S-PAYCIALコラム

S-PAYCIAL-Column

第21回 14年12月更新

パートタイム労働法の改正と社会保険の適用

総務省統計局の「労働力調査(速報)」によると、平成26年7月~9月期の非正規労働者数は1,952万人にもおよび、一昨年の同時期に比べると123万人も増えたそうです。今や企業経営、特に飲食業や小売業においては、パートタイマーやアルバイトはなくてはならない戦力になっています。
国の方針としても、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにするために様々な施策を行っています。今回は、平成27年4月1日に施行されるパートタイム労働法の法改正と平成28年10月から施行される短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用拡大についてみていきます。

<パートタイム労働法での短時間労働者とは?>

パートタイム労働法での「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が通常の労働者の1週間の所定労働時間と比べて短い労働者のことをいいます。
『所定労働時間が短いということの判断をどのようにすれば良いのだろうか?』と疑問に思うかもしれません。
パートタイム労働法では、1週間の労働時間について、明確な基準が定められているわけではありません。正社員と比べて少しでも所定労働時間が短かかったり、所定労働日数が少なければ「短時間労働者」になります。
「契約社員」「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「臨時社員」「準社員」など、社内での呼び方に関係なく、上記の条件に当てはまれば、パートタイム労働法の対象となります。反対に、フルタイムで働く人は時給制であったり、社内で「パート」と呼ばれていても、パートタイム労働法の対象にはなりません。ただし、経営者はこのような人についても、法律の趣旨を考慮しなければなりません。

<パートタイム労働法の法改正について>

平成27年4月1日から施行されるパートタイム労働法で、特に経営者が注意をしなければならない点を紹介していきます。

1.正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組みが正社員と同じ場合には、正社員との差別的取扱いが禁止されます。
現行法では、以下の①~③の条件に該当した場合のみ正社員との差別的取扱いが禁止されてきました。
①職務の内容が正社員と同一
②人材活用の仕組が正社員と同一
③無期契約を締結している

法改正後は、①と②に該当すれば、賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用等すべての待遇について、正社員との差別的取扱いが禁止されることになります。例えば、①と②に該当するパートタイム労働者には、正社員に対してだけ支給していた住宅手当の支給対象にせざるを得ないことも考えられます。

2.パートタイム労働者を雇い入れた時の事業主による説明義務の新設
法改正後に、パートタイム労働者を雇い入れた時は、実施する雇用管理の改善措置の内容を事業主が説明する必要があります。
単純に「雇用管理の改善内容」と言われても良くわからないかもしれません。厚生労働省では雇用管理の改善内容について具体的な内容を発表していますので紹介します。

①雇入れ時の説明内容
・賃金制度はどうなっているか
・どのような教育訓練があるか
・どの福利厚生施設が利用できるか
・どのような正社員転換推進措置があるか 等

②説明を求められたときの説明内容
・どの要素をどう勘案して賃金を決定したか
・どの教育訓練やどの福利厚生施設はなぜ使えるか(または、なぜ使えないか)
・正社員への転換推進措置の決定に当たり何を考慮したか 等

昨今では、インターネットやソーシャルメディアの発達によってごまかしのきかない世の中になっています。パートタイム労働者から求められたときに、会社に誠意が感じられなかったり、合理的な説明ができないと、すぐに会社の悪い噂は広まってしまいます。
信頼関係を損なうことがないように担当者は注意をしていく必要があります。

<短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大について>

平成28年10月より短時間労働者へ社会保険の適用が拡大されることになりました。改正の目的は、労働者でありながら被用者保険(主として厚生年金保険)の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用して、セーフティネットを強化することです。
つまり、社会保険における正規社員と非正規社員の「格差を是正」することをねらっています。
現在では、大まかにいえば週の労働時間が30時間以上の労働者は社会保険に加入することができます。
しかし、平成28年10月以降は、以下の条件に該当する短時間労働者は社会保険に加入することになります。
①週20時間以上の勤務
②月額賃金8.8万円以上(年収106万以上)
③勤務期間が1年以上

ただし、当面の間、従業員数が500人以上の企業の労働者だけが対象になります。また、学生は上記の要件を満たしていても、適用対象外になります。

*****************************

パートタイム労働者を巡る法改正は、これからもひんぱんに行われていくと考えられます。パートタイム労働者を雇用している経営者や担当者は法改正情報にアンテナを張っていく必要があります。
また、社会保険の適用拡大によって保険料の会社負担が増えることになります。特にパートタイム労働者が主戦力となっている企業では大きな負担になります。
パートタイマーの中には、「社会保険に入りたくないから時間数を減らしたい」と考える人も出てくるでしょう。
アベノミクスの影響でしょうか、最近ではパートタイム労働者の採用も「売り手市場」になっているようです。
平成28年10月はまだ先のことと感じますが、法改正後を見据えて「現在のままなら社会保険料がどのくらい増えるのか」
「パートタイマーの人数を増員することが可能なのか」などを今から考えていく必要があるでしょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

バックナンバー

S-PAYCIALコラムTOPへ戻る

PAGE TOP