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第22回 16年01月更新

1か月単位の変形労時間制と残業代の関係

製造業やサービス業を中心に、さまざまな変形労働時間制を導入している会社は少なくありません。しかし、実際の給与計算の内容を見てみると、正しい計算方法を理解しないままこれまでのやり方を踏襲しているケースもあるようです。

今回は、変形労働時間の中でも、飲食業やサービス業で多く利用されている「1か月単位の変形労働時間制」を導入している場合の割増賃金の計算方法を見ていきます。

1か月単位の変形労働時間制とは?

1か月単位の変形労働時間制とは、労働基準法第32条の2で定められている次の制度のことをいいます。

「1か月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、当該変形労働時間においては、1日及び1週間の法定労働時間にかかわらず、これを超えて労働させることができる。」

つまり、1か月以内の一定の期間(1日から月末までなどの暦上の1か月としている会社が多いようです)を決めて、この期間を平均して週40時間(特例対象措置事業場は週44時間)以下になっていれば、 忙しい時期の所定労働時間が1日8時間、週40時間を超えていても、時間外労働の扱いをしなくて済むという制度です。

この制度を導入するメリットのあるのは、以下のいずれかに該当するような会社です。

1)月初や月末など特定の時期に業務が集中している
2)週の始めや週末など特定の曜日に業務が集中する
3)営業時間が長く、1日8時間を超える勤務シフトがある
4)ある週は4日勤務だが、ある週は6日勤務する勤務シフトがある  など

変形期間の所定労働時間の上限

変形期間の労働時間を平均して、1週間の労働時間は法定労働時間を超えないこととされています。そのため、変形期間の所定労働時間の合計は、次の式によって計算された範囲内とすることが必要になります。

変形期間の上限労働時間 = 1週間の法定労働時間×変形期間の暦日数÷7日

変形期間を1か月としている会社では、各月で次の時間数が上限時間になります。

なお、労働時間の上限時間数の(  )内は、常時使用する労働者数が10名未満の商業などが対象となる「特例措置対象事業場」における上限時間数です。

1か月の暦日数 上限時間数
28日 160.0時間(176.0時間)
29日 165.7時間(182.2時間)
30日 171.4時間(188.5時間)
31日 177.1時間(194.8時間)

 

割増賃金の計算方法

変形労働時間制を使用していない会社であれば、割増賃金は1日8時間を超えるか、あるいは週40時間を超えた場合に支払いをします。しかし、1か月単位の変形労働時間制の場合は、少し計算の方法が変わってきます。

それぞれのケースごとに、法律上の計算方法を見ていきましょう。

ケース1)1日の労働時間を8時間よりも長く設定した日
その日に設定した時間を超えた時間に対して、2割5分以上の割増賃金の支払いが必要です。
たとえば、1日の労働時間を11時間と設定した日であれば、11時間を超えた時間からが割増賃金の支払い対象となります。

ケース2)1日の労働時間を8時間よりも短く設定した日
法定労働時間を超えた時間が、2割5分以上の割増賃金の支払いが必要な時間です。
たとえば、1日の労働時間を5時間に設定した日の場合、5時間を超えたすべての時間について割増賃金を支払うのではなく、法定労働時間の8時間を超えた時間だけが割増賃金の支払いの対象になります。
なお、5時間から8時間までの3時間については残業であることには変わりありませんので、原則として(注)割増をしない通常の賃金相当額の残業代の支払いは必要です。

ケース3)1週の労働時間に対する割増賃金
週40時間以上の労働時間を当初から設定をしていた週の場合、その設定をした週労働時間を超えた時間はすべて割増賃金の支払い対象になります。
週40時間未満の週については、40時間を超えた時間からが割増賃金の支払い対象となり、設定していた時間から40時間までの時間数については、原則として(注)割増をしない残業代の支払いになることに注意が必要です。

ケース4)変形期間全体の労働時間に対する割増賃金
ケース2)とケース3)の文中に(注)と記載した「原則として割増をしない残業代の支払いの対象になる時間」の中でも、割増をする必要がある時間もあります。
すでに割増賃金の支払いとした時間を除き、その期間の上限時間を超えた時間がそれにあたります。つまり、所定労働時間と割増の支払い対象にならなかった時間(注の時間)を合計が、その期間の上限時間を超えていれば、その超えた時間については割増賃金の支払いが必要です。

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1か月単位の変形労働時間制は、他の変形労働時間制とは違い、就業規則に要件を記載するだけでも導入をすることができる制度です。そのため中小企業で導入している会社も多く見られます。

しかし、割増賃金の対象となる時間については、変形労働時間制を利用していない一般的な会社に比べ、多少理解しづらい点があります。

もちろん、給与計算を簡便にするため、設定した時間を超えた場合のすべてを割増賃金の対象にしてもかまいませんが、法令を理解した上で各社の運用方法を決定することをおすすめします。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

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