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第80回 20年01月更新

パワハラ防止法~その2

パワーハラスメントの防止を目的として、「労働施策総合推進法」が改正されました。この改正により、職場におけるパワーハラスメントを防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。
パワーハラスメントが実際に職場で発生してしまうと、それを解決するまでに時間や労力がかかります。まずは、職場でパワーハラスメントを発生させないことが肝心です。

前回は、労働施策総合推進法で「パワーハラスメント」と定義される3つの要素をそれぞれ説明しました。今回は、パワーハラスメントの種類(行為類型)と、会社が予防対策をする上での流れについて紹介をしていきたいと思います。

パワーハラスメントの行為類型

典型的なパワーハラスメント行為として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つの行為類型があるとされています。
それぞれの具体例は、次の通りです。

類   型 具 体 例
身体的な攻撃 上司が部下に対して、殴打、足蹴りをする。
精神的な攻撃 上司が部下に対して、人格を否定するような発言をする。
人間関係からの切り離し 自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外し、長期間にわたり別室に隔離したり、自宅研修させたりする。
過大な要求 上司が部下に対して、長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下で勤務に直接関係のない作業を命じる。
過小な要求 上司が管理職である部下を退職させるため、だれでも遂行可能な業務を行わせている。
個の侵害 思想・信条を理由とし、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視したり、他の社員に接触しないように働きかけたり、私物の写真撮影をしたりする。

厚生労働省 『パワーハラスメント対策導入マニュアル』より

誤解しないでいただきたいのは、「これら6つの行為類型に該当しなければパワーハラスメントとして問題にならない」というわけではないことです。
実際に、パワーハラスメントが発生した場合に、それがパワーハラスメントに該当するかどうかは、状況や行為が継続的であるかどうか等を詳細に事実確認したうえで、過去の裁判例なども参考にしながら判断することになります。

「いじめや嫌がらせ」「パワーハラスメント」の問題が訴訟にまで発展してしまうと、実際に行為を行った人はもちろん、会社の責任も問われるケースがあります。
企業の責任が問われるのは、次の3つの責任のいずれか(あるいは複数)が果たされていないと判断された場合です。

①安全配慮義務違反による債務不履行責任
会社は、労働者に対して、労働契約の内容として具体的に定めていなくても、労働者を危険から保護するよう配慮しなければならない安全配慮義務を負っています。使用者が労働者に対して負っている安全配慮義務に違反すると認められるパワーハラスメントの場合、会社の責任も問われることになります。

②権利の乱用等による不法行為責任
会社は、労働者に対して、人事権や業務命令権を持っています。裏を返せば、労働契約によって、労働者はその命令を遂行する義務があります。しかし、その権利を行使する際に正当な範囲を超えていると判断されれば、業務命令権や人事権などの乱用になります。これらのケースでも、会社の責任が問われることになります。

③使用者責任としての不法行為責任
従業員が業務で第三者に損害を与えた場合は、その労働者を使用する会社が賠償責任を負うというものです。この責任の範囲は広いと考えておいた方が良いでしょう。

企業に対して、これらの責任が問われた判例については、厚生労働者の「あかるい職場応援団」のサイトで公表されています。経営者や人事担当者は一度目を通すことをお勧めします。

パワーハラスメントを予防するために

冒頭でも記したように、職場でパワーハラスメントが発生してしまうと、その事案を解決するには長い時間と労力がかかってしまいます。人手不足といわれる中で、その解決に力を削がれるのは企業にとってマイナスにしかなりません。
やはりパワーハラスメントの問題が発生しないように、予防対策を講じておくことが重要になります。平成30年3月に取りまとめられた「職場のパワーハラスメントについての検討会」報告書の中に、事業主が講じる対応策として以下の内容が示されています。

①事業主の方針等の明確化、周知・啓発
1)パワーハラスメントの内容・方針の明確化、周知・啓発
2)行為者への対処方針・対処内容の就業規則等への規定、周知・啓発

②相談等に適切に対応するために必要な体制の整備
1)相談窓口の設置
2)相談窓口の担当者による適切な相談対応の確保
3)他のハラスメントと一体的に対応できる体制の整備

③事後の迅速・適切な対応
1)事実関係の迅速・正確な確認
2)被害者に対する配慮のための対応の適切な実施
3)行為者に対する対応の適正な実施
4)再発防止に向けた対応の実施

④上の3つの対応と併せて行う対応
1)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な対応、周知
2)パワーハラスメントの相談・事実確認への協力等を理由とした不利益取り扱いの禁止、周知・啓発

パワーハラスメントを予防したり、あるいは大事にしないためには、この4つの流れを意識しながら、自社にマッチした対応策を講じておくことが重要です。
次回は、今回記した対応策について、より具体的に紹介していきたいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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