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第52回 18年07月更新

退職金の税務計算

さまざまな会社の給与明細を見ていると、たまに退職金を給与に上乗せして一緒に支払ってしまっている明細書に出くわすことがあります。担当者に確認すると、給与に合算するのは、「振込先は一緒だから。」「まとめた方が計算が楽だから。」などの理由があるようです。
税務上は、「給与所得」と「退職所得」はまったく異なるものであり、退職所得は、給与所得に比べて税務上優遇されています。給与と退職金をそれぞれ計算し、振込の手間や手数料を省くためにまとめて支払うのであれば問題はありません。しかし、給与に合算して計算してしまうのは、必要以上の税金を徴収されることにつながり、本人にとっても不利益になります。
今回は、退職金の税金計算についてみていきたいと思います。

退職金とは

「退職所得」とは、会社を退職をしたことにより勤務先から受ける退職金などの所得をいいます。会社から支給される退職金だけでなく、確定給付企業年金契約に基づいて生命保険会社や信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。
また、労働基準法第20条の規定により支払われる解雇予告手当や、賃金の支払の確保等に関する法律第7条の規定により退職した労働者が弁済を受ける未払賃金なども、すべて退職所得に該当します。

退職金に課税される所得税の計算方法

退職金に課税される所得税の計算方法は、「退職所得の受給に関する申告書」が提出されているか否かで計算方法が変わってきます。一般的な従業員に支給する退職所得に対する所得税の計算方法は、次のようになります。

1.申告書が提出されている場合

退職所得の受給に関する申告書が提出されていると、勤続年数によって、退職所得控除の金額が変わります。
退職所得控除の金額は、「20年以下」と「20年超」との間でラインが設定されています。勤続年数とは、原則として、退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間の年数です。
勤続期間に1年に満たない端数があるときは、「1年」に切り上げられる点はぜひ押さえておいてください。

次に、勤続年数に応じて、次の計算により退職所得控除額を算出します。

【退職所得控除額の計算式】
勤続年数(=A) 退職所得控除額
・勤続20年以下 40万円×A
・勤続20年超 800万円+70万円×(A-20年)
つまり、上記の計算式の金額以下であれば、全額「非課税」ということになります。

退職金の支給額から上記で計算した退職所得控除額を控除し、その残額の「2分の1」(1,000円未満の端数は切り捨てます。)が課税退職所得金額になります。

課税退職所得金額が計算できたら、次は所得税の金額を計算します。計算式の最後にある「102.1%」は「復興特別所得税」の分になります。

【退職所得の源泉徴収税額の計算式】
課税退職所得金額(A) 所得税率(B) 控除額(C) 税額=((A)×(B)-(C))×102.1%
・195万円以下  5%              0円   (A×5%)×102.1%
・195万円超  330万円以下 10%     97,500円   (A×10%-  97,500円)×102.1%
・330万円超  695万円以下 20%    427,500円   (A×20%- 427,500円)×102.1%
・695万円超  900万円以下 23%    636,000円   (A×23%- 636,000円)×102.1%
・900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円   (A×33%-1,536,000円)×102.1%
・1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円   (A×40%-2,796,000円)×102.1%
・4,000万円超                      45% 4,796,000円   (A×45%-4,796,000円)×102.1%
なお、源泉徴収税額の最終の端数は、1円未満を切り捨てます。

 

それでは、実際の具体的な計算方法をみていきましょう。

【例 退職金の支給額が800万円、勤続年数が10年2か月の場合】

1)勤続年数 1年未満の端数は1年に切上げるので、「11年」
2)退職所得控除額  40万円×11年=440万円
3)課税退職所得金額 (800万円-440万円)×1/2=180万円
4)税額 180万円×5%×102.1% =91,890円

したがって、この場合の所得税(復興特別所得税を含む)の源泉徴収税額は、「91,890円」になります。

 

2.申告書の提出がない場合

退職所得の受給に関する申告書が提出されていない場合には、退職手当等の金額に「20.42%」の税率を乗じて計算した所得税(復興特別所得税を含む)を源泉徴収します。
この場合は退職金がどんなに少なくとも、源泉所得税が発生するというわけです。

退職所得の受給に関する申告書が提出されている場合とされていない場合の、源泉所得税の金額を比較してみましょう。

例えば、さきほどの例のように退職金の支給額が800万円の場合は、
800万円×20.42%=1,633,600円
となり、源泉徴収する所得税(復興特別所得税を含む)の額は「1,633,600円」になります。
同じ支給額でも、源泉徴収する金額にだいぶ違いが出ることがわかります。

 

退職金には、社会保険料や雇用保険料はかかりませんが、課税退職所得金額がある場合には、住民税も源泉徴収をする必要があります。
会社によっては、「退職所得の受給に関する申告書」の提出がされていないにもかかわらず、源泉徴収をしていないケースもあるようです。退職金の計算は給与や賞与とはまったく異なることを理解いただき、正しく計算するようにしましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

川島孝一氏が「日本の人事部」に寄稿したコラムのバックナンバーを掲載します

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