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第64回 18年08月更新

働き方改革~その1

今回より数回に分けて、平成30年6月29日の参院本会議で可決、成立した「働き方改革法」の概要についてみていきます。
「働き方改革法」は、新聞やテレビでも大きく報道をされていますので、ご存知の方も多いと思います。今回は、その中でも一番話題になっている「残業時間の上限規制」を中心にみていきます。

現在も労働時間の延長については一定の基準が設けられていますが、特別条項付きの労使協定(36協定)を締結している会社の場合、法律上では残業時間の上限を青天井にすることが可能です。
一方で、長時間労働が原因での疾病や、最悪の場合は死に至るケースもあるなどの問題が発生しています。これらに歯止めをかけるため、残業時間の上限規制が作られました。労働基準法は昭和22年に制定・施行されましたが、今回のように残業時間の上限を法律で規制することは、初めてとなります。
それでは、「働き方改革法」の具体的な内容を、ひとつずつみていきましょう。

<残業時間の上限規制>

残業時間の上限規制の施行は、大企業が平成31年4月1日、中小企業が平成32年4月1日からになります。
残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。土日祝日が休みの会社では、月の残業時間が45時間だと1日当たり2時間程度の残業に相当することになります。
ここまでは、これまでの「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」と変わりませんが、法律で明記されたことに今回の意義があります。

また、臨時的な特別の事情があって、労使合意の上で上限を超えて延長する場合(特別条項)でも、

1)年720時間以内
2)複数月平均80時間 以内(休日労働を含む)
3)月100時間 未満(休日労働を含む)

を超えることはできなくなりました。この3点に関しては、新たに設けられた内容です。
なお、原則である月45時間を超えることができるのは、年間で6ヶ月だけに限られています。

働き方改革法では、上記のように残業時間の上限が定められました。しかし、以下の事業や業務については、すぐに規制するのは困難なため、上限規制が除外あるいは猶予されます。

自動車運転の事業
改正法施行5年後に、上限規制が適用になります。(ただし、適用後の上限時間は、年960時間とし、将来的な一般則の適用については引き続き検討されることになりました。)

建設事業
改正法施行5年後に、上限規制を適用します。(ただし、災害時における復旧や復興の事業については複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用されません。)

医 師
改正法施行5年後に、上限規制を適用します。(ただし、具体的な上限時間等については医療界の参加による検討の場において、規制の具体的あり方や労働時間の短縮策等について検討し、結論を得ることしています。)

新技術・新商品等の開発業務
医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、時間外労働の上限規制は設けません。

鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
改正法施行後5年間は、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用されません。

<割増賃金率の猶予措置の廃止>

平成22年4月の労働基準法改正により、大企業については、月間の残業時間が60時間を超えた場合の割増率は50%以上に定められました。しかし、中小企業も同じルールにしてしまうのは難しいことから、現在中小企業については、月間の残業時間60時間を超えても割増賃金率は25%以上に据え置くという猶予措置が講じられています。
現在の割増率は、以下の通りです。

1か月の時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)
60時間以下 60時間超
大企業 25% 50%
中小企業 25% 25%

以前から話題にはなっていましたが、今回の法改正で中小企業に対する猶予措置がいよいよ廃止されることになりました。
平成35年4月1日からは、大企業と中小企業の区別なく、以下の割増率になります。

1か月の時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働時間)
60時間以下 60時間超
大企業 25% 50%
中小企業 25% 50%

残業時間が60時間を超す従業員がいる中小企業では、今回の割増率の引き上げにより、人件費の上昇が見込まれます。猶予措置の廃止後は、毎月の残業時間をできるだけ60時間以内に抑えていくことが重要になります。平成35年4月までは多少の時間の猶予がありますので、業務の進め方や人員配置等、残業時間を短縮できる方法を模索し、施行までに対応していく必要があるでしょう。

<勤務時間インターバル制度>

勤務間インターバルは、終業から始業までの休息時間を一定時間以上に確保する制度です。インターバルを設けることによって、従業員の睡眠時間やプライベートな時間の確保が期待できます。
ヨーロッパでは、すでに実施されており、一定の成果が上がっているようです。すでに、飲料メーカーのアサヒグループホールディングスや三菱ケミカルなどの大手企業は11時間のインターバルを設けているようです。
今回の法改正によって勤務時間インターバル制度は作られましたが、普及促進を図るための努力義務にとどまっています。しかし、働き方改革に対する会社の姿勢をアピールする意味でも、インターバル制度の導入を検討しても良いかもしれません。

 

今回は、平成30年6月29日に可決された「働き方改革法」に関する内容の一部をみてきました。次回も引き続き「働き方改革法」にスポットを当て、有給休暇の取得義務等を紹介していきたいと思います。

 

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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