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第45回 17年01月更新

時間外労働、休日労働に関する協定の重要性

2016年末に東京労働局が労働基準法違反容疑で、「大手広告会社・電通」と、「幹部社員1人」を書類送検しました。この事件は、メディアでも大きく取り上げられたため世間的にも大きな注目を集めています。
労働基準法違反容疑の内容は、部下に労使が結んだ時間外労働時間の上限を超える残業をさせた疑いです。いわゆる「36協定違反」ということになります。

従業員を残業させるには、中小零細企業であっても大企業であっても毎年36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
毎年のルーティーン業務になので、中には「協定の仕組みや内容についてはよくわからない」といった経営者や実務担当者もいらっしゃるようです。
今回は、36協定について紹介していきたいと思います。

<36協定とは?>
労働基準法では、1 日(8時間)と 1 週の労働時間(40時間)、および休日数(毎週少なくとも1回)を定めています。そのため、法律上は、この時間数や日数を超えて従業員を労働させてはならないというルールになります。
しかし、現実的には繁忙期等で労働時間が伸びてしまうこともあるということで、「時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる「36 協定」)」が存在します。
この36協定を締結して労働基準監督署長に届け出れば、「法定労働時間を超える時間外労働」と「法定休日の休日労働」をさせることが認められます。36協定は、監督署に届け出ないと効力が発生しない点に注意が必要です。

また、締結の際には、時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではないという点を心にとめておく必要があります。時間外労働・ 休日労働は必要最小限にとどめられるべきものです。労使がこのことを十分に意識した上で 、36 協定を締結するようにしましょう。
監督署に届け出が終了したら就業規則やその他各種の労使協定と同様に、常時各作業場の見やすい場所へ備え付けたり、書面を交付する等の方法により、労働者に周知する必要があります。

<36協定の必要な協定事項について>
36協定では以下の事項について、労働者代表と締結する必要があります。ひとつでも欠けてしまうと効力が発生しないので、漏れのないようにしましょう。
1)時間外労働をさせる必要のある具体的な事由
2)時間外労働をさせる必要のある具体的な業務の種類
3)時間外労働をさせる必要のある具体的な労働者の数
4)1日について延長することができる時間
5)1日を超える一定の期間について延長することができる時間
6)有効期間

注意すべき事項としては、1)と2)を決定する際には対象業務を拡大したりすることのないように、業務の区分を細分化することです。臨時に発生する業務を想定し、時間外労働をさせる業務の範囲を明確にしましょう。

<労働者代表の選出について>
あまり注意が払われていない傾向がありますが、36協定では、労働者代表の選出を正しい方法で行わないと無効と判断される可能性があります。
この労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する従業員であることを確認しましょう。
・監督または管理の地位にある者でないこと。
・労使協定の締結等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であること。

<延長時間の上限について>
36協定を締結することによって、労働基準法で定める法定の労働時間を超えて、あるいは法定休日に従業員に労働させることができるようになります。しかし、労働時間が青天井になってしまう可能性があるので、法定労働時間を超える時間数には上限時間が定められています。
協定で定める延長時間は、最も長く設定をした場合でも次の表の限度時間を超えないものとしなければなりません。

期間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1か月 45時間
2か月 81時間
3か月 120時間
1年間 360時間

実務的には、1か月の上限時間を表の45時間と設定している会社が多くあるようです。ただし、「1か月45時間まで」にとらわれていると、1年間の上限を超過してしまうことがあります。1年の上限時間についても超過しないように、忘れずにチェックしましょう。
*仮に毎月45時間法定労働時間を超える労働をしたとすると、8か月で1年の上限である360時間になります。そうすると、残りの4か月は一切法定労働時間を超える労働はさせられないことになります。

<特別条項付き協定について>
36協定では、労働基準法で定める法定の労働時間を超えて労働させられる時間には上限が定められています。しかし、このルールにはさらに例外があります。
「臨時に」限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない「特別の事情がある」場合には、以下の例のような特別条項付き協定を結んでおけば、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。

【例】
一定期間における延長時間は、1か月45時間、1年360時間とする。 ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、1年のうち6回を限度として1か月60時間まで、1 年420時間までこれを延長することができる。 なお、延長時間が1か月45時間を超えた場合の割増賃金率は30%、1年360時間を超えた場合の割増賃金率は35%とする。

特別条項付き協定で想定している「臨時的なもの」とは、一時的または突発的に、時間外労働を行う必要のある事項です。そのため、全体として1 年の半分を超えないことが見込まれるものでなければなりません。
限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情は、限度時間以内の時間外労働をさせる必要のある具体的事由よりも限定的なものになります。

厚生労働省が発表している「臨時的なもの」と認められる事項には次のようなものがあります。
・予算、決算業務
・ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
・納期のひっ迫
・大規模なクレームへの対応
・機械のトラブルへの対応  など

反対に認められないとされている事項には次のようなものがあります。
・(特に事由を限定せず)業務の都合上必要なとき
・(特に事由を限定せず)業務上やむを得ないとき
・(特に事由を限定せず)業務繁忙なとき
・使用者が必要と認めるとき
・年間を通じて適用されることが明らかな事由   など

過重労働は今後ますます問題になってくると考えられます。メディアでも取り上げられたように、「特別条項付き協定を締結すれば、時間外労働に上限はない。」のですが、1か月100時間を超える残業や半年間の平均残業時間が80時間を超えてくると、健康障害のリスクが高くなります。
万が一、このような従業員が事故や健康障害を起こすと、労災になるケースも出てきます。労災認定をされると、民事上の損害賠償責任が発生したり、会社ブランドが大きく傷ついてしまう可能性も出てきます。
「36協定で定めた時間の範囲内だから問題がない。」と思うのではなく、できる限り残業時間を削減していくことが今後の日本の企業に求められます。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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