野田宏明
第28回  投稿:2020.07.10 / 最終更新:2020.07.08

子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得、システム対応の考慮点は?

2021年1月1日より、子の看護休暇、および介護休暇が時間単位で取得できるようになります。2017年に半日単位での取得が可能となりましたが、育児や介護において、より柔軟に取得することができるように時間単位の取得を可能とする改正です。

企業としては、これらの休暇を時間単位で取得できるようにするには、事前に勤怠システム等の対応が必要になります。そろそろ規程の変更やシステム改修に着手していかなければならない時期でしょう。新型コロナの影響で、時差勤務やフレックス勤務の導入に伴うシステム改修が、各社で多く発生しているようですので、早めの対応が望まれます。

今回は、時間単位制度の概要をご説明しながら、システム対応も踏まえた考慮点をお伝えしていきたいと思います。

時間単位取得とはどのような制度か

時間単位というのは1時間単位と定義されています。会社独自に2時間単位とするルールの設定はできません。また、時間単位と言っても「中抜け」という形で取得することまでを法令では求めていません。始業時刻から連続、又は就業時刻まで連続して取得するものとしています。ただ、育児や介護のための休暇であるという趣旨を考えると、可能であれば、法を上回る対応として中抜けありの休暇制度とする配慮ができればより良いものであり、厚生労働省としても中抜けを認める配慮を求めています。

子の看護休暇の場合、子が1人であれば年5日間、2人以上であれば年10日間の取得が可能です。介護休暇は年5日間(対象家族が2人以上の場合は10日間)です。これは従来からの制度として変わりません。休暇を取得した日を有給とするか無給とするかは会社の規程によります。
時間単位の取得が可能になると、これまでは残日数(0.5日単位)の管理で対応していたところに加えて、残時間の管理も必要となってきます。

パートタイマーなどシフト勤務の場合の1日とは?

1日の所定時間が日によって異なるシフト勤務は、何時間の時間取得で1日とカウントすることになるのでしょうか。この点がシステム対応として考慮が必要になってくるポイントの一つになると思います。

まず、1日の平均所定労働時間を基準として持ちます。例えばそれが7時間である場合において、実際の勤務はシフトにより6時間の日もあれば、8時間の日もあるでしょう。
6時間の日においても、8時間の日においても、丸一日を休暇とした場合は、どちらも1日という日単位での取得として扱われます。
時間単位の取得という考え方は、その日の所定労働時間未満の時間を取得した場合の取り扱いとなります。

では、所定労働時間未満の時間取得をした場合、何時間分で1日となるのか。これは、平均所定労働時間(上記の例では7時間)分の取得で1日とカウントすることになります。
例えば、8時間シフトの日に6時間の時間休暇を取得すれば、平均所定労働時間の7時間に達していませんので、1時間の残時間が残ります。つまり、5日残っていた人であれば、4日と1時間の残になるということです。

平均所定労働時間に分単位の端数がある場合は?

例えば1日平均の所定労働時間が7時間30分である場合、何時間の取得をもって1日とするのか。これについては、端数は時間単位に切り上げて計算するとされています。つまり、この場合は8時間分の時間取得で1日としてカウントすることになります。
7時間30分の所定労働時間において、7時間を休暇とし、最後の30分だけ勤務した場合においては、1時間分の残時間が発生することになります。1時間単位で捉えることを前提に、従業員にとって有利になるように定められています。

正確な残日数・時間の管理のためのシステム化ポイント

前述したとおり、シフト勤務における管理方法はルール化されており、企業としては、パートタイマーにおいても各従業員の平均所定労働時間をきっちり把握して、適切な残日数・時間の管理が必要になります。

現在、時間単位の有給休暇制度を導入している企業の場合、その計算の仕組みに上手く乗せられれば良いですが、法令上の基本的な考え方は同じであるものの、時間有休は労使協定による取り扱い等により異なる点があるかもしれませんので、改めて確認しておくべきでしょう。

勤怠システムの対応におけるポイントは簡単にまとめると、以下のような点になると考えます。

①シフト勤務者おける平均所定労働時間のシステム管理
時間単位の場合の残時間計算には平均所定労働時間が必要です。この時間が従業員別にシステム上で管理されている必要があります。

②時間単位の取得における残時間の計算と管理
現在においても日単位での残日数管理は行っているかと思いますが、これに残時間という新たな管理項目が必要になってきます。また、勤怠の集計時などにおいて残時間を含めた計算を追加する必要があるでしょう。

③契約変更により平均所定労働時間が変わった場合の残時間の再計算
日単位で残っている部分はそのままで問題ありませんが、時間単位で残っている部分に関しては、所定労働時間の変動に比例して時間数を変更する対応が必要になると考えられ、その計算対応が必要になります。
厚生労働省のHPに掲載されている「子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A」にはその点の記載はありませんが、時間単位の有給休暇制度にならうと、このような考え方をするのが適切でしょう。

④半日単位の休暇との兼ね合い
時間単位の取得を可能とすれば、半日単位の取得という考え方を無くすことは可能です。引き続き残す場合においては、半日の取得が、時間単位で取得するよりも不利になるのは適切ではないため、その考慮が必要になります。

子の看護休暇、介護休暇の時間単位取得に関しては、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定において定めた場合には、その取得を拒むことが可能です(これは従来からの半日単位も同様)。
しかし、あくまでも業務の性質や実施体制による理由であり、単にシステム対応などの管理面での対応が取れないなどは理由にはなりません。

システム対応を含めた管理方法の確立には、ある程度時間を要すると思われますので、改正内容の確認を早めに行っていただき、具体的な対応に取り掛かるのが良いと考えます。

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