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第72回 19年05月更新

有期労働契約の解除

ときどき「有期契約を締結している従業員から退職届を提出された場合、会社はそのまま受理しなくてはなりませんか?」と質問をされることがあります。有期契約といっても、会社はあてにしていますので、突然辞められては困ってしまいます。
有期労働契約と無期労働契約の違いは、単に契約期間が決まっているか決まっていないかの差だけではありません。
今回は、有期労働契約のポイントについて紹介をしていきます。

会社が従業員と契約できる雇用期間の長さ

雇用期間を定めている有期の1回の労働契約は、原則として「3年以内」となります。この期間には特例が設けられており、次の(1)から(3)までのいずれかに該当する場合は3年を超えて雇用期間を定めることができます。

(1)専門的知識などを持っている労働者が、その専門的知識を必要とする業務に就く場合には、契約期間を「5年以内」とすることができます。この専門的知識については厚生労働省告示で定められています。

博士の学位(外国において授与されたこれに該当する学位を含む)を有する者
公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士、弁理士
システムアナリスト及びアクチュアリーに関する資格試験に合格した者
特許発明の発明者、登録意匠の創作者、種苗登録品種の育成者
次のイ、ロに該当する者であって、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の額を1年当たりの額に換算した額が1,075万円を下回らない者

イ 農林水産業・鉱工業・機械・電気・土木・建築の技術者、システムエンジニア、デザイナーであって、大学卒業後5年以上、短期大学・高等専門学校卒業後6年以上、高等学校卒業後7年以上の実務経験を有する者

ロ システムエンジニアとして5年以上の実務経験を有するシステムコンサルタント

国、地方公共団体、一般社団法人又は一般財団法人によって知識が優れたものと認定されている者

 

ただし、専門的な知識を持つ者を雇用しても、その業務内容が専門知識と関係ない場合は特例の5年以内の雇用契約を締結することはできません。このようなケースでは、通常の3年以内の雇用期間が適用されます。

(2)60歳以上の労働者との間に締結される労働契約は、業務内容にかかわらず「5年以内」の期間を設けて締結することができます。

一般的には、高齢者になればなるほど就業の機会は限られてきます。そのため、60歳以上の労働者については、一回の雇用契約期間を長く締結できるように例外が設けられています。

(3)ダムの建設事業や大規模なトンネル工事を行う場合、工期が5年を超えてしまう場合があります。そのような有期事業の場合は、「その事業の完了に必要な期間」の労働契約を締結することができます。
この場合は、具体的な年数が定められているわけではないので、たとえば完工までに10年間必要な事業であれば、10年の労働契約を締結することができます。

有期契約労働者の退職について

 有期労働契約は、本来であればその契約期間中は「やむを得ない事由がない限り」会社、労働者双方ともに契約期間の途中で契約を解消することはできないとされています。このやむを得ない事由に該当するケースとしては、会社の倒産や労働者側の病気や傷病などが想定されます。
しかし、転職のために退職届を従業員が提出してくるといったことは珍しくありませんし、アルバイト(これもほとんどの場合「有期労働契約」にあたります)の中には突然来なくなるケースもあるようです。
元々の趣旨であれば、会社がすぐに退職を認めなくてもルール上は問題ないことになります。さらに、会社は途中で一方的に契約を解除した有期契約労働者に対して、損害賠償請求をすることも可能です。しかし、損害賠償を盾にして契約期間満了まで働かせたとしても、従業員はイヤイヤ働くことになります。このような従業員に対して仕事の成果等を求めることは難しいですし、職場内の雰囲気が悪くなることも考えられます。そのため、会社は辞めさせないようにするのではなく、今後の契約をよく話し合って双方が納得して退職時期を決めることが大切です。

有期契約の期間途中の解約については、労働者には例外が認められています。労働者側は、労働契約を締結して1年を経過すれば、契約期間中であってもいつでも退職が認められます。これは労働者だけに許されているルールです。
会社からの契約期間の途中での解約は、いわゆる「解雇」にあたります。判例では、無期契約である正社員に対する解雇よりも、むしろ要件が厳しく見られることもあります。アルバイトだからといって、会社の事情ですぐ辞めさせられるという考え方が改めた方が良さそうです。

有期契約労働者への雇止めについて

契約社員などの有期契約労働者の労働契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する「30日前まで」に予告をする必要があります。これを「雇止め」と呼びます。
雇止めの予告の対象となるのは、次の3つのいずれかに該当する有期契約労働者です。
①有期労働契約が3回以上更新されている場合
②1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

今回は、有期労働契約についてみてきました。有期契約には特有のルールがあるのですが、会社側は「有期契約だから」と簡単に考えているケースもあるようです。
労働者とのトラブルに発展しないように、有期契約特有のルールをあらためて確認してみてください。

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著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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