S-PAYCIALコラム

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第10回 13年11月更新

会社に有給休暇を買い取ってもらえるようになる?

先日とある週刊誌で「有給休暇の買い取りを解禁すれば最大40万円弱もの年収アップになる」といった内容の記事が掲載されました。確かに、我が国は有給休暇の取得率が他の国と比べて低いため、取得できなかった有給休暇を企業に買い取ってもらった方が労働者にはメリットがあるように思えます。
しかし、労働基準法では、有給休暇を使用者が買い取ることを禁止しています。なぜなら、有給休暇は、『労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資する』という趣旨のもとで存在しているからです。
有給休暇の買い取り制度を認めてしまうと「どうせ買い取ってもらえるなら有給休暇を取得しない」ことも考えられ、本来の趣旨にマッチしないため原則として禁止されているのです。しかし、絶対に買い取りできないかというと必ずしもそうではなく、後で述べる例外も認められています。
有給休暇は、従業員にとって身近な存在です。そのため、こじれると労務トラブルに発展してしまうケースもあります。今回は、有給休暇の基礎知識やルールについて見ていきます。

<有給休暇の取得率>

まず、我が国の有給休暇の取得率を見ていきましょう。厚生労働省の就労条件総合調査によると、平成23年度の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数は除く。)は、労働者1人平均18.3日(前年17.9日)となっています。そのうち労働者が取得した日数は9.0日(同8.6日)で、取得率は49.3%(同48.1%)です。
次に、取得率を企業規模別にみると、1,000人以上が56.5%(同55.3%)、300~999人が47.1%(同46.0%)、100~299人が44.0%(同44.7%)、30~99人が42.2%(同41.8%)となっており、会社が大きくなればなるだけ有給休暇の取得率は上がることがわかります。
ちなみに、他国の取得率の状況を見てみると、ある民間の会社が行った調査によれば、有給休暇を使い切る(取得率100%)国ベスト3は、フランス(89%)、アルゼンチン(80%)、ハンガリー(78%)となるそうです。

【年次有給休暇の付与及び取得状況】

【平成24年度調査 年次有給休暇の付与及び取得状況(企業規模別)】

<有給休暇の基本的なルール>

年次有給休暇は、①入社から6か月経過し、②その期間の全労働日の8割以上出勤していると10日間の有給休暇が付与されます。また、次の1年間に、その期間の全労働日の8割以上出勤する要件を満たせば11日間の年次有給休暇が付与され、その後も毎年同様に所定の日数が付与されます。

この年次有給休暇は、アルバイトやパートタイマーなど、所定労働日数が少ない従業員にも付与されます。しかし、付与される日数は正社員とは異なり、労働日数や労働時間数によって計算します。
その人の1週間の所定労働時間が30時間以上であるか、あるいは所定労働日数が週5日以上(週で所定労働日数が決まっていない場合は1年間の所定労働日数が217日以上)であれば、正社員と同じ日数の有給休暇が付与されます。
一方、週所定労働時間が30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下(又は1年間の所定労働日数が48日から216日まで)の労働者は下の表の有給休暇が付与されることになります。

週5日以上の所定労働日数のパートタイマーであれば、どんなに勤務時間が短くても正社員と同じ有給休暇の日数がもらえるのは不思議な感じがします。しかし、有給休暇を取得するときには、勤務時間が短いパートタイマーはその所定勤務時間分で1日の有給休暇になります。有給休暇1日あたりにすると、正社員は8時間分、パートタイマーは例えば4時間分の給与しか受け取らないため、同じ日数の有給休暇が付与されることになっているのです。

<今の法律でもできる有給休暇の買い取り>

前述したように、有給休暇の買い取りは禁止されています。しかし、退職時や時効で消滅する有給休暇を買い取ることは現在の法律でも可能です。現在の法律で禁止されている買い取りとは、あらかじめ買い取ることを約束することや、買い取り金額を決めておくことです。
結果的に残って消滅してしまう退職時や時効消滅時の有給休暇を買い取ることは、違法ではありません。この場合の買い取り価格は本来権利が消滅するものですから、自由に設定することができます。とはいえ、人によって金額がばらばらではかえってトラブルになりますので、会社にすれば平等に運用することが大切です。しかし、あらかじめ価格を設定し、買い取ることを公表するのは違法になります。
有給休暇の買い取りは、使用者側からすれば法律の趣旨にあるとおり「高い金額にすれば有給休暇を取得しなくなる。」、労働者側からすれば「取得できないで消滅したのだから1日分の賃金で買い取らないとおかしい。」と立場によって主張が異なります。
そのため一筋縄では行かないと思いますが、現在のあいまいな状況も好ましくありません。例えば、買い取り日数や買い取り金額を限定するなどの工夫をして、労使ともに納得できる有給休暇の買い取り方法をルール化してもらいたいところです。

<人事給与アウトソーシングで解決するためのヒント>

有給休暇の消化をきちんとされる従業員とそうでない従業員がいます。消化ができていない従業員によっては、「会社の指示でこれだけ働いたのだからもっと報われるべき」と考える従業員の方もいるはずです。本来、有給休暇は計画通り取得されることが望ましく、その実現のために、従業員とその上長の計画的な作業と有給休暇を消化できる仕組みが効果を発揮する場合があります。鈴与シンワートの人事給与アウトソーシング「S-PAYCIAL」であれば、有給取得が芳しくない社員にはフラグを立て、従業員とその上長に有給取得のアラートを上げる仕組みや残業時間が少なくなってきたタイミングで有給休暇取得をお勧めするシステムの構築もできます。鈴与シンワートはお客様の快適で健全な人事・労務環境を支援いたします。

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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