S-PAYCIALコラム

S-PAYCIAL-Column

第41回 17年08月更新

入社した従業員がすぐに退職したとき

人手不足が続く近年では、採用環境が売手市場であることもあってか、コストをかけて採用した若い社員がなかなか定着しないという悩みを聞きます。極端なケースだと、入社して2日、3日しか経っていないのにあっさりと辞めていってしまうというケースも珍しくないようです。

入社後の研修期間中に退職となったようなケースでときどき質問されるのが、「研修だけで会社に対しては何の貢献もしていないから、通常の給与よりもすくなく支払うということはできませんか?」というものです。
会社の気持ちはお察しするのですが、質問に対しては「残念ながら少なくすることはできません。」という回答になります。
会社と社員の間にはすでに雇用契約が成立しており、会社の指揮命令にしたがって研修を受けているので、実際の出勤日数分の給与の支払いが必要になります。
会社側の「多大な費用と時間をかけて採用した上に、研修まで受けさせてあげているのにさっさと辞めていく者に対しては損害賠償をしたいぐらいだ」という心情も理解できます。しかし、法律通りの取り扱いをしないと、さらに不要なトラブルに発展する可能性があります。
今回は、入社してすぐに退職したようなケースでの、給与の日割り計算の方法と社会保険料等の控除についてみてみましょう。

給与の日割り計算の計算式

入退社時の日割り計算の方法は、会社は自由に決めることができます。ただし、いくら自由に決められるといっても、恣意的にそのつど決めるのでは計算の正当性・妥当性等が疑われます。通常は、賃金規程に月額で決定している給与の日割り計算の方法を記載しておき、それにしたがって計算します。
日割り計算のイメージは、「働いた日数÷月の日数」 が基本です。

ひとくちに「月の日数」といっても、さまざまな決め方があります。多く使われるのは「(1)その月の暦日数」「(2)その月の所定労働日数」「(3)1年間を平均した1か月あたりの所定労働日数等」になります。

(1)その月の暦日数で計算する場合
「入社から退職までの在籍日数÷その月の暦日数×給与額」でその月の給与を決定します。仮に入社から退職までの短い期間の中に欠勤があった場合は、この計算式で算定した給与から、さらに欠勤控除を行います。

(2)その月の所定労働日数
「入社から退職までに実際に出勤した日数÷その月の所定労働日数×給与額」でその月の給与を決定します。
「実際に出勤した日数」とすることで、仮に入社から退職までの短い期間の中に欠勤があっても、欠勤した日の分は支給されていないことになります。

(3)1年間を平均した1か月あたりの所定労働日数等
ここでの表記で「所定労働日数」ではなく、所定労働日数「等」としているのは、賃金規程等で記載があれば、小数点以下をとってしまい「21日」や「22日」で日割り計算をすることが可能なためです。
この方法の場合は、2通りのパターンがあります。

1)「入社から退職までに実際に出勤した日数÷所定労働日数等×給与額」を「支給」
2)「退職後も含め勤務しなかった日数÷所定労働日数等×給与額」を「控除」

なお、2)の控除する方法の場合、例えば所定労働日数等を「21日」で固定している会社で、その月の本来の所定労働日数が23日で実際に出勤した日数が2日しかない(つまり勤務しなかった日数が21日)だったとすると、計算の結果、給与が「ゼロ」になってしまいます。労働した日数があるのに給与がないというのは、法律上問題がありますので、「労働した日数が少ない(例えば5日以下)場合は1)で計算する」などの特例措置を設けておく必要があります。

通勤費の日割り計算の計算式

通勤費は、実費弁償の側面が強いので、日割り計算も給与とはわけて考えた方が良いです。
ときどき、通勤費を日割りにすると「すでに定期を買っている」などと言う退職者の方もいるようですが、そもそも会社は退職することを想定せずに定期代を支給しており、退職するのは従業員の都合です。非生産的なやり取りに時間をとられないように、こちらも賃金規程に記載しておくことをおすすめします。

通勤費の日割り計算方法は、本来1か月分として支給するはずであった定期代等を基準にして算定する場合と、出勤した日数分だけの日額通勤費を支給する方法があります。
定期代等を基準にする場合の計算方法は、月額で決定している給与と同じように考えれば良いでしょう。

社会保険料や所得税の控除について

日割り計算であったとしても、社会保険料や所得税といった項目は、支給する給与から控除しなければなりません。

健康保険や厚生年金保険といった社会保険料は、入社した月と同じ月に退職した場合であっても、1か月分の保険料が発生することになっています。これを「同月得喪」といいます。
つまり、入社後2日や3日で退職をした場合であっても、社会保険に加入した社員であれば1か月分の保険料は支払わなければなりません。「日割り」という概念はありませんのでご注意ください。
なお、健康保険組合に加入している場合は、加入している健康保険組合によって取り扱いが異なるケースがありますので、加入している健康保険組合に確認ください。
また、厚生年金保険は、退職した月に再就職した場合などでその月の保険料が不要になることもあります。ただし、本人の申出だけでは不要になるか否かは会社では判断できませんので、かならず1か月分を徴収するようにしてください。不要になる場合は、数か月後に年金事務所より通知が来ますので、その後本人負担分は会社から本人へ返金することになります。

雇用保険料と所得税は給与額に応じて計算しますので、こちらも忘れずに控除するようにしましょう。この2種類の計算は、在職者と何ら変わることはありません。

入社から退職までに実際に勤務した日数があまりにも少ないと、社会保険料等を控除した結果、給与がマイナスになることがあります。こうした場合は、控除しきれない差額を退職した社員に別途請求することになります。しかし、このような退職者に不足分の請求書を出しても支払ってもらえず、会社が従業員分の保険料も負担するケースも珍しくありません。
せっかく入社した社員が数日で退職してしまうのは、採用環境や入社した社員側の考え方の変化が大きな要因と考えられています。しかし、このような社員が複数発生するようであれば、会社側にもその一因があるかもしれません。そのような会社では、その原因を探り、社員が定着できる職場環境をつくることが重要です。

著者プロフィール(川島孝一氏)

川島孝一氏が「日本の人事部」に寄稿したコラムのバックナンバーを掲載します

バックナンバー

S-PAYCIALコラムTOPへ戻る

PAGE TOP