野田宏明
第30回  投稿:2020.12.09 / 最終更新:2020.12.08

e-Govがリニューアル、企業は積極的に活用できるか?

2020年11月24日にe-GovのWebサイトが大幅リニューアルされ、e-Govを直接利用した電子申請も様々な点で見直しが行われました。どのような改善が行われたのか、そして、このリニューアルにより企業として積極的に利用できるシステムになったのか、これらについて主な点をご紹介したいと思います。

改善された主な点

サイト全体の見栄えは大きく変わり、見やすく目的のメニューも探しやすくなりました。ロゴも変更されています(個人的には前のロゴの方が好きです・・)。
重要なのは使い勝手ですので、そちらを中心に主な変更点をご説明します。

①ログイン方式になった
まず大きく変わったところとして、ログイン方式になったという点です。今はどのようなWebサービスでもユーザIDを作成してログインして利用するのは当たり前ですが、以前のe-Govにはログインはありませんでした。電子申請したものとパーソナライズというIDとの紐づけは可能でしたが、申請後に手動で行う必要があり、管理が面倒でした。
ログインはメールアドレスの他、GビズID、Microsoftアカウントでも可能です。
このログイン方式への変更により、申請した案件の管理や共通で必要となる申請者情報、連絡先情報の事前設定が可能になりました。

②電子証明書に加えGビズIDが利用できるようになった
2020年4月から社会保険の手続きに対応したGビズIDですが、日本年金機構の届書作成プログラムに加えてe-Govでも利用できるようになりました。これにより、費用のかかる電子証明書を作成しなくてもe-Govを利用できるようになります。
政府は各省庁のシステムについて、GビズIDとの接続を原則とする方針を打ち出していますので、これは当然の流れでもあります。

③画面遷移が少なくなり、預かり票も廃止に
以前のe-Govの使い難さのひとつに、1申請を送信するための作業ステップが非常に多いという点がありました。申請書類や添付書類がある場合、それぞれ毎に電子証明を行い、一旦預かり票を発行して紐づけながら書類を完成させるステップとなっていました。この操作は、最初は非常に分かり難く、私が社労士会で行っていた社労士向け電子申請サポートでも教えるのが難しかった点です。
新システムでは、申請に必要となる情報入力が基本的に1画面に集約されています。例えば雇用保険資格喪失届(離職票あり)の場合は、喪失届と離職証明書の2つの書類がありますが、1画面でタブを切り替えるイメージで入力が可能となります。添付書類も同画面から可能ですので、預かり票の概念もなくなりました。この点は今回の更改で最も良くなる点の一つでしょう。

私の感じた主な変更点はこのような内容ですが、今回ご紹介した点以外にも様々な変更がされていますので、詳しくはe-Govサイトの資料をご参照いただければと思います。

企業が利用する上で注意しておく点、知っておくべき点

①ログインにおける二要素認証方法
今回からログインが必要になりましたが、認証はID・パスワードに加えてスマートフォン等による2要素認証になりました。そのため、スマートフォンにワンタイムパス発行のための「Google Authenticator」などのアプリのインストールが必要となります。
企業が利用する場合、人事労務部門の担当者の個人スマホに設定するのは現実的ではありません。複数名で対応しているでしょうから、個人スマホではなく共有の(それ専用の)スマートフォンを用意する必要があるでしょう。
スマートフォンによらない方法も用意されており、この場合はあらかじめ決めた質問の答えを入力する方法です。「卒業した小学校の名前は?」などの良くあるものです。個人的な質問ばかりなので、企業の利用を考えているのかなと疑問に思いましたが、会社や部門で決めておけば、これを利用する手もありそうです。

②申請データの入力画面レイアウトは変更なし
従来から使い難さのひとつであった申請書類の入力画面については、残念ながら大きな変更はないようです。下図のように書類と同じイメージの画面のまま、全ての項目について入力が必要となります。事業所情報など、事前設定で対応可能なものは入力項目として省略するなど、PC画面の入力を意識したUIに変更できなかった点は残念です。
手続き数が多い企業であれば、この入力手間を考えると、e-GovではなくAPIによる民間ソフトの活用がやはり現実的だと感じます。

入力画面例(e-Govアプリケーション画面から引用)

③申請データの保存、ひな形データの活用
以前のe-Govでは、入力したデータ内容の保存はxmlファイルとしてローカルに保存が可能でした。この機能を活用して、各申請書のひな形データを保管しておき、申請時には、まずこれを読み込んだ上で、必要な内容を画面入力するという方法が可能でした。
新システムでは、従来の細かな画面単位のxml保存ではなく、入力中の申請案件全体の保存を行う形になります。以前から使っていたひな形となるxmlは利用できなくなりますのでご注意下さい。
とは言え、作り直せばひな形として活用できることは変わりませんので、申請データ保存機能は今後も上手く活用していくべきでしょう。

まとめ

まだ当事務所でもリニューアル後のe-Govはそれほど利用できていませんが、従来のものに比べて確実に使いやすくなっていると感じます。
普段は民間のAPI対応ソフトを利用していても、手続きの種類によってはe-Govを利用せざるを得ないケースもよくありますので、今回のリニューアルの恩恵は大きいものです。
中小企業でこれから電子申請を活用していこうという企業は多くあると思います。それほど頻繁に手続きが発生する訳でなければ、無償で利用できるe-Govを利用してみるのが良いかもしれません。逆に入退社が多く手続き頻繁に発生するなどで、効率的な業務を求めるのであれば、民間のAPI対応ソフトの検討が良いでしょう。
今回のリニューアルの改善点を知っていただき、自社業務の改善に役立つようであれば、e-Govの活用をぜひ一度検討してみて下さい。

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