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第33回 16年01月更新

通勤災害の対象となるケース

始業前や終業後の時間を有効活用して、自己啓発や趣味などに時間を使うビジネスパーソンが増えているようです。仕事と生活のバランスを上手に取ることは、充実した人生を過ごすうえで重要なことです。
一方で、さまざまな活動を行う方が増えてきたため、活動場所から出社や帰宅する際に万が一怪我をしたときに労働者災害補償保険(労災)の給付が受けられないケースもあるようです。
労働者であれば業務中はもちろんのこと、通勤中の怪我であっても労災が適用されます。しかし、通勤中といっても、すべてのケースで給付されるわけではありません。
今回は、基本的な通勤災害のルールについて見ていきたいと思います。

<通勤災害とは?>

通勤災害とは、「労働者が通勤により被った怪我、病気、障害または死亡」をいいます。通勤災害と判断されるのは、就業の場所と住居間を合理的な経路かつ方法で行っているケースです。
就業の場所と住居間の移動は、通常は次の1)~3)のパターンに分けられます。

1)住居と就業の場所との間の往復
もっともスタンダードな通勤の概念です。
住居については、複数の住居がある場合でもそれぞれが住居と認められ、始業前に居住していた住居、または終業後に向かった住居までが「通勤」になります。

2)就業の場所から他の就業の場所への移動
アルバイトなど複数の仕事をかけもちしているケースでは、1つ目の仕事が終了し、次の仕事を行うための移動は、住居からの移動ではありませんが「通勤」として認められます。
もし、通勤災害が発生してしまった場合の手続きは、移動先となる事業所が対応することになります。

3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動
転勤により、転勤前の住居(自宅)と就業場所(赴任先)との間を日々往復することが困難となり、一定のやむを得ない事情によって次のA、B、Cに該当する者と別居することになった者の自宅と赴任先住居間の移動も「通勤」として認められます。
A:配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
B:配偶者がない労働者の子
C:配偶者および子がない労働者の父母または親族(要介護状態でかつ、当該労働者が介護していた父母または親族に限る)

つまり、単身赴任の場合は、単身赴任先の住居と家族が居住する自宅の間の移動も通勤になるということです。

<合理的な経路と方法とは?>

合理的な経路については、通勤のために通常利用する経路であれば、その経路が複数あったとしてもいずれも「合理的な経路」になります。また、当日の交通事情により迂回したときのように、やむを得ず通常利用していない経路を利用した場合も「合理的な経路」になります。
しかし、特別な理由もなく、著しく遠回りをした場合などは、合理的な経路とは認められません。
また、運転免許を一度も取得したことのない人が車を運転したり、泥酔して車や自転車を運転していた場合は合理的な方法とは認められません。しかし、常識の範囲内であればほとんどの場合、「合理的な方法」として認められることになります。

<逸脱と中断>

「逸脱」とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることをいいます。また「中断」とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。
この逸脱や中断をしているときは、通勤ではないことはお解かりいただけると思います。しかし、通勤の途中で逸脱や中断があると、その後はもともとの通勤経路に戻っていたとしても、それ以降は原則としてすべて通勤にはならないことに注意が必要です。
たとえば、帰宅時に飲食店で食事をした場合などは、その飲食店に向かうまでの通常の通勤経路上だけが通勤になります。

なお、以下に該当する場合は、例外が設けられており、もともとの通勤経路に戻った後は、再び通勤として認められます。
1)日用品の購入その他これに準ずる行為
2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって、職業能力の開発向上に資 するものを受ける行為
3)選挙権の行使その他これに準ずる行為
4)病院や診療所において、診察または治療を受けることその他これに準ずる行為

また、たとえば、通勤の途中で経路近くの公衆トイレを使用する場合や経路上の店でタバコやジュースを購入する場合などのささいな行為を行う場合には、逸脱・中断にはあたらず、すべて通勤と認められます。

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通勤災害は、残念ながら誰にでも起きる可能性があります。「通勤中の病気や怪我であれば、中断や逸脱があっても、すべて労災の給付がされる」と勘違いをしている方も少なくありません。
経営者や事務担当者は正しい知識を持って、通勤災害か否かの対応をしていただければと思います。通勤災害に該当するかどうか疑問がある場合は、所轄の労働基準監督署へ相談しましょう。

また、死亡など重大な通勤災害が発生してしまう可能性があるのは、車やバイクでの通勤です。車やバイクでの通勤を認めるかどうかは、会社の判断によります。
都市部など、公共交通機関での通勤が可能な場合は、できるだけ車・バイク通勤を禁止しておくべきだと考えます。しかし、地域や会社の立地によっては、車・バイク通勤を認めざるを得ないこともあるでしょう。
このような場合は、駐車場の取扱い、保険加入、免許証等を会社が確認できるように、これらの通勤に関しては許可制にすることが大切です。なお、許可条件等については、就業規則で明確にしておきましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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