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第81回 20年02月更新

パワハラ防止法~その3

前回のコラムに引き続き、今回は「パワーハラスメント対策の手順」について説明したいと思います。
「労働施策総合推進法」の改正により、事業主はパワハラ防止のための対策を講じなければなりません。漠然と「パワハラ防止」といってもどこから手をつければ良いか、悩んでしまいます。厚生労働省がパワハラ対策のためのハンドブックを作成していますので、それに沿って手順を説明します。

パワーハラスメント対策の手順

パワーハラスメントの対策手順は、厚生労働省が「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」を発行しています。ハンドブックでは、以下の手順で対策を考えていくことを示しています。

① トップのメッセージ
  組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであるということを明確に示す。

② ルールを決める
  就業規則に規定を定める。労使協定を締結する。
予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

③ 実態を把握する
  従業員アンケートを実施する。

④ 教育する
  研修を実施する。

⑤ 周知する
  組織の方針や取り組みについて周知・啓発を実施する。

⑥ 相談や解決の場を設置する
  企業内外に相談窓口を設置する。職場の対応責任者を決める。
外部専門家と連携する。

⑦ 再発防止のための取り組み
  行為者に対する再発防止研修等を行う。

①~⑤までの項目が、パワーハラスメントを「予防する」ための対策です。
残りの⑥と⑦は、万が一、パワーハラスメントが「発生した後の問題を解決する」ために必要な項目です。
それでは①から順に見ていきましょう。

①トップのメッセージ

「職場のパワーハラスメントはなくすべきものである」と明文化し、企業として取り組む姿勢を発信します。「パワーハラスメント問題」を経営課題として捉え、防止していくためには、組織のトップがその意義や重要性をしっかり認識して、その考えを示すことが重要です。
トップのメッセージに含めると効果がありそうな要素については、厚生労働省が発行する『パワーハラスメント対策導入マニュアル』に挙げられています。

・パワハラは重要な問題である
・パワハラ行為は許さない
・パワハラ行為は見過ごさない
・パワハラ行為をしない
・パワハラ行為をさせない/放置しない
・会社としてパワハラ対策に取り組む
・トップ自らパワハラ対策に取り組む
・今年度、重点的にパワハラ対策に取り組む
・従業員の意識向上を求める
・パワハラにあったら相談を
・相談者等に不利益な取り扱いをしない
・被害者のプライバシーは守る
・人権等の尊重

これらを踏まえた上で、例えば、次のようなメッセージを発信します。

「ハラスメント行為は人権にかかわる問題であり、従業員の尊厳を傷つけ職場環境の悪化を招く、ゆゆしき問題です。当社は、ハラスメント行為は断じて許さず、すべての従業員が互いに尊重しあえる、安全で快適な職場環境づくりに取り組んでいきます。

このため、管理職を始めとする全従業員は、研修などにより、ハラスメントに関する知識や対応能力を向上させ、このような行為を発生させない、許さない企業風土づくりを心掛けてください。」

トップのメッセージは、パワハラを防止する上で重要なポイントです。自社の従業員に響くように記載例を参考に、企業のトップの考えを伝えられる文言を考えましょう。

②ルールを決める

パワハラ行為をおこなった者に対して、罰則が適用できるように就業規則の整備を行います。具体的には、罰則規定の適用条件や処分内容を定めます。
就業規則に懲戒処分が規定されているのであれば、その部分にパワハラの条文を追加します。具体的な条文例については、以下のようなものが考えられます。

第〇〇条 職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係に基づいて、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

労働者代表の意見聴取
事業所に従業員が10名以上いる場合には、就業規則の作成・変更を行う際に「労働者代表」の意見を聴き、その意見書を添付して所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。意見を聴く労働者代表は、事業場の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、そのような労働組合がなければ事業場のパートタイム労働者やアルバイト等を含む全労働者の過半数を代表する者のことです。
過半数労働組合がない場合の『労働者の過半数を代表する者』の選出の条件は、次の2つの条件を満たした者です。しかし、2)の要件を満たしていないケースがときどきあるようです。就業規則を変更する際は、正しい手続きで労働者代表を選出し、その意見を聴取するようにしましょう。

1)労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でない者
2)労使協定等の労働者の過半数代表者の選出である旨を明らかにして行われる投票・挙手などで選出された者

就業規則の周知について
就業規則は、届出をするだけでは効果は発生しません。その内容を従業員に周知して、初めて効力が発生します。就業規則を周知することは、法律で義務付けられています。

1)常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける
2)書面で交付する
3)磁気テープ、磁気ディスクなどに記録し、労働者が常時閲覧できるようにする(例えば、社内イントラなどでの閲覧できるようにすることがこれに該当します)

今回は、パワーハラスメント防止のために、まず最初に取り組むべき内容を紹介しました。次回は、③以降の手順について説明したいと思います。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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