野田宏明
第05回  投稿:2014.09.26 / 最終更新:2018.11.09

氏名等の外字における行政の取り扱いについて

人事総務部の方々にとって厄介なものの一つに、氏名の外字があります。従業員数が多い会社になれば、必ずと言っていい程、この外字の管理を人事システム上でどうするのかが課題になっています。ご存知の通り、氏名における外字というのは大変多く存在しています。代表的なところでは、“はしご高”、“立つ崎”といったところでしょう。これら一般的に登場する漢字でさえも、いわゆる外字の扱いになるのです。

氏名の漢字ですので正確に管理したいところですが、パソコンで扱える漢字にも当然ながら制限があり、個別に漢字のフォントを作成すると、他のパソコンでは表示できないといった問題が起きる可能性があります。
以前であれば人事給与システムは閉じたシステムが多かったので、外字を作成していても人事総務部内で運用していればよく、それほど問題にはなりませんでした。しかし、最近はオープンな社内システムとして各種業務に活用されるケースがほとんどです。人事総務部のパソコンしか表示できない外字では都合が悪いのです。

また、社会保険関係など行政側でも外字に対する扱いが異なります。紙による手続きか電子データによる手続きかによっても扱いや対応方法が異なってきます。いくら一般的に存在していて、通常のパソコンであれば表示できる“はしご高”でも、電子データによる申請では行政側でエラーとしてはじかれてしまうのです。この辺りを踏まえると、管理として非常にややこしくなってしまいます。

私自信、手続きに関係する部分については、社会保険労務士として問い合わせの多い事項です。ということで、今回はこの手続きに関する部分を少し整理してみようと思います。人事総務部門はもちろん、人事システム構築の担当者などにも、ご参考になればと思います。

■年金事務所
年金事務所で管理されている氏名は、原則として戸籍上の正式な漢字で管理をしています。しかし、年金事務所でも戸籍で使用されている全ての漢字を網羅している訳ではありません。よくある“はしご高”や“立つ崎”などは扱えますが、扱えない漢字もあるのが現状です。扱えない漢字については、略字やカナでの登録になります。
年金事務所では資格取得届が提出されると、年金事務所のコンピュータに管理されている氏名とのチェックを実施するのですが、この時に漢字の相違があれば、通常は問い合わせが入ります。まれに年金事務所で管理している漢字が誤っているケースもありますので、正しい漢字を確認の上、年金事務所の指示に従って対応するようにしてください。

【紙申請の場合】
前述した通り、資格取得届では正式な漢字を記載する必要があります。パソコンから印字できない場合は、下記の対応をとります。
・その文字だけ手書きで記載する
・文字を空白、またはカナや略字で印字して、手書きなどで記載した別紙を添付する

【電子申請・電子媒体申請の場合】
電子申請や電子媒体申請(CD-R等)で使用できる文字は、JIS第一水準(2965文字)、JIS第二水準(3390文字)のみです。これ以外の漢字を使用した場合はエラーとなります。前述した“はしご高”、“立つ崎”などはこの水準から外れますので、意外とこの範囲外になる方は多くいます。使用できない漢字が含まれている場合は、下記の対応をとります。
・文字を空白、またはカナや略字で表記して備考欄に記載(「高は”はしご高”」 など)
・文字を空白、またはカナや略字で表記して別紙を添付する
ちなみに、電子申請が完了すると年金事務所から電子公文書(xml形式)が発行されますが、ここにも外字が使用できないため、別途郵送ということになります。

なお、紙申請、電子申請ともに、一旦資格取得を正しくした後であれば、以降の手続き(算定など)では略字でも受け付けてくれるようです。

■ハローワーク
ハローワークでは氏名をカタカナで管理しています。その点で年金事務所と管理の仕方が大きく違います。

【紙申請の場合】
原則として、JIS第一水準、JIS第二水準を使用します。ただし、手書きの場合は、外字で表記しても特に問題はありません。ハローワークではOCRにより機械処理をしますが、漢字氏名は読み取らないためです。

【電子申請・電子媒体申請の場合】
電子申請や電子媒体申請(CD-ROM)で使用できる文字は、年金事務所と同様にJIS第一水準、JIS第二水準のみです。使用できない漢字が含まれている場合はエラーとなります。この場合は略字、またはカナで表記するようにしてください。

なお、ハローワークでは漢字は管理しないと言っても、例えば離職票には漢字氏名の記載があります。略字で離職票を取得した場合でも特に問題はありませんが、離職者にご連絡しておくのが良いでしょう。

それでは、上記を踏まえて企業はどのようにこれらの漢字を管理するのが効率的でしょうか?
最も良いのは両方の漢字を人事システムで管理することです。つまり、「正式な漢字」、「第一・第二水準内での文字」を人事マスタ上で管理します。通常の人事ソフトであれば、通常の氏名の他に旧姓を管理できるものは多くあります。できれば、それも含めて下記のような氏名が管理でき、用途や処理によって使い分ける機能があればベターでしょう。
・正式氏名
・旧姓
・社内での通称(仕事上、旧姓で仕事をされている方の管理など)
・電子申請等で使用する氏名(第一・第二水準内での文字(略字など))

私のような立場としては、人名漢字を常用漢字に統一化できれば、民間としても行政としても事務効率は格段にアップすると思ってしまうのですが・・・これはなかなか難しいでしょうね。

※年金事務所、ハローワークの取り扱いについては、各種状況により変わることもありえますので、必要に応じて個別に問い合わせをしていただくようにお願いします。

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