野田宏明
第19回  投稿:2018.05.18 / 最終更新:2018.05.18

電子申請が義務化? 企業はどのような準備が必要か

規制改革実施計画に基づく、行政手続き簡素化の検討が着々と進められています。規制改革推進会議の行政手続部会の中間報告資料についても随時公開されており、これによると、今後、手続き簡素化に向けた様々な改正が予定されています。

その中でも注目すべき内容は、大法人の「電子申請義務化」です。
過去の資料でも、大企業に対する電子的提出の義務化方針は盛り込まれていましたが、それは電子媒体(CD-R等)での提出も含めた義務化であり、書面以外であればOKという内容のものでした。
しかし、先日公表された基本計画では、電子媒体は認めず、電子申請(e-GovやAPI申請対応ソフトでの申請)のみとする内容としてまとめられました。
現状、CD-R等の電子媒体で提出している大企業は多くありますが、電子申請を利用している企業はほとんどありません。平成32年4月の義務化に向けて、電子申請に対応できるよう、新たな業務対応(およびシステム対応)が求められることになります。

 

厚生労働省「「行政手続コスト」削減のための基本計画」(平成30年3月改定版)より抜粋

現在、例えば厚生年金保険の届出において、紙媒体、CD・DVD及び電子申請のいずれかを
選択できる仕組みとなっていることが、電子申請推進の阻害要因となっている。

このため、大法人の事業所については、原則紙媒体及びCD・DVDによらず電子申請を義務化する。
社会保険労務士又は会保険労務士法人が、大法人の事業所に代わって手続を行う場合も同様とする。

実施に当たっては、速やかに切り替えられる事業所から順次切り替えを行い、
平成32年4月1日以後に開始する当該大法人の事業所事業年度又は年度から、
電子申請により行うものとする。また、上記の義務化の要件に該当しない事業所についても、
あわせて電子申請への移行を促すこととする。

 

なお、義務化の対象となる大法人とは、「資本金の額又は出が1億円を超える法人並びに 相互会社 、投資法人及び特定目的会社にかかる適用事業所」とされています。従業員数や被保険者数ではなく、資本金の額で義務対象となるかが決まります。

どの手続きが義務化されるのか?

平成30年4月24日の規制改革推進会議 行政手続部会の中間報告資料において、電子申請義務化の対象となる手続きの種類が明らかになりました。

 

義務化の対象となる届出一覧

社会保険の種類 届出等の種類
厚生年金保険 被保険者賞与支払届
被保険者報酬月額算定基礎届
70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届
厚生年金被保険者報酬月額変更届
健康保険 被保険者賞与支払届
被保険者報酬月額算定基礎届
健康保険被保険者報酬月額変更届
労働保険 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書・
石綿健康被害救済法一般拠出金申告書
雇用保険 雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者転勤届
高年齢雇用継続給付支給申請
育児休業給付支給申請

 

この一覧を見て感じることは、雇用保険に関しては資格取得・喪失が義務化の対象になっており、日々発生する手続きに関しても電子申請の利用が求められるという点です。

人事労務部門としては、社会保険の手続きは電子申請による業務がデフォルトであると考え方を変え、自社業務の改革と、これを契機とした生産性の向上を検討していく必要があります。

自社で電子申請を行うために必要なこととは?

電子申請を行うには、大きく2通りの方法があります。

ひとつは、e-Govのサイトから行う通常申請、もうひとつは外部連携API対応の専用ソフトによる申請です。
私の過去のコラムでも解説しましたが、e-Govサイトからの通常申請はとても非効率です。特に義務化対象となる大企業レベルではなおさらであり、書面手続きよりも手間が掛かると言っても過言ではありません。従って、現実的にはAPI対応ソフトの活用が必須といえます。

API対応ソフトは、各ソフトベンダーからリリースされており、社会保険労務士だけでなく、一般企業が自社手続きに利用することを想定したソフトも多くあります。

専用ソフトでなくても、人事給与ソフトがAPI申請に対応し始めている流れもありますので、バージョンアップ等により利用ができるのであれば、それも一つの方法となるでしょう。

専用ソフトはもともと社会保険労務士向けの業務ソフトであるものが多く、電子申請に関する機能は十分なものが多い印象です。一方、人事給与ソフトによるAPI申請機能については、対応される申請種類、機能等について、事前に確認をしておく必要があるかもしれません。

また、API対応ソフトの導入以外にも、電子証明書の取得など事前の準備が必要になるほか、電子公文書を前提とした業務フローの検討など、業務効率化を意識した事前準備を進める必要があると考えます。

電子申請化は業務効率化のチャンス

私の事務所は、日頃から可能な限りの手続きを電子申請で対応していますが、上手く活用すれば非常に効率的な業務運用が可能となります。
義務化対象の手続きだけを仕方なく対応するのではなく、人事労務部門の生産性向上のために、業務改革として電子申請化を検討してはいかがでしょうか。これは、義務化の対象外となる企業にとっても同様のことが言えます。

弊社では、鈴与シンワート社と共同で、電子申請立ち上げのコンサルティングサービスを提供しています。スムーズかつ効果的に導入ができるよう、ノウハウをご提供させていただきますので、ご興味があれば鈴与シンワート社までお問い合わせ下さい。

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