キャッシュフロー計算書の見方
地元の芝浦港南地区では、ビルやマンションの建設が活発になってきた印象があります。東京オリンピック開催決定に加えて、山手線新駅設置のうわさ、田町駅から羽田空港への新路線の整備、隣駅品川駅からのリニアモーターカー開通といった明るい話題が続いて、開発に勢いがついているように思います。これも景気回復の兆しなのかもしれませんね。
景気が良いのは喜ばしいですが、好況時に気をつけたいのが資金繰りです。事業規模に合わない無理な投資や借入をすると、利益が出たのに資金繰りに行き詰まる「黒字倒産」に陥ることも考えられます。そんな悲劇を招かないために、常に自社の資金繰りの状況を把握することが経理には求められます。そこで今回はキャッシュフロー計算書の見方をご説明します。
キャッシュフロー計算書とは資金の収支を原因別に集計した資料で、決算書のひとつである損益計算書では分からない、実際のおカネの動きを明らかにすることができます。
キャッシュフロー計算書では、まずキャッシュの増減を「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」の3つに区分します。さらに、これら3つを合計して1年間の「現金及び現金同等物の増減額」を計算し、これに「現金及び現金同等物の期首残高」を加えて「現金及び現金同等物の期末残高」を表示します。
(1)営業活動によるキャッシュフロー
① 直接法
「営業活動によるキャッシュフロー」には、主に会社の本業に伴って発生する資金の動きを記載します。具体的には、商品の販売による収入、商品の購入による支出、従業員や役員に支給する給与の支出等、営業損益の計算の対象になった項目を記載します。(この記載方法を直接法といいます)。「当期に販売済みだが入金は翌期以降となる売上」や「当期に購入済みだが支払は翌期以降となる仕入」等は対象になりません(逆に「前期に販売済みだが入金は当期となる売上」や「前期に購入済みだが支払は当期となる仕入」等は対象となります)。直接法では資金の動きを直接集計するため、在庫の増減や減価償却費・貸倒引当金繰入の調整などは記載しません。直接法は取引総額を把握しやすい反面、集計作業が煩雑になります。
② 間接法
「営業活動によるキャッシュフロー」の表示形式には、直接法とは別に、間接法とよばれる表示形式があります。間接法では、税引前当期純利益に必要な調整項目を加減算して表示します。間接法でも最終値は直接法と同じになりますが、計算過程が一部異なります。例えば直接法では、売上収入額や仕入支出額といった資金の動きを直接記載して計算しますが、間接法では税引前当期純利益から債権債務の増減額をプラスマイナス、さらに在庫の増減がある場合は、在庫が増えていればその額をマイナス、在庫が減っていればその額をプラスします。また、減価償却費や貸倒引当金繰入などおカネが出ていかない費用は税引前当期純利益にプラスして計算します。間接法は直接法に比べて作成の手間がかからないため、実務上はほとんどの会社が間接法で作成しています。
(2)投資活動によるキャッシュフロー
「投資活動によるキャッシュフロー」には、土地や建物などの「固定資産」や株式など「有価証券(現金同等物を除く)」の取得・売却や、資金の 貸付や回収による資金の増減額を記載します。なお、売却時に記載される金額は売却損益ではなく売却額になります。例えば、購入価格が 5,000万円の土地を2,000万円で売却した場合、記載される金額は2,000万円のプラスとなります(損益計算書の売却損3,000万円と混同しないように注意しましょう)。「投資活動によるキャッシュフロー」の金額は、将来の利益獲得や資金運用のため1年間でどの程度の資金を支出し、また 回収したのかを把握するための情報になります。
(3)財務活動によるキャッシュフロー
「財務活動によるキャッシュフロー」には、資金の調達と返済による資金の動きを記載します。具体的には、銀行等からの借入や社債・株式の発行による資金の調達、借入金の返済や社債の償還、自己株式の取得による資金の返済、配当金の支払などを記載します。元金返済に伴って支払う利息は営業活動によるキャッシュフローに記載します。「財務活動によるキャッシュフロー」の金額は、営業活動や投資活動を維持する ために、1年間でどの程度の資金調達や返済を行っているかを把握するための情報になります。
キャッシュフロー計算書で自社の資金繰りをきちんと把握して、バランスのよい投資や借入を心掛けましょう。