あなたは変化する人?しない人?
英語で会社のことをカンパニーといいます。カンパニーとは「仲間」。つまり、会社とは、投資家からあつめた資金を、増やすために集まった仲間のことをいうのです。
資金を増やす方法としては、次の3つが一般的です。
1番目は、さらに資金を集める。集める方法としては、資本金として投資してもらうか、融資をうけるかです。
2番目は、現在会社がもっている資産を、売却して儲ける方法です。不動産投資や株式投資がこれにあたります。3番目の方法は、社会に何らかの価値を提供して、その見返りに報酬をもらうやり方です。獲得した報酬のことを、会計用語では「売上」といい、売上を獲得するために支払った支出のことを「費用」といいます。売上から費用をマイナスした差額を、「利益」といいます。
利益が多ければ多いほど、会社の資金も増えるというわけです。
売上 - 費用 = 利益
管理会計とは、いかに利益を増やすかにフォーカスした会計です。上記の算式をみれば、利益を増やすためには、売上を増やすか、費用を減らせばよいことがわかります。
けれど、どんなに管理会計を勉強しても、それだけで売上が増える訳ではありません。売上をあげるには、マーケティングなど別の知識が必要です。いや、どれだけ市場調査をしても、商品開発に努力しても、売上は自社の思いどおりにはいきません。
売上の決定権を握っているのは、代表取締役でもなく、営業部長でもなく、ユーザーや消費者など、みなさんの会社のお客様だからです。
しかし、費用はちがいます。費用は売上とちがって、会社が自分で管理することが可能です。主力商品の生産量を増減したり、もっと広い事務所に引っ越したり、従業員を増やしたり、もっと安い会社から仕入れたり、自由自在にコントロールすることができるのです。
つまり、管理会計は、売上よりも費用をマネジメントして、利益を最大化するためのツールといえるのです。
費用をマネジメントするために、管理会計は財務会計とはちがったアプローチをします。財務会計では、仕入や給料、通信費など、資金が減少した原因に着目して分類します。いわゆる「勘定科目」をつかった分類方法です。一方、資金の流出と売上の関係性に着目して、費用を「固定費」と「変動費」にわけて考えるのが、管理会計の特徴です。
固定費とは、売上の増減に関係なく、支払が発生する費用のことをいいます。代表的なものに、本社家賃や機械設備の減価償却費などがあります。管理部門に勤めるみなさんの人件費も、まさに「固定費」ですね。
固定費というと、まるでお荷物のような感じを受ける人もいるかもしれませんが、それは大いなる勘違いなので安心してくださいね。
会社の価値は、固定費からこそ、生み出されるからです。たとえば、あなたの会社が固定費の増加を嫌って、物流部門をすべて外注したとします。倉庫代などの固定費がかからないので、一見、利益が増えるような気がしますが、引き換えに自社内で物流に関するノウハウを蓄積することができなくなります。アマゾンは、自社倉庫を抱えることで莫大な固定費負担を強いられていますが、おかげで他の追随を許さない世界一のネット商店に成長したのです。
では変動費とは何でしょうか。変動費とは、売上にリンクして、増減する費用を言います。売上とリンクするので、売上が増えると費用も増えるし、売上が減少すると、費用も減少します。変動費の代表的なものに「材料費」や上記の「外注費」があります。
経理課員であるみなさんの人件費は固定費ですが、人材派遣会社が支払う派遣社員の人件費は、売上と連動するので、まさに「変動費」ということになります。
余談ですが、会社を経営していると、数年に一度は、いわゆる税務調査というものを受けなければなりません。経理課員の中には、税務調査に立ち会ったり、必要な書類を準備したりなど、ハラハラドキドキした経験のある人も多いのではないでしょうか。
じつは、優秀な調査官は、この「変動費」に着目して帳簿のチェックを行います。売上と変動費の動きを追いかけていくと、不正な仕入の計上や、売上の計上もれが一発で見つかるからです。たとえばクラブなどの飲食店では、お酒の納品書やおしぼりの数がチェックされます。売上は減っているのに、酒仕入の本数が増えているとか、おしぼり業者への支払が増えていると、コレハ、アヤシイ・・ということになるわけです。
不正をしていなくても、翌期に計上すべき支払を今期の費用として計上していたなど、変動費は様々な情報を、調査官に教えるのです。
もちろん、会計帳簿は税務署のためだけにつけるのではありません。本来、リーダーたるみなさんの意思決定に役だてるためのもの。
管理会計が教えてくれる情報を、しっかり経営に役立てたいものですね。
話がそれましたが、会社の数字を、「変化するもの」と「変化しないもの」の分けるのが、管理会計の基本です。何か一つのことを決めるとき、たとえばある商品の価格をいくらにすべきか、という意思決定をするときは、A案、B案という必ず2つ以上の選択肢が存在します。
A案を選ぶか、B案を選ぶかで、その結果に明らかに違いが生じるからこそ、リーダーたちは悩むわけです。A案でもB案でも、まったく差がないのであれば、そもそも悩む必要がありませんね。そこで、管理会計では、「変化」を見極めるために、まずできるかぎり「変わらないもの」にフォーカスするのです。
会社経営とは、選択の連続です。何かを選ぶということは、何かを選ばないことを意味します。これは経営者にとって、大変勇気がいることです。選ばなかった方に、チャンスがあったかもしれないからです。不確実な時代だからこそ、複数ある選択肢の中から、「変わるもの」と「変わらないもの」を明確にし、「変わるものだけを比較検討して」、結果「どのように変わるのか?」を予測するためのツールが管理会計です。
管理会計を学ぶということは、変化をいかに正確に予測するかということです。ヨーロッパはもちろんのこと、ミャンマーなどアジア諸国でも、会計といえば、管理会計が常識。日本では、経営学部など一部の学生しか勉強する機会がありませんが、海外ではふつうの学生が、当たり前のように管理会計を学んでいます。これからグローバル社会を生き抜くためには、たくさんのビジネスパーソンが管理会計的思考を見つけることが大切ではないかと思います。
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