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第40回 17年07月更新

賃金から控除できる項目と労使協定

社員会費や昼食の弁当代などを、給与から天引きしている会社は少なくありません。給与計算上は、社会保険料や所得税を控除した後に、社員会費等を控除すれば手取り額は計算できます。
しかし、社員会費等を天引きするには、賃金控除に関する協定書を労使で締結しなければなりません。給与計算の実務上は特に難しい作業ではないためか、法律的な手続きがおろそかになっているケースが多く見受けられます。

今回は、「労使協定がなくても」賃金から控除できることになっている項目と「労使協定があれば」賃金から控除できる項目の違い、賃金から控除するために必要な「労使協定の内容」についてみていきたいと思います。

1.賃金支払いの5原則

まず、大前提として知っておいてほしいのが、賃金の支払方法は、労働基準法第24条で定められた次の原則すべてにしたがう必要があるという点です。

これは、月給、日給、時給等の賃金形態の違いにかかわらず適用されます。

・通貨支払の原則 「賃金で通貨は支払わなければならない」
・直接払いの原則 「賃金は直接労働者本人に支払わなければならない」
・全額払いの原則 「賃金は支払うべき額の全額を支払わなければならない」
・毎月払いの原則 「賃金は毎月少なくとも1回以上支払わなければならない」
・一定期日払いの原則 「賃金は一定期日に支払わなければならない」

このうち、今回の賃金からの控除と関係するのは「全額払いの原則」です。この原則によれば、どのような名目であっても、給与からは一切の控除はせずに、そのまま全額を支払わなければならないことになります。

2.賃金から控除できるもの

ただし、「全額払いの原則」には例外があり、次のいずれかに該当する場合は、賃金から一部を控除して支払うことができます。

1)法令に別段の定めがある場合
所得税・地方住民税の源泉徴収や健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの社会保険料が該当します。

2)社員の過半数で組織する労働組合があり、その組合との書面による協定がある場合

3)社員の過半数で組織する労働組合がない場合で、社員の過半数を代表する者との書面による協定がある場合

つまり、1)の所得税・地方住民税の源泉徴収や健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの社会保険料以外は、いかなる理由があったとしても、労使協定がなければ給与からは控除することはできません。

3.賃金控除に関する労使協定の内容

とはいえ、労使協定があれば何でも控除して良いわけではありません。社販の購買代金、社宅・寮費その他の福利厚生費用、社内貯金、組合費等、内容が明白なものについてのみ控除が認められます。
したがって、社員会費のような明白な費用を賃金から控除したい場合は、まず労使協定を結び、その後はじめて天引きができるようになるのです。

賃金控除に関する労使協定には、次の項目を盛り込み、協定書を作成します。

1)控除を行う賃金の支払い日
2)控除の対象となる具体的項目
3)協定の有効期間

締結した労使協定は、労働基準監督署への届出は不要なので、従業員に周知できるように保管しましょう。なお、この労使協定がない状態で賃金控除を行ってしまうと、法令違反として30万円以下の罰金が科されてしまうことがあります。
この労使協定は自動更新にしている会社も多くありますが、実務上、当初の労使協定の内容と実際に控除している項目が異なってきているケースが見受けられます。
賃金控除を行っている会社は、協定書の有無とその内容が現状に即しているかについて、改めて確認してみましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

川島孝一氏が「日本の人事部」に寄稿したコラムのバックナンバーを掲載します

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