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第46回 17年02月更新

同一労働同一賃金の行方

平成28年8月3日に行われた記者会見で、安倍首相が「同一労働同一賃金を実現し、“非正規”という言葉をこの国から一掃します」と発言をしました。それに伴って、平成28年12月20日に厚生労働省は、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表しました。
今回は、そのガイドライン案が出された背景について、みていきたいと思います。

【同一労働同一賃金ガイドライン案が作成された背景】

安倍首相が働き方改革を進めると記者会見で発言をしてから、「同一労働同一賃金」という言葉がテレビや新聞でよく報道されています。報道を見聞きしていると、これまで日本には、同一労働同一賃金についての法律がまったくなかったように感じる方もいらっしゃると思います。
しかし、これまでも非正規社員に対する不合理な待遇を禁止する法律は存在していました。とはいえ、日本の非正規雇用労働者の賃金水準は欧州諸国と比べて低い状況にあります。そのため、不合理な待遇差の解消による非正規雇用労働者の待遇改善が、重要な政策課題と位置づけられています。

【これまでの同一労働同一賃金に関する法律とガイドライン案の意義】

まずは、現在の非正規労働者の均等待遇について定められている法律について、確認をしていきましょう。

パートタイム労働法第8(短時間労働者の待遇の原則)
事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

パートタイム労働法第9
(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)
事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。

労働契約法第20(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

これらの条文を整理すると、正社員と非正規社員(パート労働者や有期契約労働者)の間の待遇差(賃金差等)については、次の3つの要素による不合理な待遇差を禁止しています。
1)職務内容(=業務内容+責任の程度)
2)職務内容と配置の変更範囲 (=「人材活用の仕組み・運用等」)
3)その他の事情 (詳細解釈は示されていない)

1)と2)が正社員と同様の場合は、パート労働者であったとしても同じ待遇が求められます。いわゆる「均等待遇」と呼ばれるものです。
この「均等待遇」は、どのような理由があったとしても同じ待遇をしなければならないということではなく、成果、能力、経験等によって生じる賃金差は許されていますので、ご注意ください。

上の3つすべてを考慮した結果「不合理」と判断される待遇差は禁止されます。いわゆる「均衡待遇」と呼ばれるものです。
これまでは、正社員と非正社員間で、上の3つの考慮すべき要素に、どのような「違い」があれば、不合理と判断されるのかが示されていませんでした。
今回のガイドライン案は、その解釈が提示されたということになります。

今後、正社員と非正社員の間の待遇差について、法改正に向けた検討が行われる予定です。このガイドライン案は、今後、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて、最終的に確定されます。
そのため、現時点では、今回のガイドライン案を守っていないことを理由に行政指導等の対象になることはありません。

【同一労働同一賃金ガイドライン案の内容について】

ガイドライン案についてひとつずつ紹介をしていきたいのですが、分量が膨大なため、ここですべてを掲載、説明することは困難です。
ガイドライン案は、首相官邸ホームページ内の「第5回働き方改革実現会議」配布資料で見ることができます。一度目を通してみることをお勧めします。
なお、ガイドライン案の内容に不明点があった場合は、厚生労働省内に設置された専用相談窓口(03-3595-3316)で相談を受け付けています。

これからの会社経営は、少子高齢化がさらに進むことが見込まれるため、非正規社員のウエイトがこれまで以上に大きくなってくると予想されます。
国としても、大規模改革をさらに進めていくと考えられますので、経営者や人事担当者は動向を把握して、自社に合った制度に落とし込んでいく必要があります。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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