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第95回 21年04月更新

テレワーク時の労災~その1

新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の一環で、在宅勤務等のテレワークが一般的になりました。そのような状況の中で、在宅勤務中の怪我や、サテライトオフィスに通勤途上での怪我といった問題が発生しています。
今回は、テレワークにおける労災保険の取り扱いについて説明したいと思います。

テレワークとは?

パソコンやタブレットなどのITを活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方をいいます。テレワークは働く場所によって、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つに分類されます。

・在宅勤務:オフィスに出勤せず、自宅で仕事を行う形態
・モバイルワーク:顧客先、移動中、出張先のホテル、新幹線等の車内、喫茶店などで仕事を行う形態
・サテライトオフィス勤務:自社専用のサテライトオフィスや共同利用型のテレワークセンターなどで仕事を行う形態

テレワークでは、すべての労働日を自宅で働く必要はなく、また週や月のうち数回だけ実施することも可能です。従業員が置かれている状況や仕事の状況に応じて、期間や日数を決めることができます。
一般的にテレワークを導入することで受けることができるメリットは、以下のような点があげられます。

従業員のメリット
・育児や介護、病気の治療などをしながら働くことができる
・通勤時間の削減などにより自由に使える時間が増える
・通勤が難しい高齢者や障害者の就業機会が増える
・電話などに邪魔されず、業務に集中することができる

会社のメリット
・柔軟な働き方が可能になることによって、優秀な人材確保ができる
・オフィススペースに必要な経費や通勤手当を削減できる
・災害時に事業を継続することができる

働き方改革の一環で、新型コロナウイルス感染症が流行する前から国はテレワークを推奨していましたが、皮肉にも新型コロナウイルスの影響によって、導入率は飛躍的に増えることになりました。

労働基準法等の適用について

テレワークを行う場合でも、特に大きく変わることなく、いわゆる労働法はそのまま適用されます。

・労働基準法(労働時間、有給休暇、割増賃金等)
・労働契約法(労働契約の締結、変更等)
・最低賃金法
・労働安全衛生法(健康診断等)
・労働者災害補償保険法(怪我や疾病を発症した際の労災保険給付など)  など

テレワークを行っている場合でも、労災が発生すれば、事業所での勤務同様に労災保険法が適用されます。もちろん、業務上の災害と認定されるためには、一定の要件を満たす必要があります。

労働者災害補償保険とは?

労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます。)は業務上の事由や通勤によって従業員が負ってしまった怪我、病気、障害、死亡等に対して必要な保険給付を行うことを第一の目的とした保険制度です。

業務上の事由と判断されるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの条件を満たしていることが必要になります。
業務遂行性とは「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」を言います。つまり、災害発生時に仕事をしていたかどうかが問われるのです。
また、業務起因性は「業務または業務行為を含めて、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態に伴って危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。

いずれか一方が欠けてしまうと業務上の事由とは判断をされず、労災保険の給付を受けることはできません。テレワークでの勤務においても、負傷や疾病が発生した具体的状況によって、個別に労働災害の適否が判断されることになります。

業務遂行性と業務起因性の有無を判断する場合には、主に3つのパターンがあります。

①事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
②事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
③事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

①と②については、従業員が会社内にいる場合を想定しています。
テレワークの場合は、自宅等の事業所の外での勤務になるため、③が適用されます。このの場合、事業主の管理下(会社)を離れていますが、事業主の命令を受けていますので、たまたま私的行為を行っていたときなどを除き、基本的には業務遂行性と業務起因性が認められます。

テレワーク中に発生する可能性のある事例をいくつか見ていきましょう。

1)離席して机に戻ってきた際に転倒し、怪我をした
このケースの場合、離席をした理由が重要になってきます。労働時間の途中に家事や育児を行うために離席した場合や、個人の宅急便の受け取りのために離席した場合などは、私的行為となります。これらのケースでは業務遂行性が認められず、労災補償の対象とはなりません。
一方で、トイレに行くといった生理現象は、業務に付随する行為となり、業務遂行性、業務起因性が認められることになります。そのため、労災補償の対象となります。

2)仕事用の書類を送付するために自宅から外出した際、事故にあった
仕事の書類を送付するために外出した際の怪我については、事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合に該当します。したがって、業務遂行性、業務起因性ともに認められ、労災補償の対象となります。

3)休憩時間にランチのため外出した際に怪我をした
休憩時間中は、事業主の支配下を外れていると考えます。このため、食事や買い物に出た際に生じた怪我については、業務遂行性が認められず、労災補償の対象とはなりません。

 

テレワークを行う従業員については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負うことになります。ただし、私的行為などの業務以外の原因で生じた怪我や病気等については、業務上の災害とは認められません。
テレワークを行う際は、十分に説明をしてトラブルにならないように注意する必要があります。

次回は、テレワークにおける通勤災害について紹介をしていきたいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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