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第18回 14年07月更新

解雇は最終手段?

<個別労働紛争の発生状況>

平成26年5月30日に厚生労働省より、「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」が公表されました。「個別労働紛争解決制度」とは、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や早期解決を支援するもので、「総合労働相談※1」、労働局長による「助言・指導※2」、紛争調整委員会による「あっせん※3」の3つの方法があります。

※1 総合労働相談
都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物などに、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応する制度。

※2 助言・指導
民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度。

※3 あっせん
紛争当事者の間に、弁護士や大学教授など労働問題の専門家である紛争調整委員が入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度。双方から求められた場合には、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示する。

平成25年度の相談、助言・指導、あっせんの概況を見てみると、数年前と比べて減少傾向にはありますが、以前に比べて件数は格段に多くなっています。
・総合労働相談件数 1,050,042 件(前年度比1.6% 減)
→うち民事上の個別労働紛争相談件数 245,783 件( 同 3.5% 減)
・助言・指導申出件数 10,024 件( 同 3.3% 減)
・あっせん申請件数 5,712 件( 同 5.5% 減)

個別労働紛争相談の内訳は、多いものから『いじめ・嫌がらせ』が 59,197件(19.7%)、『解雇』が 43,956件(14.6%)、『自己都合退職』が 33,049件(11.0%)になっています。
これらの中で「解雇」はどの会社でも起きる可能性のある問題です。解雇について労働者と争いになってしまうと解決までに時間がかかる上、精神的にも負担がかかります。経営者や担当者は「解雇」について正しい法律知識を持つことが重要になります。今回は、解雇について見ていきたいと思います。

<解雇とは・・>

会社の業績が悪くなったり、社員本人に問題があり、やむを得ず退職してもらわなければならない状況になった場合、一般的には「解雇」を思い浮かべるかもしれません。
解雇とは、使用者側の一方的な労働契約の解除をいいます。この場合、労働基準法上では、少なくとも30日前までにその予告をしなければならなりません。また、予告をしないで即時に解雇しようとする場合には、解雇と同時に平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務があります。解雇しようとする日までに30日以上の余裕が無いときは、解雇予告をした上で30日に不足する日数分の解雇予告手当を支払うことになります。
ただし、解雇予告はあくまでも解雇する際の「手続」であって、解雇そのものが正当なものとして認められるかどうかは全く別の問題です。
労働契約法第16条で解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効にする」と定めています。
社会保険労務士という仕事柄、「全く仕事をしない社員を解雇したい」と相談を受ける時があります。このような社員であったとしてもすぐに解雇をするとほぼ100%無効になります。なぜなら会社は、「解雇回避義務」があるためです。
そのため、このようなケースで会社が行わなくてはならない事項として、その社員の仕事の内容、職場(上司)を変えたり、注意や指導をする必要があります。実務的には、解雇回避義務を尽くしたことを後々証明できるように、会社が何かアクションを起こしたら必ず書面に残しておくことが重要になります。
また、解雇をする際は必ず就業規則に根拠となる条文も必要になります。現在の日本の労働裁判判例を見る限り、解雇は会社にとって最後の手段であり、相当な理由が無ければ認められません。

<解雇が無効になると・・>

万が一、解雇した従業員が訴え、その従業員の地位が確認された場合、会社は①解雇した日から職場復帰の日に至るまでの給与を保証し、②労働者を元の職場に復帰させなくてはなりません。通常はいったん解雇した従業員を職場復帰させるのは困難ですから、①解雇した日から職場復帰の日に至るまでの給与を保証した上で、③改めて退職のための和解金を支払う、ことになります。
このようなリスクのある解雇を行う前に、会社は従業員との話し合いにより「同意」を得る退職勧奨を行うべきでしょう。
退職勧奨とは、会社が社員に「退職して欲しい」とお願いし、それを社員が受け入れ会社都合の「同意退職」として処理することです。「同意退職」であることが、会社からの一方的な労働契約解除である解雇と大きく違う点になります。
退職勧奨は会社都合の退職になり、退職した従業員は「解雇」の場合と同じく雇用保険法上では「特定受給資格者」として扱われます。そのため、3ヶ月間の支給制限期間を待つことなく雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)を受給できることになります。また、基本手当が受給できる期間も自己都合退職の場合より長くなることがあります。退職勧奨を行った場合は、後々トラブルとならないように、必ず「退職勧奨同意書」に本人の署名・捺印を貰っておく必要があります。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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