原尚美
第01回 14年01月更新

今年の税制改正のポイント

「税制改正大綱」が発表されました。

ゼイセイカイセイタイコウって、何?
今さら聞けないよーという方のために、簡単に説明しておきましょう。
税制改正大綱とは、時の与党や政府が発表する税制改正の原案のことをいいます。12月半ばごろに発表され、法案の元になるので、通常は大綱どおりに税制改正が行われます。わざわざ「通常なら」と書いたのは、民主党政権時代は、いわゆる「ねじれ国会」のため、大綱どおりに法案可決せず、現場は大混乱だったからです。今年は、与党が衆議院・参議院ともに過半数を押さえており、大綱がそのまま採用されるだろうと予測されるので、主なポイントを押さえておきましょう。

「税制」をみると、ときの政権が、国家をどこに導きたいのか、よくわかります。どんなビジネスも、国の意向を無視して拡大することは出来ません。新規事業を立ち上げる場合はもちろん、既存事業の軸足をどこにずらすべきか、行間に隠されたメッセージを読むことが大切です。
26年度の大綱の柱は次のとおりです。4月から実施される消費税率アップを意識して、景気対策に力をいれようという、政府のけなげな(?)姿勢が見え隠れしますね。
しかしその割には、大胆な法人税減税があるわけではなく、ちょっとだけ減税とか、「ついにそこに手をつけたかー」という穴埋め的な増税の折り込まれた、言葉は悪いですが、「小賢しい」改正と言う印象。

1 デフレ脱却・日本経済再生に向けた措置
(1)復興特別法人税を1年前倒しで廃止する
(2)経済対策と成長力強化のため、民間投資を活性化させる
(3)交際費課税の見直しなど、消費の拡大を図る
(4)地域経済を活性化する
(5)国家戦略特区を税制面で支援する

2. 抜本的改革を着実に実施する
(1)自動車にかかる税金を見直す
(2)地方税制において、地域間格差の縮小を図るため、法人住民税法人税割の税率を引き下げ、新しい地方法人税(国税)を創設する
(3)サラリーマンの給与所得控除を見直す
(4) 消費税の軽減税率制度を(将来)導入する

3. 東日本大震災からの復興支援を継続する
4.  円滑・適正な納税のための環境整備
となっています。

税制改正大綱は、全部で133ページもある力作ですが、そのうち企業経理に携わる皆さんにとって身近なものをいくつかピックアップしてみましょう。

① 復興特別法人税を前倒しで廃止(減税)
復興特別法人税とは、東日本大震災の復興にあてるため、法人税額の10%を追加で支払う制度をいいます。平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間にスタートする事業年度に限った3年間の措置でしたが、1年ほど前倒しして廃止されます。
本来なら国際競争力をつけるために、法人税そのものを減税したいところでしょうが、お国は財源不足、ない袖は振れぬ、というわけで、ちょっとだけ、減税ということになりました。

② 交際費の非課税枠を拡大(減税)
資本金1 億円以上の大企業は、交際費をいくら使っても、その全額が課税処理されてきました。交際費なんて冗費を、法人税法上の経費として認めるわけにはいかん!というのが、従来のお役所の考え方でした。しかし、消費税率のアップにともない、消費が冷え込むことをおそれて(?)、企業がつかった飲食費のうち、50%までの損金算入が認められます。ただし、社内接待費は含まれないので、要注意です。
一方、中小企業は、下請けとしての弱い立場を考慮して、交際費等の800万円まで、非課税が認められていました。その適用期限が2年間延長され、新しく創設された「飲食費のうち50%非課税」と、どちらか有利な方を、選択していいよ、ということになりました。
飲食費だけで1600万円以上使う会社の場合、「飲食費50%」枠を使った方が有利なのですが、一部の大企業を除いて、そんな余裕のある中小企業がどの位あるのか・・。
なんとも、トホホな有利選択といえます。

③ 所得拡大税制の条件を緩和(減税)
月給や賞与など、従業員(役員やその関係者を除く)に支払った給料が、基準年度より前年度より増加した場合、増加した金額の10%が、税金から控除されます。

すでに今年の4月からスタートしている所得拡大税制ですが、条件①は、一律5%以上。このハードルが高く、適用できる会社が少ないということで、緩和されました。
でも、本当に企業が喜んで賃上げするかどうかは、疑問。
なぜなら、この制度にはもう1つの制限があるからです。何かというと、企業が支払う法人税の10%(中小企業は20%)までが、税額控除の上限なのです。
たとえば、総額で、1000万円ほど賃上げをしたとしましょう。すると控除できる法人税は、100万円。
おっ、いいねー、と喜んでいる場合ではありません。法人税の20%が限度だということは、中小企業の場合、少なくとも500万円の税金を払う会社でなければ、満額の控除がとれないことになります。法人税率を25.5%とすると、所得にして約2000万円。すると、1000万円の賃上げ前の所得が3000万円はないと、魅力的な制度とは言えないというわけです。

④ サラリーマンの給与所得控除の縮小(増税)
サラリーマンの給料は、額面に課税されていないのは、ご存じのとおり。自営業者に比べて、給料がガラス張りのサラリーマンは不公平ということで、給与から一定の金額がオートマティックに控除されています。
年収1000万円以上のサラリーマンの給与所得控除が、引き下げられます。

住民税は、それぞれ、その翌年から増税になります。
え?平成29年?って、ずいぶん先じゃない?
確かに。政府は、来年の消費税アップに対する反発が、よほどコワいんでしょうね。平成29年の前に、新しい税制改正が行われるかもしれませんね(笑)。

⑤ ゴルフ会員権等の損益通算ができなくなる(増税)
さて、これはゴルフ好きには大変です。会社員といえど役員クラスになると、ゴルフ会員権の1つや2つは眠っていようというもの。ゴルフ会員権を売って損がでると、給与や事業などの所得からマイナスすることができ、会員権の値下がり分をいくばくかの税金で取り戻せていたのですが、平成26 年4 月からは、他の所得との損益通算ができなくなります。
株や不動産は、損益通算ができないのに、どうしてゴルフ会員権だけできるのか?は、税の世界の七不思議の1つでした。国会議員は全員が、ゴルフ会員権をもっているからとか、まことしやかに言われていましたが、今回ついにここにメスが入りました。
以前、不動産の損益通算ができなくなった時は、翌年1月以降からの適用でしたから(年末までの2週間で、あわてて不動産を売りに走った人もたくさんいたはず)、今回は4月以降の適用ですから、やっぱり温情改正と言えるかもしれませんね。

⑥ 新しい地方法人税(国税)の創設(減税?増税?)
消費税率がアップすると、ますます地域間格差が広がるのだそうです。
そりゃあ、そうですよね。東京や大阪のような大都市圏と、人口数千人の町では、消費される量が半端なく違うというものです。
そこで、地域間の財政力の格差を縮小するため、まず、法人住民税(法人税割)の税率が下がります。

次に、この減税分を補うために、新しく地方法人税(国税)を創設し、その全額を地方交付税の原資とすることになりました。要するに、地方自治体に代わって国が税金を徴収し、税収の少ない市町村に分配しましょう、というわけです。
これ、ますます「大きな政府」になるのでしょうか?地方分権とは、反対の方向に向かっているような気が・・。

また、この改正にともなって、地方法人特別税の税率や事業税の税率も改正になっています。改正後の税率は、税制改正大綱の80ページに一覧が出ているので、ご覧ください。

⑦ 消費税の簡易課税制度の見直し(増税)
消費税とは、預かった税金から、実際に支払った税金をマイナスして納税するのが原則です。しかし、2年前の売上が5000万円以下の小規模事業者の場合、業種に応じて一定の割合をかけた金額を、機械的にマイナスするできる特例があります。これを「簡易課税制度」といい、一定の割合のことを「みなし仕入率」といいます。今回は、みなし仕入れ率が一部変更になりました。

(注)上記の改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。
これまでも小規模事業者は、原則課税と簡易課税のどちらが有利か、シミュレーションをして、わずかばかりの節税をしてきました。そういった益税は許さないということでしょうか、不動産業の会社が、簡易課税を選択した場合、消費税がこれまでの1.2倍に増えることになります。

⑧ 設備投資にかかる税額控除の拡充(減税)
小規模事業者(個人事業主、資本金3000万円以下の法人など)の設備投資を強力に後押しするため、生産性を向上させるため先端設備を購入した場合には、税額控除や特別償却制度が新設されたり、条件が緩和されたりしています。また現行の制度が延長されたり、税額控除が利用可能な法人の範囲を拡大するなど、さまざまな改正が盛り込まれています。
たとえば、中小企業がパソコン、ソフトウエアなど30万円未満の少額資産を購入した場合には、これを購入年度で一度に費用化できるという制度がありますが、これも2年間、延長されたのは、嬉しいですね。
税制改正大綱の8ページから13ページに詳しく掲載されているので、興味のある方はご確認ください。

さて、今年度の税制改正、いかがです?
消費税率アップというボスキャラが強烈すぎて、その他の改正案はボスキャラの周りをピョンピョン跳ねているだけの、ちびキャラというのが、私の印象です。
本当に平成27年10月には、消費税率が10%にあがるのでしょうか?少なくとも、それまでは、抜本的な税制改正は、行われそうもありませんね。

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