山田隆司
第01回  投稿:2015.04.30 / 最終更新:2018.11.09

労務管理の注意ポイント~労務監査を通じて~

弊所では4~5名の社労士団により、労務監査を実施いたしておりますが、業種の区分なく、労務管理上の不備な点が共通していることに気づかされます。
その多くは、概ね以下の事項が挙げられます。

① パート等の非正規社員に対し、有給休暇を付与していないこと。
② パート等の非正規社員に対し、雇用保険を適正に資格取得していないこと。
③ 賃金台帳に勤怠情報が記録されていないこと。
④ マイカー等の交通費が非課税限度額を超えて非課税支給されていること。
⑤ 就業規則上の賃金の計算方法と実態に乖離が生じていること。
⑥ 就業規則上の所定労働日並びに休日と実態に乖離が生じていること。
⑦ 労働時間の集計について、15分、30分単位での端数処理をしていること。
⑧ 24条協定未締結のまま賃金控除が行われていること。
⑨ 雇入時の健康診断が実施されていないこと。
⑩ 定期健康診断において異常の所見がある者の医師の意見を聴取していないこと。
⑪ 社会保険料の算定にあたり、交通費を算入していないこと。
⑫ 安全衛生推進者が選任されていないこと。
⑬ 雇入時教育、職長教育等の安全教育が実施されていないこと。

①においては、パート等に対しても年次有給休暇は付与しなければなりません。所定労働日数が短い者については、比例付与といって、常用労働者に比べて減じた日数を与えることで足ります。各種相談会でも最も相談件数が多い事項です。

②は週の労働時間が20時間以上で31日以上引き続き雇用される場合は、雇用保険の被保険者となります。但し、昼間部の学生(休学中などの一定の場合を除く)や65歳の誕生日の前日以降に雇用された人を除きます。

③賃金台帳には、氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数、
基本給、手当その他賃金の種類毎にその額、賃金の一部を控除した額を記載しなければなりません。特に勤怠情報が記録されていない
場合は、適正に給与計算が行われていないと判断され、労働基準監督署の臨検や一般労働条件調査時に指導や是正勧告を受けることが
多い事項です。

④交通費は非課税という認識があるからでしょうか、マイカー等の交通費を通勤距離に応じた非課税限度額を超過して、非課税支給としている賃金台帳が目立ちます。自宅からの片道の距離に応じて非課税限度額が決められていますので、限度額を超過する分は課税交通費とする必要があります。
なお、平成26年4月1日以降に支払われるべき交通費について、限度額が改正されています。

⑤多くは端数処理についてですが、例えば、就業規則上では単価計算ごとに四捨五入と定めているのに対し、実計算では、連乗後、四捨五入となっている事例を多く見かけます。
こと、賃金に関しては、未払賃金請求等の紛争に発展する虞があることから、規則通りに行いたいものです。

⑥就業規則上の所定労働日数が短く設定しているのに対し、実際は日数が多い場合や、所定休日のカウントが土曜、日曜、祝日のみで、その他会社の指定する日が割増賃金単価の計算基礎に含まれていないケースが見受けられます。前者の場合は、契約不履行、後者の場合は、所定労働日数を多く計上されるため、割増賃金単価が低額計算されてしまいます。

⑦労働時間の集計については、1分単位が原則です。但し、「1カ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1 時間未満の端数がある場合に、30 分未満の端数を切り捨て、それ以上を1 時間に切り上げること。」については認められます。( 昭和63 年3 月14 日基発第150 号)

⑧社会保険料や所得税、住民税は賃金より控除することができますが、慶弔費や旅費積立金、貸付金の返済は賃金控除に関する協定がなければ控除することができません。過半数労働者代表との協定書を締結することが必要です。

⑨この点は非常に多い事項で、定期検診時に行えば足りるであろうと認識されているようです。
しかしながら、雇入時における健康診断は定期健康診断時における項目の省略が認められないことから、採用試験の提出書類として3か月前の健康診断書を持参させる場合であっても、心電図や血液検査を行っていないことから項目不備とされるケースがあります。
健康診断書を持参させる場合は、以下の項目について実施している必要があります。
1.既往歴及び業務歴の調査
2.自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3.身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4.胸部エックス線検査
5.血圧の測定
6.血色素量及び赤血球数の検査
7.GOT、GPT及びγ―GTPの検査
8.LDLコレステロール、HDLコレステロール及び血清トリグリセライドの量の検査
9.血糖検査
10.尿中の糖及び蛋白の有無の検査
11.心電図検査

⑩定期健康診断の結果に異常の所見があるものについては、健康診断個人票の医師の意見欄に「通常勤務、就業制限、要休業」の区分を記載するよう求める必要があります。意見の聴取は健康診断実施後3ヶ月以内に行う必要があります。医師が記載を失念されるケースが多いことから、検診の打ち合わせ時に念押ししておくことが望まれます。

⑪交通費は非課税であるから、健康保険等も対象とならないと判断されているケースが多いようです。
保険料の算定基礎となることから、保険給付の算定基礎にもなっているので、徴収と給付の整合性はありますので、所得税とは別に捉えていただく必要があります。

⑫安全衛生推進者は常時10人以上50人未満の労働者を使用する一定の事業場において、選任しなければなりません。
罰則の規定はないものの、指導票を受けることの多い事例ですので、適正に選任し、安全衛生の向上に努めていただきたいところです。

⑬労働安全衛生法においては、雇入時や作業内容を変更したとき、新たに職長に就いたとき、危険有害業務に従事する者に対して必要な知識等の教育を行わなければならないと定められています。知識がないことから、危険行為であると気がつかず、重篤災害を招く虞があることから、安全教育はもとより、5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(私は習慣としています))の徹底、ヒヤリ・ハット、KYT、リスクアセスメントの実施により労働災害や健康被害の防止を未然に防ぎたいものです。

これらは一例ですが、思い当たる点について着手いただければ、労務管理におけるコンプライアンスが高まっていきます。労使紛争は小さな溝が大きな亀裂となってひき起こるこるものですので、日々の小さな活動と改善がトラブルの未然防止に功を奏します。
できることから、コツコツと。よりよい職場環境づくりの近道であると思います。

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