原尚美
第10回  投稿:2014.12.01 / 最終更新:2018.11.09

リーダーなら知っておきたい管理会計の基本

前回に続いて、「限界利益」という利益について、もう少し詳しくみていきましょう。

限界利益は、経理パーソンに馴染みの深い財務会計の世界では、「売上総利益」に近い感覚です。
前回の「5つの利益」を思いだしてください。
売上総利益=粗利とは、会社がうみだす付加価値の大きさを表す利益でしたね。
つまり、限界利益とは、会社がうみだす付加価値のことをいうのです。

限界利益を算式で表すと、次のようになります。
売上-変動費=限界利益

変動費とは、売上があがると、支払も増える費用のことをいいます。
もちろん売上が減少すると、その分だけ支払も減ります。
変動費の代表例といえば、仕入でしょうか。または、商品をお客様に届けるための物流費も、変動費です。売上が増えれば、
自然と物流費もアップするからです。

しかし、会社を運営するためには、変動費以外のコストもかかります。商品を売るためには、営業マンに給料を払わないといけないし、
商品をストックしておくための倉庫代も必要です。

これらの費用は、売上が下がったからと言って、売上高にリンクして支払額が変わるわけではありません。
もちろん、業績が悪くなったら、リストラもしなければならないし、もっと小さな倉庫に移転することもありますが、
いったん契約をしたら、 また一定額の支払額をすることになります。
このように、売上高に関係なく一定金額を支払う費用を、固定費といいます。会社は最低でも、この固定費を稼がないと、
その存続すら危ぶまれるというわけです。

もし、会社の利益が0円だとすると、上記の式は次のようになります。

売上-変動費=固定費

しかしこれでは、会社を維持、運営するための固定費を払ったら、利益が残りません。
前回の「利益」の話を思いだしてください。
会社は利益をうむことを義務づけられている存在、利益を生むことで、社会に貢献する存在でした。
利益をうまなければ、従業員を雇用することも、税金を払うことも、銀行に返済することも、株主に配当することもできません。

そこで、上記の算式に「会社の利益」をプラスしてみましょう。

売上-変動費=限界利益=固定費+会社の利益

管理会計で重要なのは利益の分析です。管理会計とは、売上やコストをコントロールして利益を最大化し、その結果、社会に
より多くの付加価値を生み出すためのツールだからです。

上記の算式から、利益を最大化するためには、次の3つの項目に着目すればよいことがわかります。

①売上を最大値にする
②変動費を減らす
③固定費を減らす

具体的な例をあげて、考えてみましょう。
あなたは、新宿御苑でマンゴージュースを売っています。

余談ですが、ミャンマーには街中に、マンゴーの木がたわわになっています。日本でも昔は、そこら中に柿がなっていたような
気がします。もぎたてのマンゴーの美味しさと言ったら、ビックリするほどです。

ともあれ
マンゴージュースの値段を、300円。マンゴー一個の仕入れ値は、150円とします。
新宿御苑に払う場所代は、10万円です。平均すると1月に100杯のジュースが売れるので、ジュース1杯につき、100円の場所代を
払っていることになります。

さて、あなたが付加価値を最大にして、できるだけ多くの利益をうみだすには、どうすればよいか、上記の算式で考えてみましょう。
①まず、売上です。
売上は、さらに次の算式に分解できます。
単価×販売数量=売上

あなたが考えることは、マンゴージュースを100杯以上、たとえば120杯、150杯売るにはどうすれば良いかということです。
そんなに売るのが難しいのであれば、その理由を考えます。もしかしたら、マンゴージュースの価値に比べて、値段が
高すぎるのかもしれない。1杯の値段を250円に下げるべきかを検討します。
それとも、新宿御苑で売れるマンゴージュースの数量は、100杯が限界なのかもしれません。
それならば、価格を350円にあげても、100杯の販売が確保できないかと、考えてみます。

②次に、変動費を減らす努力をしてみます。材料のマンゴーを100円より値下げしてもらえないか、交渉します。または別の
仕入ルートがないかなども検討の余地がありそうです。

③さらに、新宿御苑に払う場所代についても、交渉してみる価値がありそうです。
もしくは、マンゴージュースの販売数を今の倍の200個にすることができれば、ジュース1杯あたりの固定費は、100円から
半分の50円に下がることになります。

ここまで読んで、管理会計と財務会計の違いに気づいていただけましたか?

財務会計は、過去の会社の取引を集計して、現状を分析・把握するためのものです。
それに対して管理会計は、現状のデータを元に未来を予測するためのツールです。
管理会計は、経営者やリーダーが意思決定するための会計と言われるゆえんです。

次回は、限界利益の計算方法についてお話ししましょう。

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