野田宏明
第02回 14年06月更新

社会保険の電子申請、なぜこんなに利用率が低いのか

本当に利用率が低いのです・・。社会保険・労働保険関係の電子申請の利用実績をご存じですか?なんと僅か4%程度です。しかもこの数字はマイナーな手続きを除いた、反復的・継続的に利用する主要な手続きの平均値です。
最も電子申請が利用されている手続は「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」の6.4%。ちょうど今が提出時期の算定基礎届は4.5%です。雇用保険はさらに利用率が悪く、「雇用保険被保険者資格取得届」が3.2%しかありません(でも、これがもっと利用率の高い手続です・・)。
「あれ?もっと利用が進んでいるのでは?」
「オンライン利用率は40%を超えていると新聞で見たけど?」
などと思う方もおられるかと思います。政府は行政手続のオンライン化を推進しており、近年徐々にその利用率が高まってきています。実際、行政手続全体のオンライン利用率は平成24年度の統計では41.2%に達しました。しかし、社会保険・労働保険の分野ではたった4.2%というのが現状なのです。

出典:「オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針(案)について」 平成26年2月 内閣官房IT総合戦略室 総務省行政管理局)

なぜ、こんなに低いのでしょうか?
私が思うところでは、簡単に言うと「とっつきにくい」と「面倒くさい」の2点だろうと思います。でも、この2点は社会保険労務士の立場から言えば、誤解なんですよね。それほどとっつきにくくもなく、使いこなせば面倒どころか非常に便利なものなのです。私の事務所では基本的にほぼ全ての手続きは電子申請で行っています。他府県の顧問先もあり、もはや電子申請無しでは考えられません。社労士の利用率の悪さについてはここでは掘り下げませんが、社労士はもっと電子申請を利用すれば良いのになと思います。それだけ環境が整ってきていると感じます。
しかし、これが一般企業の人事総務部門の立場で言うと、少し状況は変わります。企業の人事総務部門が電子申請をやるとなると、それは「とっつきにくく」、「面倒くさい」ものになってしまうのです。
これを読んで頂いている企業の人事総務部門の方で、「一度チャレンジしようとしてみたけど・・」という方もいらっしゃるかもしれませんね。一般企業における電子申請のハードルとは一体なんなのでしょうか?・・それは、以下の2点です。

① e-Govの「一括申請」に対応したソフトを持っていない
e-Govには一括申請という便利な機能があります。これは、申請に必要なデータや添付ファイル、署名ファイルをひとつの圧縮ファイル(ZIP)にまとめて、それをe-Govに放り込むだけで申請ができるものです。複数種類の申請や複数人の申請も一つの圧縮ファイルにまとめることが可能です。このZIPファイルを作るための仕様は政府が公開しており、システム会社がその仕様に沿ったデータを作成するためのソフトウェアを開発しています。しかし、そんなソフトは一般企業では普通は持っていないのです。そういうのは社労士事務所向けのソフトですから。
一括申請に対応したソフトを持っていないとどうするか。e-GovのWebサイトから電子申請はできますが、通常の申請方法で一件ずつ入力やファイル添付をする必要があり、一括申請に比べて非常に面倒な業務になってしまうのです。そりゃ、慣れている紙の申請を選びますよね・・

② 添付書類をPDFやJPEGなどの電子ファイルでいちいち添付する必要がある
社会保険労務士が代行をする場合、手続きによっては「17条付記印」といって、賃金台帳や出勤簿などの提出を省略することができます。電子申請でも照合省略といって、事前に労働局に許可を得ることで、同様に一部の添付書類についての省略が可能です。しかし、一般の企業が独自に申請をする場合、原則として全ての添付書類を電子データで付ける必要があります。電子申請の添付はPDFなどにする必要があり、数が多くなってくるとその添付操作が面倒です。そうすると、印刷したものを提出した方が早いと考えてしまいますよね・・
また、書類によっては原本の添付が必要になることもあります。そういうものは、結局郵送が発生してしまいます。

政府の努力もあり、電子申請はここ数年で大変扱いやすいものになってきました。上手く利用すれば事務効率化のメリットは多くあります。大量に手続きが発生する大企業であれば、間接費削減の一施策としてシステム化等の対策を検討していく価値があると思います。しかし、電子申請には前述のようなハードルがあるのも現実なのです。

お客様に「良い方法ありますか?」と聞かれれば、その企業の状況により答えは変わりますが、手続き部分について電子申請を前提として社労士を活用するのがまずひとつです(仕組み作りが重要です)。あるいは、自社での電子申請にチャレンジするのもひとつです。ただし、自社での電子申請チャレンジにはいくつかのシステム的なノウハウ・コツが必要となってきます。
企業は今後、マイナンバー法にも対応して行かなければなりません。ITの活用は、多くの従業員を管理する企業では不可欠です。電子申請の利用率が順調に上がれば、e-Govもより一層便利なものになるものと思います。

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