エンゲージメントの向上は社員への敬意から 〜5分間ミーティングで社員から学び、社員を支援しよう〜
目次
1.惰性で働く社員
「ソノダさん、社員のエンゲージメントってどうやって醸成すればいいのかな?」顧問先の社長の言葉です。
実は、この会社は、納期遅れや、売掛金の未回収が頻発し、全社を挙げて改善策を講じなければ、顧客からの信頼を失い、事業が立ちいかなくなる危険性がありました。
しかし、経営者がどれだけ注意喚起しても、社員が本気で業務改善に取り組まないというのです。
そこで、私が社員にヒアリングしたところ、社長と社員の関係性が鮮明に見えてきました。
「社長は、私たちを『コストの塊』、『使い捨て社員』としか見ていないのです。 作業のやり直しや残業が頻発しても無関心だし、職場にもほとんど顔を出しません。 逆に私は『仕事ができない社員だ』と社長にレッテルを貼られて、顔を合わせれば、 『上手くいかないのはお前のせいだ』と罵倒されています。 そんな社員が、会社の為と思って何らかの提言をしても、生意気だと思われるだけです。 であれば、クビにならない程度に働いた方が安心です。」 |
つまり、社員たちは、社長の屈辱的で無関心な言動に失望し、顧客の求めるQCD(品質・コスト・納期)を実現しようという気持ちも失い、惰性で仕事をしていたのです。
そればかりか、最近では、残業代の不払いを労働基準監督署に直訴したり、社外の労働組合に加入して労使交渉を申し込んだりと、社長へ反旗を翻す社員も出てきていました。
2.エンゲージメントは会社と社員の関係性である
さて、社長が向上させたいと考えている「社員のエンゲージメント」とはなんでしょうか?
私たちは、エンゲージメントを、「社員にとって、会社の成功・不成功が、自分自身の成功・不成功と同一視できるまでに、情熱にあふれて仕事に取り組む関係性」であると定義します。
会社との良好な関係性が醸成されていればいるほど、社員のエンゲージメントが高いことになります。
逆に関係性が希薄だったり、壊れていたりすると、エンゲージメントが低く、社員は、会社の社会的使命やビジョンに共感やプライドはなく、自分自身にとって重要でないもの、どうでもいいものと捉えます。
エンゲージメントの高低と業務品質・労使関係
エンゲージメントが高く情熱にあふれた社員は、会社で何か問題が発生した時に、「こんな時に社長ならどうするだろう」と自問自答し、顧客からの高い評価を醸成できるように、機動的に対策を講じ要求されている以上の仕事ができます。それが、自分自身の成功にも繋がるからです。
逆に、私がヒアリングした社員は、会社に対して「情熱」を全く持ち合わせていません。たとえ持ち合わせていたとしても、社長から罵倒されたらどうしようという恐怖心から、「情熱」を心の奥底に押しやっている状態です。
彼らは、この社長の下では、何をやっても無駄だという無力感から来る「惰性」で仕事をし、単に労働時間と業務遂行を切り売りして、何とか生き延びようとしていました。
「情熱」の最も対極にあるのが「怒り」です。「惰性」で仕事をしている社員は、まだ組織や会社にとって危険な存在ではありません。
一方、「惰性」を通り越して「怒り」を抱えた社員は、虎視眈々と「経営者を懲らしめてやろう」と画策し、顧客対応レベルを下げ、職場内の協力関係を壊そうとします。
社内外の労働組合に加入している社員がいる場合は、労働争議に持ち込まれ、顧客からの信頼や会社の資産を失う可能性があります。
私がヒアリングした中にも、「惰性」を通り越して「怒り」を持った社員が、労基署への直訴、労使交渉の申し入れなどをしたと思われます。
社長が社員のエンゲージメントを向上させるには、まず自らの言動に危機意識を持ち、社員との接し方を根本から改めて、社員から「怒り」や「惰性」を取り除かなければならなかったのです。
3.社員に敬意と関心を示そう
社員のエンゲージメントを向上させるためには、最も基本的なことから始めなければなりません。それは、経営者や管理職が社員に敬意と関心を示すことです。
経営者や管理職が社員を侮辱し、社員の失敗を周囲に言いふらすなど、社員を無能で、信頼できない存在として扱っていると、社員の「怒り」を買うことはあっても、「情熱」や「信頼」を得ることは絶対にありません。
また、経営者と社員という序列にしがみつき、上位下達ばかりで、社員が何を感じ、何を考えているか、全く理解をしない(無関心な)経営者や管理職には、誰も協力しようとは思わないでしょう。
一方、社員の声に耳を傾け、社員が考えていることから学び、社員が必要とする支援を惜しまない経営者や管理職の下では、社員自身が会社に歓迎され、気にかけられていると感じ、それが原動力となり情熱を持って仕事をするようになります。
図表1
エンゲージメント |
無し | 低い | 高い |
経営者の態度 | 侮辱 | 無関心 |
敬意・傾聴・学び |
社員の感情 | 怒り | 無力感・疎外感・惰性 |
情熱・信頼・プライド |
業務品質 | 事故 | 停滞 |
機動的・卓越 |
労使関係 | 敵対的 |
労使協議体制 |
週1回5分間ミーティングを継続してみましょう
社員から学び、社員をしっかり支援するために、経営者や管理職(またはチームリーダー)は、週1回、社員と1対1で対話する機会を持つようにしましょう。
この対話は、例えばチーム全員で業務進捗状況を確認するミーティングのような場ではありません。1対1の対話ですから、社員も本音を話しやすくなります。テーマは、社員が直面している課題を引き出すことです。社員に必要な支援を検討するために必要な内容です。
図表2
《5分間ミーティングのテーマ(例)》
・ 社員の今週の業務の進め方について ・ 社員が業務を遂行する上で障害と感じていること(経営者や管理職が支援することはあるか) ・ 考慮すべきプライベート上の制約があるか(親の介護や育児など) ・ 管理職やチームリーダーに提言したいこと ・ キャリア形成や会社で働くこと全般について感じていること |
5分間という短い時間なので、社員から聞き出せる内容にも限りがありますが、社員の置かれている状況を概ね把握し、この1週間の仕事の進め方を確認するだけで、次のような大きな効果が生まれるのです。
効果1: 社員は、経営者や管理職に自分の状況を理解されているという安心感と信頼感をもって仕事に専念できる効果2: 必要であれば業務分担や勤務時間の再調整を行い、仕事とプライベートの両立が可能となり、結果、業務の停滞も未然に防止できる効果3: 社員は、経営者や管理職に、自分の強みやキャリアプランを理解され、自分でも成長に繋がっていると感じることができる 効果4: 効果5: |
5分間ミーティングを継続するための環境整備をしましょう
5分間という短いミーティングですが、多くの経営者や管理職が、「自分たちばかりが話してしまう」、「社員の本音にどう対処したらよいかわからない」などの不安を抱え、なかなか実行に移せないケースもあるでしょう。
こうした経営者や管理職は、社員に対して、「今週の仕事はどのように進めていきますか?」「私に支援してほしいことはありますか?」という、この2つのやりとりだけでも試してみることをお勧めします。
地道な取り組みになりますが、経営者と管理職が、5分間ミーティングという対話の場を設ける頻度が高ければ高いほど、会社と社員の一体感が醸成され、エンゲージメントが向上します。
最後に
社員の成長は経営者の弛まぬ支援の賜物です。社員の成長のために5分間ミーティングを行い、継続することはイコール会社の成長に繋がります。
一方で、経営者は、ミーティングのための時間を捻出したり、社員の本音を引き出すための事前準備をしたりすることは、大きな負担になります。
日頃の業務に追われ、社員の人事情報(役職、業務範囲、給与、勤務実績、キャリア形成など)を適切に管理していない場合は、ミーティングの事前準備が難しく、当然継続することもできません。
経営者がITをフル活用し業務の効率化に努め、かつ、人事情報に関してもタレントマネジメントなどを導入し、社員の成長支援に専念できる時間をつくることは、会社と社員の成長に非常に重要です。