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第100回 21年09月更新

労働者代表の選任

労使協定の締結や就業規則の作成・変更時の届出の際に、労働者の過半数で組織する労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による手続きを行う必要があります。
要件を満たしていない労働組合と協定等を締結しているケースは極めて稀ですが、労働者の過半数を代表する者が適正な手続きを経ていないケースはよくあるようです。労働者代表が要件を満たしていないと、せっかく届出をしていたとしても無効になってしまいます。労働基準監督署等の調査で是正勧告の対象となる可能性があるのはもちろんのこと、派遣労働者の派遣可能期間延長の意見徴収の労働者代表が適切でない場合は、「労働契約申し込みみなし制度」が適用され、派遣労働者を直接雇用で受け入れなくてはならなくなるリスクもあります。
今回は、労働組合や労働者代表との選任手続きについて説明したいと思います。

36協定とは

おさらいも兼ねて、代表的な労使協定である36協定について概要を説明します。労働基準法では1日(8時間)および 1週の労働時間(40時間)、ならびに休日日数(毎週少なくとも1回)を定めています。原則として、この時間数や日数を超えて従業員を労働させてはなりませんが、現実的に繁忙期等で労働時間が伸びてしまうこともあるので、時間外労働、休日労働に関する労使協定(いわゆる「36 協定」)が作られました。36協定を締結して労働基準監督署長に届け出れば、「法定労働時間を超える時間外労働」および「法定休日における休日労働」が認められます。他の協定とは異なり、36協定は、労働基準監督署に事前に届け出ないと効力が発生しないので注意しましょう。
なお、36締結は、時間外労働や休日労働を無制限に認める趣旨ではないということは十分理解してください。時間外労働や休日労働は例外ですので、必要最小限にとどめられるべきものです。労使がこのことを十分に意識した上で、36協定を締結するようにしましょう。
労働基準監督署への届け出が終了したら就業規則やその他各種の労使協定と同様に、常時各作業場の見やすい場所へ備え付けるか、あるいは書面を交付する等の方法により、労働者に周知する必要があります。

就業規則の届出について

常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を労働基準監督署へ届け出ることが労働基準法によって定められています。この届出の際には、作成をした就業規則に対して、労働組合や労働者代表の意見を聴き、その意見書を添付する必要があります。
就業規則の新規作成時だけでなく、就業規則の一部を変更した場合も同様の扱いとなります。本社以外に支店や店舗がある会社の場合は、支店や店舗で働く労働者が常時10人以上であれば、それぞれの支店や店舗ごとに労働基準監督署長に届出を行います。
例外として、就業規則一括届出制度(本社の就業規則と本社以外の就業規則が同じ内容である等、一定の要件を満たした場合、本社で一括して届出ができる制度のこと)もありますので、支店や店舗の数が多い場合は検討してもよいと思います。

労働者代表の選任について

36協定の締結や就業規則の届出の際は、労働者の過半数で組織する労働組合、その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と書面による手続きを行う必要があります。万が一、要件を満たしていない労働組合や労働者代表と手続きを行って労働基準監督署に書類を提出した場合、その手続きが無効になってしまう点には十分注意が必要です。
それでは、それぞれの要件についてみていきましょう。

① 事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合

事業場に使用されているすべての労働者の過半数で組織する組合であることが必要です。
そのため、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めた事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合でなければなりません。パートやアルバイトが正社員に比べて多く、労働組合が正社員だけで組織されている場合は、要件を満たしていないことがありますので注意しましょう。
会社が組合員数を常に把握することは難しいため、36協定の締結時等に事業場の労働者数と労働組合員数を確認し、過半数組合となっているかを必ずチェックしてください。

② 事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合

事業場に労働者の過半数で組織する組合がない場合や、労働組合自体が存在していない場合は、労働者の過半数代表者を選出する必要があります。
代表者の選出の際は、正社員だけでなく、パートやアルバイトなど事業場のすべての労働者の過半数を代表である必要があります。そのため、代表者の選出に当たっては、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続きに参加できるようにしなくてはなりません。
代表者の選出手続きについては、労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続き(投票、挙手、労働者による話し合い、持ち回り決議)で決定します。
ときどき見受けられるのですが、使用者が指名している場合や社員親睦会の幹事などを自動的に選任した場合には、その人は労働者代表とは認められません。

なお、労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者は、労働者代表となることはできません。ここでいう「管理監督者」の定義については、以下の通達が昭和63年に出されています。通達をまとめましたので、確認してみてください。

①労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること

労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している必要があります。

②労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること

労働条件の決定その他の労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。
「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような従業員は管理監督者とは言えません。

③現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること

管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間について厳格な管理をされているような場合は管理監督者とは言えません。

④賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされている必要があります。

 

労働者代表は、「協定するためにとりあえず決めておけばよい」程度に考えている会社もまだまだあるようです。簡単に決められるような感じがすると思いますが、選出に当たってさまざまルールが存在しています。
労働時間に関する協定(裁量労働制や変形労働時間制、フレックスタイム制など)の労働者代表の選出方法が適切でない場合は、未払い残業代の支払いに発展するリスクもあります。
労働者代表が適切に選出されているか、あらためてチェックしてみましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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