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第58回 18年02月更新

労働契約の申込みみなし制度

前回のコラムで、平成27年9月に改正施行された「労働者派遣法」から「事業所単位の期間制限」と「派遣労働者単位の期間制限」について紹介をしました。
改正されたのは3年前ですが、一部の業界では2018年問題として関心が高まっている内容です。今回は、派遣先が期間制限に抵触したことを認識しながら派遣労働者を受け入れた場合などに適用される「労働契約申込みみなし制度」についてみていきたいと思います。

<労働契約申込みみなし制度とは>

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先事業所が違法派遣を受けた時点で、派遣先の会社が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす制度です。
ただし、派遣先が違法派遣と知らず、かつ、知らなかったことに過失がなかった時には適用されません。

派遣労働者がこの申込に対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先の会社との間に労働契約が成立します。

どういうことかというと、そもそも派遣労働者は派遣元事業主との間で雇用契約があり、派遣先事業所の指揮命令を受けて働いています。申込みみなし制度により、違法派遣等があった場合には、派遣先の会社が派遣労働者に対して雇用契約を申し込んだものとみなされます。「みなし」ですので、実際に雇用契約の申し込みをしていなくても、雇用契約を申し出たものとされます。
実際には、派遣先の会社が本人へ直接申し出ているわけではないので、派遣労働者が派遣先の会社へ申込みみなし制度の適用を申し出た場合には、派遣先の会社とその労働者の間で直接雇用契約が結ばれたことになります。つまり、派遣労働者の意思だけで、派遣元事業主から派遣先の会社へ転職・転籍できるということです。
この場合の雇用契約は、従来派遣元事業主と派遣労働者との間で結ばれていた雇用契約がそのまま引き継がれます。

<労働契約申込みなし制度の対象となる違法派遣の種類について>

派遣先が、以下の派遣を受け入れていた場合に労働契約申込みみなし制度の対象になります。
1.派遣労働者を禁止業務に従事させること
2.無許可事業主から労働者派遣を受けること
3.事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること
4.個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること
5.偽装請負をしている場合

1.派遣労働者を禁止業務に従事させること
派遣労働が禁止されている業務には、1)港湾運送業務、2)建設業務、3)警備業務、4)病院等における医療関係業務(ただし、紹介予定派遣・産休等の代替要員・へき地の医師を除きます。)などがあります。
派遣先がこれらの業務に派遣労働者を従事させた場合には、その派遣労働者に対して雇用契約を申し込んだものとみなされます。

2.無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること
無許可事業主から派遣労働者を受けた場合には、その事業主から受け入れた派遣労働者に対して、労働者派遣を受けた者が雇用契約を申し込んだものとみなされます。
派遣労働者を受け入れることを検討している会社は、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」で、その派遣会社が許可を受けているか確認をすることができます。

3.事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること
「同一の事業所」が派遣労働者を受け入れられる期間は、原則「3年」が限度です。派遣先事業所が3年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合は、抵触日の1ヶ月以上前までに派遣先の事業所の過半数労働組合等からの意見を聴く必要があります。詳しい内容は、前回(第57回)のコラムをご参照ください。
この期間を過ぎて、派遣労働者を受け入れた場合には、その派遣労働者に対して雇用契約を申し込んだものとみなされます。

4.個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における「同一の組織単位(課やグループ)」に対して派遣できる期間も同じく「3年」が限度です。詳しい内容は、前回(第57回)のコラムをご参照ください。
この期間を過ぎて、派遣労働者を受け入れた場合には、その派遣労働者に対して雇用契約を申し込んだものとみなされます。

5.偽装請負をしている場合
労働者派遣法や労働基準法を免れる目的(偽装請負等の目的)で、請負契約等の契約を締結しているものの、その実態が「労働者派遣」であった場合には、従事している労働者に対して、労働契約申込みみなし制度が適用されます。

<労働者派遣事業と請負事業との違いについて>

労働者派遣事業と請負により行われる事業の区分については、昭和61年に最初の告示が出されました。その後、改定を経て、現在では平成24年厚生労働省告示第518号が最新になっています。
多少読みにくい部分はありますが、重要なポイントになりますので紹介をします。

「請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。」

1 次のイ、ロ、ハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。

イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行う者であること。
(1)労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
(2)労働者の業務に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。

ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行う者であること。
(1)労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
(2)労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。

ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1)労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
(2)労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。

2 次のイ、ロ、ハのいずれにも該当することにより請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。

イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。

ハ 次のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
(1)自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは機材(業務上必要な簡易な工具を除く)又は材料若しくは資材により業務を処理すること。
(2)自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。

これらのすべてに該当しないと請負業務とは言えず、労働者派遣と判断されます。偽装請負の場合は、ほかの4つのパターンと異なり、例えばたまたま指揮命令等を行ってしまったことだけで労働契約申込みみなし制度が適用されるわけではありません。
ただし、「偽装請負等の目的」がある場合には、そこで働いていたすべての労働者に対して、労働契約申込みみなし制度が適用されます。
業務の一部を請負業務として外部に委託している会社では、請負業務として適正であるか改めて点検を行ってみた方がよいでしょう。

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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