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第102回 21年12月更新

2022年の法改正項目~パワーハラスメントの防止対策

2022年が近づいてきました。経営者や人事担当者の方は、人事労務分野での法改正が気になってくるころだと思います。今回から複数回にわたって、2022年の法改正項目について説明していきたいと思います。
以前にこのコラムで紹介をしている点もありますが、掲載時点では決まっていなかった項目等もありますので、改めて確認をしていきたいと思います。

2022年の法改正項目について

2022年の主な法改正項目は、次のようなものがあります。

①パワーハラスメントの防止対策(労働施策総合推進法の改正)
②育児介護休業法の改正
③社会保険の適用拡大
④65歳以上の兼業・副業者に対しての雇用保険二重加入制度

今回は、この中の「①パワーハラスメントの防止対策」についてみていきます。

① パワハラ防止対策(労働施策総合推進法の改正)

パワーハラスメントを防止することを目的として、『労働施策総合推進法』が改正されました。今回の改正により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。
大企業では2020年6月1日からすでに義務化されていましたが、これまで中小企業は努力義務に過ぎませんでした。法改正により、2022年4月1日から中小企業も雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されます。

パワーハラスメントの定義について
労働施策総合推進法では、次の3つの要素すべてを満たすものを「パワーハラスメント」と定義しています。

① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されること

①「優越的な関係を背景とした」言動とは
業務を遂行するにあたって、言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。
例えば、以下のものなどが含まれます。
・職務上の地位が上位の者による言動
・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

これを読むと、「パワハラを行う人=上司」という構図ではないということが分かります。つまり、同僚や部下が行った行為であったとしても、一定の条件に該当すればパワハラになる可能性があるということです。

②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上の必要性がない、又はその態様が相当でないもの。
例えば、以下のものなどが含まれます。
・業務上明らかに必要のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲 を超える言動

上司が部下に対して再三指導をしても改善されないような場合には、一定程度強く注意したとしてもパワハラには該当しません。しかし、強く注意をする必要がないケースで、度を越えた注意をしてしまうとパワハラに当たる可能性が出てきてしまいます。

③「就業環境を害すること」
当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

この判断については、同様の状況で言動を受けた場合に、社会一般の労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるかどうかを基準とすることが適当とされています。したがって、その労働者の感覚が基準になるというわけではありません。

パワーハラスメントを予防するために講ずべき措置
先ほど述べた通り、中小企業の事業主でも2022年4月から次の措置を講じる必要があります。来年の4月までまだ少し時間がありますので、モレが無いようにしっかりと対応してください。
なお、これらの措置に関しては、会社が無理なく運用できる対応策を講じていくことが肝心です。

① 事業主の方針等の明確化、周知・啓発
・職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、 労働者に周知・啓発すること
・行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、 労働者に周知・啓発すること

② 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
・相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

③ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
・事実関係を迅速かつ正確に確認すること
・速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
・事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
・再発防止に向けた措置を講ずること

④ そのほか併せて講ずべき措置
・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、 その旨労働者に周知すること
・相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、 労働者に周知・啓発すること

①で要求されているように、パワハラ行為を働いた者に対して、罰則が適用できるように就業規則の改訂を行う必要があります。
具体的には、禁止条項や罰則規定の適用条件、処分内容を定めます。すでに就業規則に懲戒処分が規定されているのであれば、その部分にパワハラの条文を追加します。
禁止条項の条文例を以下に示しますので、参考にしていただければと思います。

 

第〇〇条 職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係に基づいて、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

実務的には、明らかにパワハラに該当する行為を行っているケースはあまり多くありません。一方でよくみられるのが、パワハラとただちに判断することはできないが、その行為を放置していると事態が悪化してしまう可能性があるというパターンです。
例えば、就業時間外に上司がLINEを使って部下に業務連絡をするといったケースです。上司としては、忘れないうちに連絡をしておこうといった軽い気持ちでメッセージを送っているのですが、送られてくる部下はストレスを感じてしまっていることがあります。
このケースでは、就業時間外に業務連絡を送信したことが、ただちにパワハラに該当するわけではありません。しかし、これが頻繁に繰り返されるとパワハラと受け止められかねないことがあります。
問題と思われる行為が見受けられた場合は、行動や発言にどのような問題があったのか具体的に明確にし、その都度行為者に改善を促すことが重要になります。

 

法改正によって、就業規則等の整備は行われると思います。しかし、問題に対して適切に対処していく体制を整えることで、そもそもハラスメントの問題を発生させないことが本来の目的です。実態を伴った対策をとるようにしましょう。
次回は、「② 育児介護休業法の改正」をみていきたいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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