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第48回 17年04月更新

テレワークの導入と労働法の考え方

最近、行政が音頭をとる「働き方改革」の一環で、在宅勤務などのテレワークの導入を検討している企業が増えてきています。パソコンやタブレットなどの端末の性能が向上したことによって、業種によってはテレワーク導入のハードルが下がったといえるでしょう。
今回は、テレワークの中でもひときわ注目を浴びている自宅における「在宅勤務」をする場合の労働法の適用についてみていきたいと思います。

<テレワークとは?>

「テレワーク」とは、パソコンやタブレットなどのICT(情報通信技術)を活用した時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のことを指します。たとえば、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスなどが該当します。
すべての労働日を自宅などで働くということではなく、週や月に数回であってもテレワークは可能です。それぞれの従業員がおかれている状況に応じて、テレワークを利用する日数を決めることができます。
テレワークの導入により労使それぞれが受けることができるメリットは、一般的に以下のような点があげられます。

・従業員のメリット
1)育児や介護、病気の治療などをしながら働くことができる。
2)通勤時間の削減などにより自由に使える時間が増える。
3)通勤が難しい高齢者や障害者の就業機会が増える。
4)電話応対などで仕事が中断されず、業務に集中することができる。

・会社のメリット
1)柔軟な働き方を可能にすることにより、優秀な人材を確保できる。
2)ワーク・ライフ・バランスを推進することができる。
3)オフィススペースに必要な経費や通勤手当を削減できる。
4)災害時であっても、事業を継続することができる。

<テレワーク時の労働基準法等の適用について>

テレワークをする従業員であっても、労働者であることには変わりはありません。したがって、以下の法律は事業所で勤務する労働者と同様に適用されます。
1)労働基準法(労働時間、有給休暇、割増賃金等)
2)労働契約法(労働契約内容の変更等)
3)最低賃金法
4)労働安全衛生法(健康診断等)
5)労働者災害補償保険法(怪我や疾病を発症した際の労災保険給付等) など

<在宅勤務を導入する際の注意点>

技術的にはインターネットに接続する環境があれば、今日からでもテレワークをスタートさせることは可能です。

ただし、特に「在宅勤務」を導入する場合は、少なくとも以下のポイントが整備できているかを確認してから行うようにしましょう。
1)在宅勤務を命じることが就業規則上可能になっているか。
2)在宅勤務者専用の労働時間を定める場合は、その労働時間に関するルールが定められているか。
3)在宅勤務時にかかった費用(通信料等)の支払いに関するルールが決まっているか。

これらのルールを決めるときは、会社が一方的に定めてしまうのではなく、労使で十分に話し合って決めることが重要です。実際に在宅勤務をする従業員と認識が違ったまま制度をスタートさせてしまうと、後々トラブルが発生することも考えられます。

<テレワーク時の労働時間について>

テレワークの場合でも労働時間の算定ができるようであれば、「1日8時間、週40時間」の通常の労働時間制が適用されます。条件が合えば、テレワークを行う従業員に、「変形労働時間制」や「裁量労働制」を適用することも可能です。

中でも「在宅勤務」をする従業員に適用することが多い制度は、「事業場外みなし労働時間制」です。しかし、在宅勤務だからといってすべて導入できるわけではありません。
「事業外みなし労働時間制」を適用するには、以下の3つをすべて満たしていることが条件になります。(京労発基第35号平成16年2月5日)
1)当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
2)当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
3)当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。

<事業場外みなし労働時間の設定方法>

「事業場外みなし労働時間制」を適用した場合の労働時間は、次の3つの方法のいずれかにより算定します。
1)所定労働時間
2)所定労働時間を超えて労働することが必要である場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間
3)労使協定で定めた時間

これらのうち、2)か3)のいずれかの方法で労働時間を算定する制度にしている場合は、労働時間の一部を事業場内で労働した日に注意が必要です。この場合、事業場内で労働した時間については別途把握しなければならず、「みなす」ことはできません。
つまり、このケースにあたる日の労働時間は、「別途把握した事業場内における時間」と「みなし労働時間制により算定される事業場外で労働した時間」を合計した時間となります。
在宅勤務であっても、たとえばお昼まで自宅で勤務し、会議に出席するために午後は出社するような日がこれにあたります。

<割増賃金の計算方法>

事業場外みなし労働時間制を導入したとしても、割増賃金の支払いがすべて免除されるわけではありません。次のいずれかのケースに該当する場合は、割増賃金の支払いをする必要があります。

1)時間外労働
事業場外労働みなし労働時間制により算定されるみなし労働時間と事業場内の業務に従事した時間の合計が1日8時間を超える場合には、8時間を超えた時間は時間外労働となり、2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。

2)休日労働
法定休日に労働した場合は、3割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。時間外労働と同様に、事業場内の業務に従事した時間があるのであれば、合算して計算をします。

3)深夜労働
事業場外労働みなし労働時間であっても、午後10時から午前5時までの間に実際に労働したときは、その時間については2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。

ただし、休日労働や深夜勤務を許可制にしていて、要件を満たしている場合などは、在宅勤務時のこれらの割増賃金の支払い義務が免除されるケースもあります。事業場外労働を適用する在宅勤務を導入する場合は、就業規則等をきちんと整備することをおすすめします。

これまで、育児や介護で優秀な人材がやむを得ず離職してしまうのをたくさん見てきました。従業員が退職してしまうと、採用や教育を一からしていかなければならないので、お金や時間等のコストがかかってしまいます。
職種や業種によっては導入が困難なケースもありますが、テレワーク制度を導入することで離職を防げるのであれば検討してみてはいかがでしょうか。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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