雇用保険のマイナンバー取り扱いについての留意点
いよいよマイナンバー制度がスタートしました。雇用保険の各種手続きについては、今月よりマイナンバーの記載が義務化されます。
この雇用保険の手続きですが、12/18に厚生労働省のホームページに更新があり、取り扱いについてのいくつかの変更がありました。人事総務部門の皆様は十分にご注意下さい。
今回は12/18に公表された変更点について解説をしたいと思います。
①雇用保険の個人番号記載を「努力義務」から「義務」に変更
以前までは、雇用保険に関しては「努力義務」となっていましたが、雇用保険法令に基づく「義務」と整理し直されました。会社によっては、準備等の関係から一旦は番号なしの届出を想定されているところがあるかもしれません。1月以降に手続きをされる場合は、個人番号の記載は義務となりますのでご注意下さい。
なお、個人番号が記載されていないからという理由で、ハローワークが申請を受理しないということはありません(これはハローワークだけでなく、税務署等も同じです)。何らかの理由で番号を記載できない場合は、遅れてでも良いので「個人番号登録届出書」の提出を行うようにしてください。
②在職している被保険者の個人番号の届出が不要になった
当初、平成28年のどこかで、在職者の全被保険者の個人番号について提出依頼が来るという話でしたが、この件についてはどうやら不要になったようです。人事総務部門にとっては良い話ですね。これにより、在籍者全員の個人番号が必要となる時期は、平成28年の源泉徴収票/給与支払報告書提出の時期(平成29年1月)ということになります。
③雇用継続給付の申請を事業主が出す場合、代理人という形での提出となる
人事総務部門にとっては、これが最も運用面での想定が変わるところかもしれません。
雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付)について、労使協定を締結して事業主が申請書を提出する場合は、個人番号関係事務実施者ではなく、本人の代理人として申請を行う形になります。
これにより、本人確認は事業主が行うのではなく、ハローワークが行うことになります。つまり、事業主はこれらの手続き時に、本人確認書類、代理権が確認できる書類を添付してハローワークに提出する必要があるということです。
具体的には下記の書類添付等が必要になります。
(1)代理権の確認
現在、雇用継続給付の申請を会社が行っている場合は、労使協定があると思いますので、「個人番号についても協定に基づき届け出る」旨の確認書を作成して添付します。雛形は厚生労働省のホームページにあります。平成28年1月以降初めての雇用継続給付の申請の際に提出すれば、以降の提出は不要です。
初めて雇用継続給付の申請を行う場合は、いくつか方法がありますが、労使協定の写しを添付するのが良いでしょう。
(2)代理人の身元確認
提出者(人事総務部門の担当者等)の社員証又その写し等の提示を行います。
(3)本人の番号確認
従業員の個人番号カードの写し、通知カードの写し等を添付します。
(1)や(2)については、それほど運用面での負担は無いと思われますが、(3)については会社によっては注意が必要です。一斉に集める予定の場合でも、本人確認書類は保管しないことを想定している会社も多いでしょう。その場合、これらの手続きを行うタイミングでは、本人から再度、番号確認書類を提出してもらう必要が出てきます。また、それを一時的にであっても保管する業務も発生します。安全管理において問題とならないか、再チェックをしておいた方が良いでしょう。社会保険労務士に委託している場合でも同様ですのでご注意下さい。
なお、これは平成28年以降に初回の申請を行う場合のみ必要となります。既に平成27年までに受給確認・初回申請を行っていて、2回目以降の申請をしている方には必要はありません。
④届出書類を郵便で送付する場合の取り扱い
これまで、「届出に係る履歴が確認できるような方法(例:書留郵便等)」で送付するように記載されていましたが、表現が下記に変更になりました。
「普通郵便でも受理するが、郵送で届出を行う場合は、できるだけ、追跡可能な書留郵便等による方法での届出を行う」
いろいろと問い合わせを受けての変更だと思います。とは言え、書留郵便はコストがかかりますが、できるだけ追跡可能な方法を使う方が良いとは思います。または、電子申請を検討することでしょう(前回のコラムを参照)。
マイナンバーの運用はまだまだ変わっていくことが想定されます。絶対に情報漏えいが発生しないように十分な準備と慎重な運用を行いながら、新しい情報にも注意を払っておく必要があります。”
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