S-PAYCIALコラム

S-PAYCIAL-Column

第15回 14年04月更新

残業代を定額で支払うのは

厚生労働省が発表している統計資料によると、平成24年4月から平成25年3月までの1年間に、残業に対する割増賃金が不払になっているとして、労働基準法違反で是正指導をされた企業の内、100万円以上の割増賃金が支払われた件数及び人数は、以下のとおりです。

【是正企業数】           1,277企業
【支払われた割増賃金合計額】 104億5,693万円
【対象労働者数】       10万2,379人
【1企業での最高支払額】    5億408万円(卸売業)

この統計は、あくまでも総額で100万円以上の割増賃金を追加で支払った企業のみを集計しているので、追加で支払った割増賃金額が数十万円のケースを含めると労働基準監督署の是正指導件数は相当数になるでしょう。

なぜ、監督署が企業へ労働条件や賃金支払いの是正指導をするかは理由があります。
昨年から、「ブラック企業」というキーワードをよく耳にします。ブラック企業には、明確な定義が定められているわけではありません。ブラック企業の定義を公開しているブラック企業大賞企画委員会の定義では次のような会社を指すそうです。
① 労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業
② パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人

「ブラック企業」が流行語大賞にノミネートされてしまうくらい国民に浸透してしまった状況を野放しにしておくことは国として許されません。そのため、監督署の調査が強化されています。
「監督署の調査があるから労働基準法を守りましょう」と言っているわけではないのですが、残念ながら法律を誤解しており、結果的に違法な状態になっている会社は少なくありません。
もし、法律を逸脱していて統計資料のように監督署の是正指導を受けたり、大勢の労働者から過去の未払残業代を一括して請求された場合などは、一人ひとりは少なくても、企業が支払う金額は多額となることがあります。場合によっては、会社の事業計画や取引先への信頼にも深刻なダメージを受けてしまう可能性があります。
そのため、未払の残業代を毎月積み重ねていかないように、残業代の適正な支払いをしていく必要があります。

近年では、定額(固定)残業代制度を導入している会社も増えてきています。すでに導入している会社も多いと思いますが、定額残業代は、毎月決まった金額を残業の有無にかかわらず、残業代として支給する方法です。この方法は別段違法ではないのですが、不適切に運用していると認められないケースもあります。
特に最近ではこの制度を導入した会社が増えたせいでしょうか、定額残業代をめぐって労使トラブルになるケースもあり、裁判所でも次第にその判断基準が厳しくなっている傾向にあるようです。

正しく運用するためには以下の点に注意することが必要です。
① 定額残業代の金額を明確にし、何時間分の割増賃金にあたるのかを就業規則(給与規定)、契約書、給与明細書などに(できるだけ複数に)表示すること。
② 実際の残業が賃金に含まれる時間(たとえば30時間)を超える場合は、その差額を支払うことを就業規則、契約書に明示し、実際に超過した場合はきちんと支給すること。
③ 労働者に定額残業代の支払いになっていることの理解を得ておくこと。

特に大切なのは②です。定額残業代制度を導入すれば残業代を一切支払わなくて良いのではなく、固定部分を超えた時間に対しては残業代を支払う必要があります。
例えば、30時間分の残業代を固定にした場合、その月の残業時間が40時間だとすると、10時間分の残業代は定額残業代とは別に支給しなければなりません。
この支給をしていないと定額残業代すべてが否定されてしまうケースもあるようです。

定額残業代にしたから安心するのではなく、きちんと労働時間を管理して、適正な運用を心がけましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

バックナンバー 第1~40回はこちら

バックナンバー

S-PAYCIALコラムTOPへ戻る

PAGE TOP