S-PAYCIALコラム

S-PAYCIAL-Column

第67回 18年12月更新

働き方改革~高度プロフェッショナル制度

平成30年7月6日に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」には、特定高度専門業務・成果型労働制も組み込まれました。
この制度は、いわゆる「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」と呼ばれている制度です。今回の法案の審議に際しては、マスコミや野党が何度も取り上げた制度ですので、皆さんも耳にしたことがあるかと思います。
今回は、高度プロフェッショナル制度の概要と、以前から存在する専門業務型裁量労働制との違い等について紹介をしていきたいと思います。

労働時間の原則

労働基準法では1日(8時間)と1週の労働時間(40時間)、および休日日数(毎週少なくとも1回)を定めています。
原則は、この時間数や日数を超えて従業員を労働させてはならないというルールです。しかし、現実には繁忙期等で労働時間が伸びてしまうこともあります。そのため、時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる「36 協定」)が存在します。36協定を締結して労働基準監督署長に届け出れば、「法定労働時間を超える時間外労働」と「法定休日における休日労働」が認められます。
36協定は、労働基準監督署に届け出ないと効力が発生しない点に注意が必要です。また、締結する際は、時間外労働と休日労働を無制限に認める趣旨ではないという点を心にとめておく必要があります。

専門業務型裁量労働制とは?

仕事の時間が長くなればなるほど、時間に比例して成果も大きくなるような業務であれば、労使間で36協定を締結し、協定の範囲内で労働時間を長くするのもマネジメントの一つの方法です。
しかし、現代では、かならずしも労働時間の長さに比例して成果が上がらない業務も多く存在します。そのような業務に対応するために、「専門業務型裁量労働制」が作られました。

専門業務型裁量労働制とは、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を労働者の裁量にゆだねることができる業務であれば、制度の導入により、むだな残業代の削減効果が期待できます。
しかし、この制度は法令等により定められた19業務に限定されていますので、どのような業務でも導入するという訳には行きません。専門業務型裁量労働制を導入するためには、労使協定を定めて事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出なければなりません。

法令で定める19業務とは?

専門業務型裁量労働制を導入することができる業務は以下の19業務です。仕事の名称ではなく、実態の業務内容で判断されます。これから導入を検討する会社は、導入の前に専門家や行政機関に確認してから行った方が良いでしょう。

(1) 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2) 情報処理システムの分析又は設計の業務
(3) 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
(4) 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5) 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6) コピーライターの業務
(7) システムコンサルタントの業務
(8) インテリアコーディネーターの業務
(9) ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10) 証券アナリストの業務
(11) 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12) 学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
(13) 公認会計士の業務
(14) 弁護士の業務
(15) 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16) 不動産鑑定士の業務
(17) 弁理士の業務
(18) 税理士の業務
(19) 中小企業診断士の業務

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

労働時間の長さに応じて成果が比例しない業務については、これまでは専門業務型裁量労働制等で対応してきました。
しかし、専門業務型裁量労働制等の制度では、実際の働き方にマッチしていないケースもありました。そのような方を、一定の条件を満たしているのであれば、高度プロフェッショナルとして労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする制度が「特定高度専門業務・成果型労働制」です。
一定の条件とは、以下のようになっています。

(1) 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)がある。
(2) 高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する。
(3) 年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じる。
(4) 本人の同意や委員会の決議等を要件とする。

高度プロフェッショナル制度と専門業務型裁量労働制の違いは、高度プロフェッショナル制度では「労働時間」「休日」「深夜」の割増賃金の規定が適用除外になるという点です。
これまでの裁量労働制は、あくまでも「1日」の労働時間を一定の時間にみなす制度でした。したがって、仮に1日の労働時間を定時でみなしていたとしても、休日と深夜の割増賃金は必要でした。
今回の高度プロフェッショナル制度は、すべての労働の一切合切をまとめて賃金を決める制度と理解していただければ良いかと思います。

(3)の健康確保措置として、年間104日の休日確保措置を義務化した上で、それに加えてさらに次のいずれかの措置の実施を義務化する必要があります。
①インターバル措置
②1ヶ月又は3ヶ月の在社時間等の上限措置
③2週間連続の休日確保措置
④臨時の健康診断

また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければなりません。

 

高度プロフェッショナル制度の対象となる業務は、現在のところ「研究開発」「コンサルタント」「金融商品の開発」「金融商品のディーリング」「アナリスト」の5種類が想定されています。これらの業務の中で、具体的にどこまでの業務が対象になるかは、労働政策審議会分科会で検討しており、最終的には省令で定められます。
高度プロフェッショナル制度の導入を検討している企業は、今後の発表を注視しましょう。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

バックナンバー 第1~40回はこちら

バックナンバー

S-PAYCIALコラムTOPへ戻る

PAGE TOP