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第50回 18年05月更新

賃金支払いの5原則~その3

前回、前々回に引き続き、今回も労働基準法第24条で定められた「賃金支払いの5原則」についてみていきます。今回説明するのは、「賃金の全額払いの原則」です。
労働基準法第24条の条文については、以下を参照ください。

(労働基準法第24条)

1.賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令もしくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省で定める賃金について確実な支払いの方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときにはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては賃金の一部を控除して支払うことができる。

2.賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省で定める賃金についてはこの限りでない。

賃金の全額払いの原則とは?

賃金は、「一部を控除したり、分割したりすることなく、その全額」を支払わなければなりません。しかし、通常給与や賞与を支払うときは、当然のように社会保険料や所得税などを控除して、本人に支払っていると思います。
これは、賃金の全額払いを定めた労働基準法第24条第1項の後段「また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときにはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては賃金の一部を控除して支払うことができる。」があるからです。

つまり、賃金から当然に控除して良いのは、法律で定められた「所得税」「住民税」「社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険)の本人負担分」だけということになります。
会社によっては、社員旅行の積立金や食事代、社宅家賃などを給与から控除しているケースもあると思います。このように、法律で定められた項目以外の費用を控除する場合は、どういった項目を賃金から控除するのかをあらかじめ「労使協定」として締結しておかなければなりません。
この労使協定で締結した項目以外を賃金から控除したり、そもそも労使協定を締結していない場合は、労働基準法第24条違反になりますのでご注意ください。

遅刻や欠勤の控除について

賃金の全額払いの原則は、上記のとおりですが、それでは月給者が欠勤や遅刻をした場合に不就業分を控除するのはどうなるでしょうか。
賃金は「ノーワーク・ノーペイ」の原則がありますので、「欠勤等をした日数分」や「遅刻や早退、私用外出などをしたときの時間数分」についてはもともと賃金が発生しません。
計算上は賃金から控除しているので、「全額払いの原則」に反するように感じますが、実際は労働した日数や時間分を計算しているのに過ぎません。したがって、欠勤や遅刻等の不就業分を控除した後の金額が「その月の賃金の全額」にあたります。
この控除後の金額に対し、「賃金の全額払いの原則」が適用されることになります。

割増賃金計算における端数処理について

「賃金の全額払いの原則」を厳格に適用すると、残業時間や残業代の端数処理をして、結果的にカットした時間や金額が発生したとすると、賃金を全額支払ったことにはならなくなります。
この場合も労働基準法第24条違反になってしまうのでしょうか。
このようなケースでも、先ほどの不就業時の控除同様、「賃金の全額払いの原則」が適用される賃金を計算するための前処理と考えてください。

残業時間や残業代の計算は煩雑なので、一定の限度で簡略化することが認められています。その一定の限度とは、以下の5つです。

1)1ヶ月における労働時間、休日労働、深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
2)1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
3)1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
4)1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。
5)1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を、翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。

 

給与計算を行う上で、賃金や労働時間の端数処理を行っている会社は多いと思います。会社独自のルールで端数処理を行っている場合は、その方法が適正なものかを確認してみてください。
また、賃金から法定項目以外の費用を控除している会社も多くあります。「賃金から控除する項目に関する労使協定」は労働基準監督署へ届け出るものではなく、有効期限を設けていないことも多いため、あまり重要視されていないようです。
しかし、協定の締結から年数が経つにつれ、実際に賃金から控除する項目が変更になっていることも多くあります。現在賃金から控除している項目を労使協定が網羅しているか、一度確認してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール(川島孝一氏)

川島孝一氏が「日本の人事部」に寄稿したコラムのバックナンバーを掲載します

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