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第66回 18年10月更新

働き方改革~フレックスタイム制の改正

働き方改革関連法案の成立の一環で、平成31年4月より、フレックスタイム制のルールも変わります。
今回の法改正によって、時間外手当の計算方法も変わってきます。今回は、フレックスタイム制の改正内容についてみていきたいと思います。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、「1か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で始業時刻や終業時刻を自分自身で決定をしながら働くことができる」制度です。
フレックスタイム制では、1日単位で残業時間の計算を行うことはありません。あくまでも「清算期間のトータルの時間」によって、時間外手当の支払いの要否を判断します。
そのため、労働時間の長さが直接成果に結びつかない研究・開発職等を主体にした会社で採用されていることが多いようです。

フレックスタイム制度を導入するメリットとして、「通勤ラッシュを避けることができる」「従業員自身が労働時間の決定をするので、効率的に勤務できるようになる」「業務の繁閑にあわせて勤務できるので、無駄な残業時間を軽減することができる」といった効果が期待できます。

フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間です。言い換えれば、時間外労働であるかどうかを「1日ごと」に判断するのではなく、「清算期間の労働時間のトータル」で計算するということになります。
現行のフレックスタイム制は、「清算期間」が最長1か月です。労働者は、1か月の中で起こり得る生活上のニーズに対応することはできますが、繁忙期などでは1か月の中で労働時間を調整するのは困難という意見もありました。

そこで、法改正によって、平成31年4月から清算期間として設定できる期間が「1か月以内」から「3か月以内」に延長されることとなりました。清算期間を1か月から3か月に延長することによって、労働時間の調整が容易になると考えられます。

以下の図の6月と8月を見てください。6月は法定労働時間を超えて働いています。現行法では、清算期間が1か月であるため、会社はこの超過時間の時間外手当を支払う必要があります。
一方、8月は法定労働時間を下回っています。現行のルールでは、欠勤控除等をするか、もしくは、不足した時間を次の清算期間に合算するという方法をとります。
たとえば、所定労働時間が160時間だったところ150時間しか労働しなかった場合では、10時間の不足が生じます。この不足時間をその月の給与から控除するか、あるいは、次の月の所定労働時間に上乗せするという方法を選択することになります。

厚生労働省資料『労働基準法等の一部を改正する法律案について』より

今回の法改正により、平成31年4月からは、清算期間を3か月にすることができますので、6月、7月、8月でバランスを取ることができます。
清算期間を3か月に変更したとすると、6月の時間外手当を支払う必要はなくなります。その理由は、8月の不足分に超過した時間を吸収させるからです。そのため、8月についても、欠勤控除等を行わなくて良くなります。

ただし、「各月で週平均50時間(時間外労働が月45時間弱となる時間に相当)を超えた場合は、使用者はその各月で割増賃金を支払って清算すること」という法改正も同時に行われています。
また、フレックスタイム制は、深夜時間と休日労働については別途割増賃金を支払う必要があります。この点は今までのルールと変わっていませんが、誤解されやすい点ですのでご注意ください。

清算期間の法定労働時間

フレックスタイム制も、月に労働することができる上限時間は決まっています。上限時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が40 時間(特例措置対象事業場は、44 時間)以内です。

1か月の暦日数 労働時間の総枠(特例措置対象事業場)
28日 160.0時間   (176.0時間)
29日 165.7時間   (182.2時間)
30日 171.4時間   (188.5時間)
31日 177.1時間   (194.8時間)

労使協定で定めなければならない事項

フレックスタイム制を会社に導入するには、労使協定で次の事項を定めます。

1)対象となる労働者の範囲
2)清算期間
3)清算期間における総労働時間(清算期間を平均して、1週間の労働時間が週の法定労働時間を超えない範囲内に限る)
4)標準となる1日の労働時間
5)コアタイム(労働者が必ず労働しなければならない時間)を定める場合には、その時間帯の開始と終了の時刻
6)フレキシブルタイム(労働者が選択により労働することができる時間帯)に制限を設ける場合にはその時間帯の開始と終了の時刻

フレックスタイム制の労使協定については、労使双方から異議がない場合には同一の内容の協定が更新される「自動更新」の規定を設けることができます。
また、現行では、労働基準監督署への届出は義務付けられてはいません。ただし、平成31年4月以降、1か月を超える清算期間を設定した場合は、労働基準監督署に労使協定を提出しなければなりません。

 

今回は、フレックスタイム制度の法改正について紹介をしてきました。仕事の内容が多様化してきており、労働時間に応じて成果が比例しないような仕事をしている方も増えてきました。
法改正により、これまでより利用しやすくなった「フレックスタイム制」の導入を、あらためて検討しても良いかもしれません。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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