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第32回 15年12月更新

ついに成立した改正労働者派遣法~その3

前回、前々回に引き続き、今回も改正労働者派遣法についてみていきます。
今回は、派遣労働者のキャリア形成支援制度を中心に紹介していきます。改正前の派遣法でも、派遣労働者のキャリアアップについてのルールはありましたが、今回の法改正により、さらに踏み込んだルールが規定されました。
それでは、改正派遣法による派遣元と派遣先、それぞれのルールをみていきましょう。

<派遣元事業主が実施する教育訓練>

今回の法改正によって、派遣労働者のキャリアアップに関する条文が追加されました。派遣元事業主は、法改正の内容にそって、これらのキャリアアップの推進を行なうことが必須となりました。

(派遣法30条の2)
1 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育
訓練を実施
しなければならない。
この場合において、当該派遣労働者が無期雇用派遣労働者であるときは、当該無期雇用派遣労働者がその職業生活の全期間を通じて
その有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければならない。

この新たに義務付けられた「段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練」の実施は、以下の1)~5)までのすべてを満たす教育訓練を指します。派遣元事業主は、派遣労働者に対してこれらの教育訓練を実施しなければなりません。

1) 実施する教育訓練がその雇用するすべての派遣労働者を対象としたものであること。
2) 実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。
3) 実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。
4) 派遣労働者として雇用するにあたり実施する教育訓練(入職時の教育訓練)が含まれ
たものであること。
5) 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置
いた内容のものであること。

<派遣元事業主が実施するキャリア・コンサルティング>

さらに今回の法改正では、教育訓練の実施だけでなく、派遣労働者に対するキャリア・コンサルティングも、派遣元事業主が実施しなければならなくなりました。

(派遣法30条の2)
2 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の求めに応じ、当該派遣労働者の職業生活の設計に関し、相談の機会の確保その他の援助
を行わなければならない。

この法改正に対応するため、派遣元事業主は、キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置する義務があります。
相談窓口の設置に際しては、以下の要件を満たす必要があります。
1)相談窓口には、担当者(キャリア・コンサルティングの知見を有する者)が配置されていること。
2)相談窓口は、雇用するすべての派遣労働者が利用できること。
3)希望するすべての派遣労働者がキャリア・コンサルティングを受けられること。

ただし、「キャリア・コンサルティングの知見を有する者」は、必ずしもキャリアコンサルタントの有資格者であることまでは求められていません。3年以上人事担当としての職歴がある人や、派遣先との連絡や調整をしている営業担当でもキャリア・コンサルティングの知見を有する者として認められます。

<教育訓練の実施頻度>

次に、教育訓練の時期・頻度・時間数等は、以下の条件を踏まえて設定していかなければなりません。
カリキュラムの内容は派遣元事業主の裁量に委ねられており、座学だけでなくOJTでの実施も認められています。
しかし、今後の派遣事業の許可や更新の手続きの際には、「研修の内容」と「派遣労働者がその研修を受けることによってどのようなキャリアアップにつながるのかの理由」を記載して労働局に提出する必要があります。
そのため、以下の1)~3)までの要件に該当するように自社のキャリアアップ制度を構築していく必要があります。

1)派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等
が用意されていること。
2)実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会を提供
すること。
3)派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるように就業時間等に配慮すること。

<派遣先事業主のキャリアアップ推進措置>

派遣労働者を受け入れている派遣先事業主は、直接的に派遣労働者に対して教育訓練等を行なう必要はありません。
しかし、派遣先事業主は、派遣元が講じるキャリアアップ推進を適正に行うことができるように、派遣労働者の業務の遂行状況を提供する等の協力をするように努めなければなりません。

<キャリアアップ助成金について>

今回の派遣法改正によって、派遣元は派遣労働者のキャリアアップを計画的に行っていく必要があります。
非正規雇用労働者のキャリアアップに取り組む事業主に対して、国は「キャリアアップ助成金」により支援しています。
キャリアアップ助成金とは、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成をするものです。

このキャリアアップ助成金は、次の6つのコースに分けられます。
1)有期契約労働者等の正規雇用等への転換等を助成する「正規雇用等転換コース」
2)有期契約労働者等に対する職業訓練を助成する「人材育成コース」
3)有期契約労働者等の賃金テーブルの改善を助成する「処遇改善コース」
4)有期契約労働者等に対する健康診断制度の導入を助成する「健康管理コース」
5)勤務地限定正社員または職務限定正社員制度の新たな規定・適用等を助成する「多様な正社員コース」
6)短時間労働者の週所定労働時間を社会保険加入ができるように延長することを助成する
「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」

それぞれのコースの概要をすべて説明することは文字数の関係で難しいため、コースの名称のみを記載しています。支給要件の詳細等については、ホームページやハローワークで確認してください。
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派遣事業を取り巻く環境は、今後も変化をしていくと予想されます。派遣事業者だけでなく、派遣労働者を受け入れている事業所も派遣法を正しく理解して、実務に活かしていく必要があるでしょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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