S-PAYCIALコラム
S-PAYCIAL-Column
著:石田昇吾氏
第06回 17年11月更新
第6回は、資産除去債務に関する会計処理を取り上げます。
平成20年3月に資産除去債務に関する会計基準が設定されました。
これまでは、資産除去債務を負債に計上するという会計慣行はありませんでしたが、国際財務報告基準(IFRS)と日本の会計慣行との差異をなくしていくという目的で、資産除去債務が取り上げられたことにより、始まった会計処理です。
資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるものと定義されます。
(例)店舗の取得価額30,000,000円、耐用年数は10年、(土地の定期借地契約の年数も10年)、店舗を除去する際の支出は10,000,000円と見積もられた。減価償却は、残存価額0円の定額法。割引率は2.0%。便宜上、期首に取得したと仮定。
①資産除去債務の見積もり
将来キャッシュフローが10,000,000円となるため、現在価値に割引計算をします。
1.02の10乗=1.21899441997
10,000,000円÷1.21899441997 =8,204,000円
②建物取得時の会計処理
上記①を資産除去債務として、負債に計上するとともに、同額を建物の取得価額に含めます。
建物 38,204,000 現金預金 30,000,000
資産除去債務 8,204,000
③1年後
通常の決算と同様に減価償却費を計上するとともに、時の経過による資産除去債務を増加させます。
・減価償却費
38,204,000 ÷ 10 = 3,820,400
・資産除去債務増加額
8,204,000 × 2.0% = 164,000
減価償却費 3,820,400 減価償却累計額 3,820,400
利息費用 164,000 資産除去債務 164,000
④店舗除去時の処理
※実際の除去費用が12,000,000円であったと仮定します。
通常の建物の除却の処理をするとともに、帳簿上の資産除去債務と実際に支払った除去費用との差額(履行差額)を損益として認識します。
減価償却累計額 38,204,000 建物 38,204,000
資産除去債務 10,000,000 現金預金 12,000,000
資産除去費用 2,000,000
①資産除去債務は、除去に関して法律上の義務がある場合等に計上が求められます。
②資産除去債務は、負債に該当し、流動固定の区分は、ワンイヤールールによって判定します。
③資産除去債務は、消費税の課税取引には該当しません。したがって、会計入力の際に、建物本体の価格のみ課税取引として消費税コードを入力してください。
法人税法上、資産除去債務に対応する部分の減価償却費は損金となりません。また、同様に利息費用についても損金不算入となるため、別表調整が必要です。通常、これらの項目は、税効果会計の対象になります。
クライサー税理士法人 代表 亀戸本店所長 http://www.ishida-tax.net/
明治大学付属明治高等学校、明治大学商学部産業経営学科を卒業。
在学中から税理士を目指し、都内の税理士法人にて、税理士業務全般に従事。
平成23年に石田税務会計事務所を開設。
平成28年より税理士法人化し、名称をクライサー税理士法人へと変更する。
財務面と経営者の視点の両方を兼ね揃えた提案に定評があり、顧問先にじっくりと向き合ったサービスを提供している。
また、仮想通貨に関連する税務業務にいち早く取り組んでおり、独自のサービスも展開している。
(https://www.bitcoin-tax-taisaku.com/)