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第51回 17年08月更新

病気療養のための休暇や短時間勤務制度

最近ではときどき報道もされるように、がん等の病気の治療のために退職せざるを得ない方が多数いらっしゃるようです。国でも、昨年12月にがん患者の雇用の継続等に事業主の配慮を求めた「がん対策基本法の一部を改正する法律」を成立させ、すでに施行されています。
優秀な社員が一人退職してしまうと、採用や教育のコストなども含めれば会社の損失は計り知れません。もし、病気療養のための休暇や短時間勤務制度が会社にあれば、退職するまでには至らなかったかもしれません。
今回は、病気療養のための休暇や短時間勤務制度についてみていきたいと思います。

<特に配慮を必要とする労働者について>

以前のコラムでも紹介をしましたが、次にあげるような事情を持っている労働者には、それぞれの事情に応じて適切な対応が必要になります。
・特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者
・子の養育や家族の介護を行う労働者
・妊娠中や出産後の女性労働者
・単身赴任者
・自発的な職業能力を図る労働者
・地域活動やボランティア等を行う労働者
・その他特に配慮を必要とする労働者

今回の、病気療養をしている従業員については、「特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者」に該当します。
病気休暇制度や休職制度については、年次有給休暇と違って創設する義務はありません。しかし、これからは柔軟にこれらの制度を導入することによって、既存の従業員の能力を最大限活かせる組織づくりを考える必要があるでしょう。

<病気療養のための休暇について>

近年の医療技術の進歩によって、これまでは治らないとされてきた病気が治るようになってきました。その一方で、長期にわたる治療が必要な病気やメンタルヘルス上の問題を抱えながら職場復帰を目指して治療を受ける労働者や、治療を受けながら就労する労働者の数が増加しています。
休職の規定がある会社では、休職期間中に病気が完治しなければ退職としていることが多いと思います。しかし、現在では病気と付き合いながら就労する労働者も増えてきています。正社員はフルタイムの勤務、それが不可能であれば退職という極端な制度のみだと、従業員が長期にわたり治療を続けることになった場合に、会社として対応することが難しくなってしまいます。

このような労働者をサポートするためには、次のような制度の導入が考えられます。
1.治療・通院のための時間単位や半日単位で取得できる休暇制度
2.年次有給休暇とは別に使うことができる年休積立制度や病気休暇制度
3.療養中・療養後の負担を軽減する短時間制度 等
それでは、これらの制度をもう少し具体的にみていきたいと思います。

1)時間単位・半日単位の年次有給休暇について

労働基準法は、年次有給休暇の付与を原則として1日単位としています。ただし、例外として会社と従業員の間で労使協定を締結することによって、時間単位で年次有給休暇を取得することができます。これを、「時間単位年休」と呼びます。

時間単位年休では、通院や子供の学校行事など必要な時間分だけの休暇を取得できるため、多様なニーズに柔軟に対応することができます。
注意すべき点は、年次有給休暇の本来の趣旨を損なわないようにするため、時間単位年休は労働者の希望があることが前提です。また、時間単位年休にすることができる日数は、1年間で5日分までと制限されています。

時間単位年休を導入する際には、以下の項目を労使協定で定めなくてはなりません。
1)時間単位年休の対象労働者の範囲
一部対象外とする場合は、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られる。
2)時間単位年休の日数
1日分の年次有給休暇に換算して、1年間で5日以内の範囲で定める。
3)時間単位年休1日の時間数
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定める。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げる。
4)1時間以外の単位で与える場合の時間数
この場合は、2時間単位、4時間単位など1日の所定労働時間数を上回らない整数の時間単位で定める。

2-1.失効年休積立制度

付与された有給休暇は、使用しなければ2年間で失効することになります。失効した有給休暇を積み立てておき、病気等で長期療養する場合に限り、積み立てていた休暇を使用できるようにする制度です。
この制度は、大企業ではすでに導入されているケースも多いようです。

2-2.病気休暇制度

私傷病の療養のために、年次有給休暇以外で利用できる休暇制度です。取得できる要件や期間は、労使協議あるいは会社が決定することが一般的です。
多くの企業が導入している休職制度などは、これに該当します。

3.短時間勤務制度

独立行政法人 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査 2012年」によると、一定の期間、所定労働時間を短縮する短時間勤務制度を導入している企業は42.7%、そのうち疾病治療のために制度を利用できる企業は54.2%という結果がでています。
育児休業明けの従業員に対して時短勤務を制度化している会社は多いですが、今後は疾病治療についても制度化していく企業が増えていくかもしれません。

これからも、少子高齢化は加速していきます。働き手が少なくなっていく中で、いかに人材を確保して成果を上げていくかが求められています。
病気や怪我は、誰にでもなる可能性があります。今回紹介した病気休暇制度等は、法律で定められた制度ではありません。しかし、育児とは異なり、比較的長期間にわたる可能性のある介護をしながら就業する労働者にも準用することができるかもしれません。
優秀な人材を家庭の事情や本人の体調などにより失うことのないように、あらかじめ検討しておいてみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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