消費税増税と対策
2014年4月から消費税が8%にアップすることが正式に決まりました。“消費者”の立場で考えると「物価が高くなりそうでイヤだなあ」というのが素直な感想ですが、増税の影響は単なる物価高だけではありません。スーパーやメーカーといった“事業者”の取引にも大きな影響が出てきます。
そもそも『消費税』とはどんな税金なのでしょうか。『消費税』は、国内で購入した商品や利用したサービスにかかる税金のことで、現行は本体価格に対して5%(来年4月以降は8%)の税率となっています。『消費税』という名前のとおり、税金を負担するのは商品を購入したりサービスを利用した消費者ですが、消費者が実際に税務署に直接、税金を納めることはありません。消費者は本体価格に消費税を上乗せした代金を事業者に支払い、消費税を預った事業者が消費者の代わりに税務署に納税することになります。
このように消費税は“税金を負担する人と税金を納める人が違う”という複雑なしくみになっているので、増税をすると色々な場面で混乱が発生する可能性があります。そこで混乱を防ぐため次のような新しいルール(『消費税転嫁対策特別措置法』)が決められました。
(1)価格表示
スーパーの値札や通販のカタログ料金などは「税込価格」で表示するのが原則ですが、値札の張替えやカタログの修正といった作業負担を考慮して、平成25年10月1日以降は以下のいずれかの対応をすれば「税込価格で表示しなくてもよい」という特例ができました。
① 値札やカタログの価格を次のように表示する。
② 値札等は「○○円」と税抜価格だけを表示し、別に消費者が商品を選択する際に目につきやすい場所に、明瞭に、「当店の価格は全て税抜価格です」などの掲示をする。
(2)宣伝や広告の禁止
平成26年4月1日以降の取引について、次のような消費税分を値引きする等の宣伝や広告は禁止されます。
(×)消費税は転嫁しません
(×)消費税還元セール
(×)消費税相当分のポイントを付与します
ただし、次のような表現は認められます。
(○)春の生活応援セール
(○)8%還元セール
(○)3%ポイント進呈
(3)価格転嫁拒否の是正
“売上100億円以上等の大規模小売事業者”や“資本金3億円以下の事業者と継続的に取引している事業者”は、平成26年4月1日以降の商品の供給やサービスの提供について、次のような消費税の転嫁を拒否する行為が禁止されます。
①合理的な理由もないのに、既に決めた対価を後から減額して支払う
②安売りセール等の理由で増税分上乗せ後の価格より低い価格に値引きするよう要求する
③消費税増税を受け入れるかわりに、取引先にディナーショーのチケット等を購入させる
④消費税抜の本体価格で交渉したい、という申し出を拒否する
⑤転嫁拒否をされた事業者が、①~④の行為があったことを公正取引委員会に知らせたことを理由に、取引停止するなどの不利益な取り扱いをする
(4)カルテルの独占禁止法の適用除外
平成26年4月1日以降の商品の供給やサービスの提供について、公正取引委員会に事前に届出をすれば、事業者団体等が行う転嫁カルテル・表示カルテルが独占禁止法の適用除外となります。
①転嫁カルテルとは「各自で自主的に決めた本体価格に消費税額分を上乗せする」等の、消費税転嫁の方法を事業者間で統一して決めることです。価格そのものを決めることは独占禁止法に違反となるので注意してください。また、参加事業者の2/3以上が中小事業者であることが必要です。
②表示カルテルとは「税込価格と消費税額を並べて表示する」等の、消費税の表示方法を事業者間で統一して決めることです。
上記のルールに違反すると、公正取引委員会から指導・助言や勧告・公表といった処分を受ける場合があります。大きなトラブルにならないように、現場に対する周知を徹底させましょう。