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第82回 20年03月更新

パワハラ防止法~その4

前回のコラムからパワーハラスメント対策に取り組もうとする会社のために、その手順を紹介しています。
対策の手順は、厚生労働省が「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」を発行していますので、これに沿って説明していきます。

① トップのメッセージ
  組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場から無くすべきであるということを明確に示す。

② ルールを決める
  就業規則に規定を定める、労使協定を締結する。
予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

③ 実態を把握する
  従業員アンケートを実施する。

④ 教育する
  研修を実施する。

⑤ 周知する
  組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。

⑥ 相談や解決の場を設置する
  企業内外に相談窓口を設置する。職場の対応責任者を決める。
外部専門家と連携する。

⑦ 再発防止のための取組
  行為者に対する再発防止研修等を行う。

前回は、このうち、①と②について見ていきました。今回は、『③ 実態を把握する』の方法を説明したいと思います。 

③実態を把握する

会社がパワーハラスメント防止対策を進めていく上で、実態を把握することはとても重要です。それぞれの会社の特性によって対策方法も変わるので、実態の調査を早い段階で行いましょう。
アンケート調査を実施する直接的な効果としては、パワハラの有無の把握や、そこで働く従業員の意識の把握等ができることです。間接的な効果は、パワハラについて社内で話をしたり、働きやすい環境についてイメージしたり、考えたりする機会につながります。普段、業務に追われていると、働きやすい環境などを職場のメンバーで考えるといったことは後回しになりがちです。

調査の方法は、紙や電子ファイルのほかにも、インターネット上で実施する仕組みもあります。中小零細企業では、筆跡などの特徴で回答者が特定されてしまうおそれがあり、回答者が実態を正確に記載しないといったことが考えられます。そのような状況になるのを避けるため、中小零細企業の場合は、Webアンケートで実施したり、ヒアリングや個人面談の機会を活用するなどの方法をとることもできます。

アンケート調査の内容

一口にアンケートといっても、「取組実施前の実態把握」のためのアンケートと、「取組実施後に効果を把握する」ためのアンケートの2種類があります。
実際の質問項目を見た方が具体的なイメージがよりつかめると思いますので、ハンドブックに記されている項目をあげておきます。

①取組実施前の実態把握のための質問項目

「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」より

「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」より

②取組実施後に効果を把握するための質問項目

「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」

「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」

ここであげた項目に限らず、アンケートの内容は、企業が自由に作成をすることができます。会社で準備するのが難しいようであれば、厚生労働省からアンケートのサンプルが公開されていますのでそれを利用してもよいでしょう。

アンケートの回答は、あらかじめ提示している選択肢の中から当てはまるものを選んでもらう設問(=選択式)と、質問に対し文章や単語などを回答者自身で自由に記述する設問(=自由記述)の2種類が考えられます。
選択式の設問の方が回答しやすく、内容の分析もしやすいといったメリットがありますが、選択肢で提示している内容以外の回答はほとんど得られないといったデメリットもあります。一方で、自由記述は回答者自身が考えて記述するため、この質問が多くなると“特にありません”といった回答が増え、的確な回答が得られない可能性がでてきます。
ボリュームが多すぎると回答する方が嫌になってしまいますので、記述式は必要不可欠なものに絞り込む方が望ましいかもしれません。

アンケート回収率を高めるための工夫

アンケートを実施しても、回収が思わしくなければ意味がありません。アンケートの回収率を高めるために、次の6つの項目を意識しながら進めていくとよいでしょう。

  • 回答の秘密を厳守する。無記名を原則とし、回収者以外が回答内容を見ることがないことを約束した上で実施する(一人一人が封をした上で回収するなど)。
  • 実施の趣旨を伝え、経営トップのメッセージの発信などとタイミングを合わせて実施する。
  • 質問量を抑えたり、記述式の質問を極力減らすなど回答者の負担を減らす。
  • 実施時期に配慮する。唐突にアンケートを実施すると従業員が不審に感じることもあります。前述のトップメッセージや、組織改編、人権週間に合わせるなど、適切なタイミングで実施しましょう。
  • 継続的に実施する場合には、アンケート結果をフィードバックしたり、結果を受けて働きやすい職場づくりに向けた取り組みを進めるなど、回答したことが活かされていることを示す。
  • 適切なタイミングで回収の督促を行う。

アンケート調査が完了したら、会社として改善するためのアクションを起こすことが重要になります。アンケートを取っただけで終わってしまうと、従業員に徒労感を与えてしまう可能性があるからです。
アンケート調査の公表や、アンケート調査の結果に基づいた改善等を行いましょう。アンケート結果で一喜一憂するのではなく、具体的な対策とセットにすることが重要です。

著者プロフィール(川島孝一氏)

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
1966年、東京都大田区生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事 ・管理業務に従事後、現職。クライアント先の人事制度、賃金制度、退職金制度 をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを担当し、複数社の社外人事 部長・労務顧問を兼任する。経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

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