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第69回 19年02月更新

働き方改革~同一労働同一賃金

以前にも一度紹介しましたが、働き方改革実行計画に基づき、「同一企業内の正規雇用者と非正規雇用者の間の不合理な待遇差の是正を図る」ためのガイドラインが出されています。
いわゆる「同一労働同一賃金」です。今回は、ガイドラインに記載されている内容についてみていきたいと思います。

<同一労働同一賃金の背景と定義>

前回と重複してしまう部分もありますが、「同一労働同一賃金とは何か?」について改めておさらいしてみましょう。

新聞やテレビなどの報道を見ると、同一労働同一賃金という考え方は新しいものというイメージを持たれる方もいらっしゃいます。しかし、これは間違った認識です。
我が国の雇用慣行では、年齢や勤続年数といった俗人的な要素や無期雇用や有期雇用といった契約形態で給与の金額を決定していました。そのため、パートタイム労働法や労働契約法などといったルールはあったにせよ、正規雇用者と非正規雇用者の格差が問題となっていました。
日本の非正規雇用労働者の賃金水準は欧州諸国と比べて低い状況にあり、不合理な待遇差の解消による非正規雇用労働者の待遇改善は重要な政策課題と位置づけられています。そこで、パートタイム労働法の改正を行い、格差是正に向けて動き出したという背景があります。

同一労働同一賃金はどういう考え方なのかというと、「パート社員、契約社員、派遣労働者など」について、正社員と比較して不合理な待遇差を設けることを禁止するというルールです。これだけではなかなかイメージをすることが難しいと思います。厚生労働省では、「同一労働同一賃金ガイドライン」というものを公表しています。

ガイドラインに記載されている内容は、正社員と非正規雇用労働者との間で待遇差がある場合に、どのような場合が不合理な待遇になり、どのような場合が不合理な待遇にならないかという原則と具体例が記載されています。
ガイドラインに記載されている具体的な項目をみていきましょう。

基本給
能力や経験に応じて賃金を支給する場合については、同じ能力や経験を持っている正社員と有期契約労働者で賃金に差をつけることはできません。
また、能力や経験に違いがある場合は、その違いに応じた賃金にする必要があります。同じ職場で同じ仕事をしていたとしても、職務内容の変更や転勤などがある総合職の正社員と、職務内容や転勤がない非正規社員では、基本給の差をつけることは認められています。

昇給
勤続による能力の向上に応じて行う昇給についてみていきます。正社員と同様に勤続することで能力が向上した有期雇用労働者に対して、勤続による能力の向上に応じた部分につき、正社員と同一の昇給を行う必要があります。また、勤続による能力の向上に違いがある場合は、その違いに応じた昇給にしなければなりません。

賞与
労働者の貢献に応じて支給する賞与についてみていきます。正社員と同一の貢献をしている有期契約労働者に対しては、貢献に応じた部分については同一の支給をする必要があります。会社への貢献に違いがある場合は、その違いに応じた賞与にしなければなりません。職務内容や貢献などに関わらず、正社員には賞与を支給して、短時間・有期契約労働者には賞与を支給しないといった対応は、認められないということになります。

役職手当
役職の内容、責任の範囲などに対して支給しようとする場合、有期契約労働者に対しても同一の役職手当を支給しなければなりません。責任や職務内容に一定の違いがある場合には、その違いに基づいた役職手当を支給する必要があります。

通勤手当
有期雇用労働者にも、通常の正社員と同一の通勤手当を支給する必要があります。

業務の危険度又は作業環境に応じて支給される特殊作業手当
通常の労働者と同一の危険度又は作業環境の業務に従事する短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の特殊作業手当(危険作業手当)を支給する必要があります。

交替制勤務等の勤務形態に応じて支給される特殊勤務手当
通常の労働者と同一の勤務形態で業務に従事する短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の特殊勤務手当を支給する必要があります。

精皆勤手当
通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の精皆勤手当を支給する必要があります。

時間外労働に対して支給される手当
通常の労働者の所定労働時間を超えて、通常の労働者と同一の時間外労働を行った短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者の所定労働時間を超えた時間につき、通常の労働者と同一の割増率等で、時間外労働に対して支給される手当を支給する必要があります。

深夜労働又は休日労働に対して支給される手当
通常の労働者と同一の深夜労働又は休日労働を行った短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の割増率等で、深夜労働又は休日労働に対して支給される手当を支給する必要があります。

この他にも、福利厚生施設(社員食堂、休憩室、更衣室など)の利用についても、正規労働者と非正規労働者で格差をつけることはできません。
ガイドラインには、今回紹介した例以外にも記載されていますがありますので、一度確認してみることをおすすめします。
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

ガイドラインに即して、それぞれの項目を自社の制度とひとつずつ比べていくと、特に各種手当に関しては、「正社員しか対象になっていない」会社も多いのではないかと思います。
この同一労働同一賃金が中小企業に適用されるのは、平成33年4月1日からです。しかし、同一労働同一賃金を社内のルールに落とし込んでいくには、賃金制度や就業規則の変更をする必要があります。もちろん、人件費の増額につながる課題ですので、そのまま適用するのが難しい企業もあるでしょう。
これらの検討作業は時間がかかることが想定されますので、まだ先と思わずに今から改定に着手していった方が良いでしょう。

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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