税金は大丈夫ですか?決算日までにやっておきたいこと
今年は好業績で利益額を伸ばした会社が多いようです。業績好調は喜ばしい限りですが、多額の税負担に頭を悩ませている社長もたくさんいらっしゃるようです。
そこで今回は、税負担の軽減のために決算日までに行いたい対策を、3月決算会社の事例でご紹介します。
(1) 決算見通しの試算
決算対策を検討する前にまず行うべきなのが決算見通しの試算です。
3月決算の会社であれば1月の試算表をベースにして残りの2,3月の売上や仕入、経費などを追加計上し、さらに決算調整を加減算して決算日の損益を試算します。
なお、経費や決算整理はイレギュラーなものを除いて直前月や前年同月を参考に概算計上しても構いませんが、売上や仕入は、なるべく担当部門の責任者にヒアリングを行って計上するようにしましょう。
できれば受注書や発注書なども確認したいところです。
売上や仕入は金額が大きいので多少のズレでも利益に与える影響が大きくなってしまいます。
誤った判断を導かないようにできるだけ精度の高い数値で試算することが大切です。
売上や利益を試算できたら納税額もあわせて試算しておきましょう。
損益の試算ができたら資金繰りの見通しも試算します。できれば納税期限の5月末まで試算しましょう。なお、決算見通しの作成と並行して取引銀行と面談をしておくことをおすすめします。
現状の融資姿勢や決算に対する意向などを確認しておくと今後の参考になります。
(2) 決算日までに行う対策
1)在庫の処分(2月中旬~3月下旬)</br
真っ先に検討すべきなのが不良在庫の処分です。
できれば経理担当者自らが在庫表を持って現場責任者と一緒に倉庫等を見て回りましょう。
商品の状態に応じて見切り販売や廃棄などの取扱いを決めます。
なお商品を廃棄する際は後日税務署に説明するために、業者から「廃棄証明書」を発行してもらっておく、引き取り前と引き取り後の倉庫の写真を撮って残しておく、といった準備をしましょう。
2)固定資産の処分(2月中旬~3月下旬)
工場や店舗など固定資産が多い会社は長期間稼働していない機械や使用していない器具等を廃棄等を検討します。
固定資産の稼働状況に応じて売却や廃棄など取扱いを決めます。
なお廃棄する際は在庫と同じように税務調査に備えて「廃棄証明書」を発行してもらう、引き取り前と引き取り後の現場の写真を撮っておく、などしておきましょう。
3)売上債権の放棄(3月初旬~3月下旬)
長期間未入金のままで回収ができそうにない売上債権は債権放棄をして損失計上することを検討します。
念のため営業担当者に回収が遅れている理由と今後の回収見込みを確認して最終判断をします。
債権放棄が決定したら決算日までに債権放棄の通知書を得意先に内容証明郵便で送ります。
債権金額が多額であれば役員会を開催して議事録を保存しておくのがよいでしょう。
これらの書類は後日税務署へ説明する際の重要な資料となります。
なお、債権放棄を行うと回収できる可能性ほとんどゼロになるので慎重に判断しましょう。
4)決算賞与の支給(3月初旬~3月下旬)
資金繰りに余裕があるのであれば従業員に対する利益の還元として決算賞与を支給するのもひとつです。
「決算日までに賞与を支給するのか」、「決算日後に賞与を支給するのか」で、手続きが少し異なります。
①決算日までに支給する場合
3月初旬までに総支給額を、3月中旬までに各人の支給額を決定し、3月末までに賞与を支給するのが目安です。
②決算日後に支給する場合
決算日後に賞与を支給する場合は次の要件を満たさないと税務上は当期の経費とならないので注意が必要です。
a:決算日までに支給額を各人に通知する
b:決算日から1ヶ月以内に全額支給する
c:帳簿上、未払計上する
5)保険の加入(3月初旬~3月下旬)
福利厚生を充実させる目的で新たに生命保険等に加入するのも税負担を軽減させる方法のひとつです。
「どういった商品なのか」、「支払額のうちいくらが経費に落ちるか」といったことを保険会社の担当者や税理士等の専門家に確認しながら対象者や保険料を検討します。
6)経費の前払い(3月初旬~3月下旬)
事務所の家賃や備品のリース料など継続的にサービスを受ける場合に支払う経費は1年分をまとめて前払いすると支払額全額が一度に経費に落ちるといった規定があります(「短期前払費用」法基通2-2-14)。
要件を満たすものがないか専門家に相談してみましょう。
決算対策はプロジェクトのようなものです。
経理責任者はプロジェクトリーダーであるという自覚をもって事前準備や進捗管理に注力し、適正な決算対策を実現をしましょう。