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第77回 19年10月更新

労働者派遣法の改正~その2

働き方改革関連法によって、令和2年4月1日に労働者派遣法が改正され、派遣労働者に対する「同一労働同一賃金」が実施されます。
前回のコラムでは、同一労働同一賃金を達成するための2つの方式である「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の概要を説明しました。
今回は、労使協定方式の具体的な内容を見ていきたいと思います。

労使協定方式の場合の必要事項について

労使協定を締結するには、以下の①~⑥の項目を定める必要があります。特に気を付けなければいけないのは、労使協定で定めた②~⑥の項目を遵守していない場合は、労使協定方式は適用されずに、派遣先均等・均衡方式が適用されることです。
労使協定をとりあえず作成しておけば良いと考えるのではなく、必ず実行できる内容にしなくてはなりません。

①労使協定の対象となる派遣労働者の範囲

②賃金の決定方法(次のAとBに該当するものに限られています。)
A 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上の賃金額となるもの
B 派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に賃金が改善されるもの(通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当などは除く)

Aについては、派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む「地域」において、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者であって、当該派遣労働者と同程度の能力と経験を有する者の「平均的な賃金の額以上」である必要があります。

この「平均的な賃金の額」は、職種ごとの賃金、能力・経験、地域別の賃金差をもとに決定されます。具体的には「賃金構造基本統計調査」と「職業安定業務統計」により、厚生労働省・職業安定局長から毎年6~7月に示される予定となっています。

令和2年の水準はすでに公表されていますので、以下のURLでご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

③派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を公正に評価して賃金を決定すること
小規模な会社だと、給与の決定方法が「社長の一存」である場合も多いようです。この決定方法だと、「公正に評価して決定する」ことにはなりません。会社によっては、賃金テーブルの作成から始めなければならなくなることもあります。

④「労使協定の対象とならない待遇(教育訓練・福利厚生施設)と賃金」を除く待遇の決定方法(派遣元事業主に雇用される通常の労働者との間で不合理な相違がないものに限る。)

⑤派遣労働者に対して段階的・計画的な教育訓練を実施すること

⑥その他の事項
・有効期間(2年以内が望ましいとされています。)
・労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を派遣労働者の一部に限定する場合は、その理由
・特段の事情がない限り、1回の労働契約の期間中に派遣先の変更を理由として、協定の対象となる派遣労働者であるか否かを変えようとしないこと

過半数代表者の選出について

労使協定を締結する際は、過半数労働組合がない場合は過半数代表者の選出を行う必要があります。過半数代表者になれる労働者は、次の両方に該当する人です。
①労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと
②労使協定を締結する者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の民主的な方法による手続きで選出された者であって、派遣元事業主の意向に基づき選出された者でないこと。

この過半数代表者の選出方法は、36協定などの労使協定の選出方法と同じです。ときどき過半数代表者を会社が指定した後に、他の労働者から信任を得るという方法をとっている会社を目にすることがあります。会社が一方的に指名して信任を得るだけだと、②の条件を満たしていない可能性がありますので、注意してください。
適切な手続きを経て選出された過半数代表者と締結された労使協定でなければ、たとえ労使協定を締結していたとしても労使協定方式は認められず、自動的に「派遣先均等・均衡方式」が適用されます。したがって、過半数代表者の選出手続きも適正に行わなければなりません。
また、当然のことですが、派遣元事業主は、「過半数代表者であること」「過半数代表者になろうとしたこと」「過半数代表者として正当な行為をしたこと」を理由として、過半数代表者等に対して不利益な取り扱いをしてはいけません。
なお、派遣元事業主は、労使協定をその「有効期間が終了した日から3年を経過する日まで」保存する義務があります。

労使協定の内容の周知について

派遣元事業主は、労使協定を締結したときは、次の①~③のいずれかの方法によって、労働者に周知しなければなりません。

①書面の交付等(書面の交付、労働者が希望した場合のファクシミリ・電子メール等)
「電子メール等」は出力することにより書面を作成することができるものに限られています。

②電子計算機に備えられたファイル、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、労働者が当該記録の内容を常時確認できるようにすること。
たとえば、派遣労働者にログイン・パスワードを発行し、イントラネット等でいつでも確認できようにする方法が考えられます。

③常時派遣元事業主の各事業所の見やすい場所に掲示するか、備え付けること
協定の概要について、書面の交付等によりあわせて周知する場合に限り、認められています。

 

今回は、労使協定方式を締結する上での注意点などを中心に紹介をしました。
繰り返しになりますが、適正な内容・手続きでないと、派遣先均等・均衡方式が適用されてしまいます。実務上は、派遣先均等・均衡方式の方が煩雑なので、労使協定方式を採用する派遣元事業主の方が多いことが想定されます。甘く見ず、前倒しで準備することをお勧めします。
次回は、派遣先から派遣元への待遇情報の提供などを紹介していきたいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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