう努める。

限度時間が適用除外されている新技術・新商品の研究開発業務については、限度時間を勘案することが望ましいとされています。また、適用除外の事業・業務であっても、月45時間・年360時間を超えて時間外労働を行う場合には、7)の健康・福祉を確保するための措置を協定するよう努める必要があります。

今回は、新たに策定された指針を中心に紹介をしてきました。時間外労働の上限規制が規定されたことによって36協定の様式も変更になっています。次回は、36協定の新しい様式や特別条項についてみていきたいと思います。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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