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第14回 14年03月更新

法改正が続く有期雇用労働者との雇用契約

厚生労働省のホームページによると有期雇用契約で働く人は、全国で約1,200万人と推計されています。有期契約労働者は、いまや現代社会にとっては必要不可欠な存在になっています。
一般的に、非正規雇用だと賞与や退職金の支給がなかったり、正社員に比べて賃金額が低いといったイメージを持つ方もいらっしゃるでしょう。厚生労働省が発表している統計資料を見てみると有期契約労働者を取り巻く現状がわかります。
企業が、有期契約労働者を雇用している理由のベスト3は次のようになっています。

・業務量の中長期的な変動に対応するため           43.8%
・人件費(賃金、福利厚生)を低く抑えるため         37.4%
・業務量の急激な変動に際して雇用調整ができるようにするため 25.7%
(複数回答)

一方、有期契約労働者の現在の仕事に対する不満の主な理由は以下のとおりです。

・頑張ってもステップアップが見込めない 44.6%
・賃金の絶対水準が低い         41.8%
・賃金水準が正社員に比べて低い     37.9%
・いつ解雇・雇止めされるかわからない  32.7%  (複数回答)

このように、企業側は「業務の量に応じて人員を変動させて余剰人員ができるだけ生じないようにしよう」と考え、労働者側としては「賃金の低さやいつ解雇や雇止めをされるかわからない」等の不満を持って働いていることが多いようです。
そのため、経営者や実務担当者が正しい知識をもっていないと労務トラブルに発展するケースがあります。今回は、有期契約労働者に関する法律関係について見ていきます。

<従業員と労働契約を締結することができる期間>

労働基準法では、労働者と結べる雇用契約期間の上限を定めています。原則として労働期間を締結できる期間は3年間です。
労働契約を結べる期間の上限があると伝えると、「ウチの会社の正社員は労働契約の更新を行っていないけど大丈夫なの?」と聞かれることがあります。一般的に正社員の方たちは、「雇用期間の定めの無い契約(無期雇用)」を結んでいるため、ここでいう労働契約の上限期間の制約はありません。雇用期間の上限3年間は、あくまでも有期雇用に限った制限です。
有期の雇用契約を結べる期間は3年間ですが、このルールには特例が設けられています。特例は、次の3種類です。

①高度な専門知識を持ち、厚生労働大臣が定める基準に該当する労働者が専門的知識を必要とする業務に就く場合:5年以内
この専門的知識を必要とする業務とは、医師や薬剤師、弁護士等などがあたります。
ただし、専門的な知識を持つ者を雇用しても、業務内容が専門知識を必要としていなければ対象外となり、原則の3年以内の雇用期間の契約しか締結できませんので注意が必要です。

②満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約:5年以内
高齢者になると就業の機会は限られてきます。そのため、一回の雇用契約の期間を長くすることで雇用を確保するために、例外が設けられています。

③ダムの建設事業や大規模なトンネル工事を行う場合:事業の完了に必要な期間
大規模な工事の場合、完成までの工期が5年を超えることもあります。そのような有 期事業の場合は、その事業の完了に必要な期間の労働契約を締結することができます。
このケースでは具体的な年数の制限はありませんので、完成までに10年間かかる事 業であれば最長10年の労働契約を締結することができます。

<平成25年4月に行われた有期労働契約のルールについて>

有期雇用契約の労働者は、正社員に比べ身分がどうしても不安定になります。そのため、国は、有期の労働契約に関してひんぱんに法改正を行っています。
有期労働契約に関する法改正は、平成24年・25年と2年間続けて行われています。昨年施行された法改正は、有期契約の労働者を雇用する事業所にとっては今後の方針を考えていく必要があるので少し触れていきます。

平成25年4月1日に「無期労働契約への転換」というルールが新たに施行されました。有期雇用契約が反復更新されて通算5年を超えた労働者から申し込みがあったときは、会社はその労働者を「期間の定めのない」労働契約に転換しなくてはなりません。労働者からの申し込みがあれば会社は拒否できず、正社員と同じように定年まで雇用する必要があるのです。
この通算期間のカウントは、平成25年4月1日以降に開始した労働契約が対象になり、それまでの契約期間は関係ありません。そのため、最短で平成30年4月1日から労働者の申し出によって有期雇用契約から無期雇用契約に転換される従業員が出てくることになります。
この無期転換は、雇用契約の期間に限った法律ですので、その他の労働条件(賃金、職務、労働時間)は、直前の雇用契約と同様のままで構いません。たとえば、週2回のパートタイマーであれば、週2回の時給制のまま定年まで雇用することになります。

労働条件が変わらないなら、会社にとってあまり問題がないような感じもします。しかし、法律の落とし穴があります。
先ほど無期転換されると定年まで雇用されると書きましたが、正社員になるわけではありません。就業規則で正社員の定年しか定めていなければ、無期転換された従業員は定年がないことになります。
また、無期転換される従業員に適用される定年があった場合でも、その年齢を超えたパートタイマーが在籍している会社もあります。定年を超えた方が無期転換を希望しても、会社は拒否できません。さらに、定年をさかのぼって適用することはあり得ませんので、無期転換後はやはり定年がないことになります。
これまでは、定年を超えているパートタイマーは、雇用期間の満了とともに「契約更新をしない」という選択肢がありましたが、その選択肢も無期転換後はありません。
定年もなく、雇用期間の定めもないとすると、本人が希望する限り、いつまでも(それこそ死ぬまで)雇用し続ける義務が生じます。

このあたりの矛盾は今後検討していくようですが、現段階では矛盾が生じていることを前提に就業規則の改定など対応策をすすめておくことが大切です。

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平成27年にも有期労働契約に関する法改正が行われる予定です。冒頭にも紹介しましたが、有期雇用契約の労働者は企業にとってなくてはならない存在になっています。
また、労働者側の考え方も昔では考えられないぐらい多様化しています。国は、このような現状を踏まえ、今後もさまざまな法改正を行っていくことは間違いありません。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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