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第41回 16年09月更新

育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その2 介護休業の改正ポイント~

育児・介護休業法と男女雇用機会均等法が改正され、いずれも平成29年1月1日から施行されます。
今回の法改正は多岐にわたっています。第1回目は、育児休業の法改正の内容について紹介をいたしました。
今回は、介護休業とその法改正になった内容についてみていきます。

<介護休業とは?>

 「介護休業」は、まだあまり直面したことがない企業も多いようなので、改めて介護休業の条件を確認してみましょう。
「介護休業」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、AとBに該当する家族を介護するためにする休業のことをいいます。
A 2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にあること
B 対象家族であること

Aの要件である「常時介護を必要とする状態」とは、以下の(1)または(2)のいずれかに該当する場合を指します。
(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
(2)次の12種類の状態のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、これらの状態が継続すると認められること。

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「厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし」より参照

(注1)各項目の「1」の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分でできる場合も含む。
(注2)各項目の「2」の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症や高齢者等の場合に必要な行為の
「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。
(注3)「座位保持」の「支えてもらえればできる」には、背もたれがあれば一人で座っていることができる場合も含む。
(注4)「水分・食事摂取」の「見守り等」には動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判断を支援する声かけを含む。
(注5)「物を壊したり衣類を破くことがある」における「(3)ほとんど毎日ある」の状態には、「自分や他人を傷つけることがときどき
ある」状態を含む。
(注6)「日常の意思決定」とは、毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。
(注7)慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、
本人に関する重要な決定への
合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、指示や支援を必要とすることをいう。

介護休業は、会社が指示して取得させるものではなく、従業員から申し出ることが原則です。
介護休業を取得できる「常時介護を必要とする状態」は上記の通りなのですが、会社は実際の介護の状況を正確に判断することは困難です。上記の基準にとらわれすぎるあまり従業員の介護休業の取得が制限されてしまわないように、申出を行った従業員の実情に合わせて事業主は柔軟に運用していった方が良いでしょう。

次にBの「対象家族」を介護するという要件についてみていきます。現行法での対象家族の範囲は、以下の2つに限られていました。
(1)配偶者、父母、子、配偶者の父母
(2)同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫

しかし、平成29年1月からは、対象家族の定義が変更され、「配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫」だけの定義になります。
つまり、これまでの(2)にあった同居の要件が緩和されることになります。
法改正後の対象家族をまとめた図表もあわせてご確認ください。

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「厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし」より参照

<介護休業ができる期間について>

それでは、次に介護休業できる期間についてみていきましょう。
現行法では、対象家族1人につき同じ要介護状態であれば通算93日まで、原則1回に限り取得が可能でした。
平成29年1月からは、対象家族1人につき同じ要介護状態であったとしても、通算93日までであれば、3回を上限として介護休業を分割して取得することができるようになりました。

実際の介護を経験した方ならわかると思いますが、介護をする期間というのは、先が見通せず、長期間におよぶことも多々あるようです。そのため、介護休業ができる期間が合計93日間では、分割して取得できるようになったとはいえ、いかんせん期間が短いと感じる方もいらっしゃると思います。
国の考え方は、介護休業は「自分が介護を行う期間」という位置づけだけでなく、「仕事と介護を両立させるための体制を整えるための期間」としても捉えています。
そのため、介護休業期間を介護保険サービスを受けるための準備期間としても活用し、家族の介護をしながら仕事を継続できる体制を準備する必要があります。
介護保険サービスなどの利用については、地域包括支援センターが相談に応じていますので、家族の介護が必要になった場合は連絡してみると良いでしょう。

<介護休業給付金について>

雇用保険の一般被保険者の方が、要介護状態にある家族を介護するために介護休業をした場合に、一定の要件を満たすと「介護休業給付金」の支給を受けることができます。
先ほど紹介した通り、これまでは、対象家族1人につき同じ要介護状態については、原則として1回しか介護休業を取得することができませんでした。そのため、介護休業給付金についても、このルールに則った介護休業に対してのみ支給されていました。
しかし、平成29年1月からは、対象家族1人につき同じ要介護状態であったとしても、通算して93日以内であれば、3回まで介護休業給付金の支給対象となります。

また、介護休業給付金の額も平成28年8月1日より変更されています。これまでは、「休業開始時賃金日額×支給日数×40%」で計算を行っていましたが、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」に支給額が引き上げられました。
育児休業給付金では、すでに先行して一定の期間に対しては引き上げられていましたので、介護休業もバランスを考慮して変更されたようです。

50歳代以上になると、親の介護の問題に直面する可能性が高くなると言われています。つまり、50歳~定年までの期間は、仕事と介護の両立を考えざるを得ない時期になります。
中小企業にとって大きな戦力である50歳以上の従業員が、突然「親の介護をするから休ませてほしい(会社を辞めさせてほしい)」と申し出てくる可能性は、今後ますます高くなっていくでしょう。
そのような場面に遭遇したときに、あわてて規程や制度を作成するのではなく、事前に会社で制度を整え、従業員に対しても周知しておくことが大切な時代になりました。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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