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第78回 19年11月更新

労働者派遣法の改正~労働者の待遇の情報提供

令和2年4月1日に働き方改革の一環として労働者派遣法が改正されます。この法改正の目的は、派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消することです。「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかの方法により、派遣労働者の同一労働・同一賃金を実現するというルールが作られました。
このどちらの方法をとるにせよ、派遣元事業主は、派遣先企業からその派遣先企業が雇用する労働者の待遇の情報提供を受ける必要があります。
今回は、派遣先企業の労働者の待遇情報の提供などについて説明していきます。

派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇情報の提供

派遣労働者の待遇の決定方式が【派遣先均等・均衡方式】【労使協定方式】のいずれの場合であっても、労働者派遣契約を締結する際に、派遣先企業は派遣元事業主に対し、待遇情報を提供しなければなりません。
提供する情報は、派遣労働者が従事する業務ごとの「比較対象労働者」の賃金等の「待遇に関する情報」です。派遣元事業主は、派遣先企業から情報提供されなければ、労働者派遣契約の締結することはできません。

比較対象労働者の選定

派遣先企業は、次の①~⑥の優先順位により、派遣元事業主に情報を提供する「比較対象労働者」を選定します。

①「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
②「職務の内容」が同じ通常の労働者
③「業務の内容」または「責任の程度」が同じ通常の労働者
④「職務の内容および配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
⑤上の4つに相当するパート・有期雇用労働者(短時間・有期雇用労働法等に基づき、派遣先企業の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されていることが必要)
⑥派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者

提供が必要な待遇に関する情報

派遣元事業主に提供する待遇に関する情報は、「派遣先均等・均衡方式」の場合と「労使協定方式」の場合で異なります。

1)派遣先均等・均衡方式の場合に提供する情報
①比較対象労働者の職務の内容、職務の内容、配置の変更の範囲、雇用形態
②比較対象労働者を選定した理由
③比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む。)
④比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質および当該待遇を行う目的
⑤比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項

2)労使協定方式の場合に提供する情報
①派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者に対して、業務の遂行に必要な能力を付与するために実施する教育訓練(法第40条第2項の教育訓練)
②給食施設、休憩室、更衣室(法第40条第3項の福利厚生施設)

待遇に関する情報の提供については、派遣元事業主と派遣先企業間でのトラブルの防止等の意味もあり、書面等(書面の交付、FAX、電子メール)で行うことになっています。また、派遣元事業主は提供を受けた書面等を、派遣先企業はその書面等の写しを、労働者派遣が終了した日から3年を経過する日まで保存する義務があります。

待遇情報の取扱いに関する注意点

派遣先企業から派遣元事業主に提供された情報の取扱いについては、次の点に注意する必要があります。

①個人情報に該当するものの保管と使用方法
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保等の目的の範囲に限られること。

②当該情報のうち個人情報に該当しないものの保管と使用方法
派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保等の目的の範囲に限定する等適切な対応が必要であること。

③待遇に関するの守秘義務
労働者派遣法第24条の4で規定されているルールでは、派遣先企業の労働者の待遇に関する情報は、秘密を守る義務の対象であるとされています。派遣元事業主とその代理人、使用人その他の従業員は、本人の同意がある場合や他の法益との均衡上許される場合など正当な理由があるときを除き、その業務上取り扱ったことで知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。

この守秘義務は、派遣契約が終了したり、派遣元事業主等でなくなった後においても同様です。

派遣元から関係者への待遇決定方式の情報提供

ここまで、派遣先企業から派遣元事業主への待遇情報の提供をどのように行っていくのかという点についてみてきました。次は、派遣元事業主が「派遣労働者」や「派遣先企業」に対して行う情報提供についてです。
派遣元事業主は、派遣労働者の数、派遣先の数、マージン率、教育訓練に関する事項などこれまで求められていた情報提供の内容に加えて、関係者に「労使協定」を締結しているかどうかの情報も提供することとなりました。
さらに労使協定を締結している場合には、労使協定の対象となる「①派遣労働者の範囲」や「②有効期間の終期」も情報提供することになります。これらの情報提供は、インターネットを利用することによって、関係者に必要な情報を提供することが原則となります。

 

今回は、待遇情報の提供についてみてきました。令和2年4月1日から新しいルールがスタートします。派遣労働者の同一労働・同一賃金の実現には、派遣労働者の賃金額に影響が出てくることも考えられます。直前にあわてて整備するのではなく、余裕を持った対応が求められます。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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